第2話 プロジェクトリーダー
今回のプロジェクトでは一つのシステムを5つのサブシステムに分割して開発を進め、それを最終的に一つのシステムとしてお客さまに納入する。
立夏の所属する会社では3つのサブシステムを担当しており、それぞれにプロジェクトリーダ(PL)が立っている。
基本的にそれぞれのサブシステム単位で作業を進め、プロジェクト全体を統括するのがプロジェクトマネージャ(PM)の役割だった。
立夏の役割はそのサブシステム内を更に機能分割した中でのリーダーで、数名の作業者のコミュニケーションや、お客さまへの仕様確認が主業務だった。
当然ながら立ち位置が違うこともあり、同じプロジェクトとはいえ叶野との接点はほぼないに等しかった。
プロジェクトの作業場所は向かい合って16席が並ぶ島が2島、立夏とは一番遠い対角線上に叶野の席はあったが、そこに座っていることすら稀だった。
一方で一汰とは同じサブシステム、通称顧客チームの担当になり、なんだかんだと日々の愚痴をチャットで交換しあっている。
@kuninaka
そんなチャットが届いたのが顧客チームの定例進捗の後だった。
佐納は四十代半ばくらいで、見た目はごく普通のおじさんだ。多少潔癖症の気があるのかよく机のまわりを除菌しているなぁくらいにしか立夏は思っていなかったが、一汰は気になる部分があるらしい。
@souma なんで?
@kuninaka あの人進捗聞くだけじゃん
@souma 進捗会議って、そういうことする場じゃないの?
@kuninaka その後のアクションが全くないんだよ。あのおっさん
一汰の言うこともその通りだと、口元に手をやり考え込む。
いつ辞めようか、いつ辞めようかと思いながら7年目に立夏は突入している。さすがに7年もいると、自分より経験年数があっても使える、使えないが人がいることにはもう気づいている。
限られた人的リソースで受注したプロジェクトを回すということを考える、と外れが混ざっているのは間々あることだった。
プロジェクト開発とはほぼ人件費で、社員に給料を払う為には何であれ仕事を与えなければいけない。それを含めてどうやりくりするかはプロジェクト側でコントロールしろが会社側の言い分なのだ。
@souma 叶野さんに相談してみる? 新人の頃フォロー担当だったから私から相談持ちかけてもいいよ。
@kuninaka もうちょっと様子見するわ
手を握り込んで親指を立てたいいねマークが一緒に送られてきて、そこでこの話は終わりとなった。
一汰は今までもリーダ経験があるらしく、どう指示をすればいいかを何かと教えて貰っている。
同期の中でも恐らく一番の有望株で、その存在と一緒にプロジェクトを進められることは正直に言って心強かった。立夏の会社は40代50代が多く、30代が少ないという構造で、どうしても自分より上の立場の人との交流がし辛いと感じていた。
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