第135話 屍霊術師の塔 

(賢者の石を使えば呪われたスパイトの地を浄化できるかもしれないことが判明し、国王からその浄化の命令を受けたクラウス。ただ、レベルが高くないとそもそも賢者の石の力に耐えられないため、聖女2人含めサポート役のミストラル、ティンジェルからクラウスの知己のトルテのレベルを上げるべく、経験値高効率を誇るダンジョンへ潜るクラウス一行だった)



 S級ダンジョン『屍霊術師の塔』。


 全30階で、ここの特徴は名前のごとく不死系の魔物しかいない。

 弱点属性は火と光でそれ以外は無効。

 それに加え実体がないゴーストやレイス系などは属性のない物理攻撃無効。

 ダンジョンは常に闇属性が超強化され、しかも状態異常が付与され続ける。


 ここまではありふれた感じといえなくもないけど、一番困るのは魔物を倒しても魔石を落とさない(アイテムは落とす)。

 その代わり得られる経験値が多くレベルが上がりやすい。


 なんていうか尖りまくったダンジョンだよね。

 クラウディアさん曰く、【勇者】や【英雄】はここで能力を高めていたらしい。


 そんなダンジョンなので『聖衣ミスティアローブ』は必須。

 聖女の加護を受けたこの装備はダンジョンが付与してくる状態異常を防いでくれる。

 僕は当然【リボン】があるから効かないけど。



◇◇◇



 入っていきなりお出迎えはダークリッチ。

 持っている杖から闇色の弾が無詠唱で生成され次々と飛んでくる。

 【上級闇魔法】のイービルスフィアだ。


 光の魔法剣で全てのイービルスフィアを斬り裂いて、接近してダークリッチを斬り裂く。


 くぐもった声を上げながら消えていくダークリッチ。


 少し進むと5体ほどのナイトスケルトンが待ち伏せていた。


「ターンアンデッド!」


 昇天の光でナイトスケルトンを全滅させる。


 そんな感じでみんなを引率しながら進んでいく。


「あれ、ここってS級ダンジョンなんですよね? みんなで力を合わせて強敵を倒していく、っていう感じじゃないんですか?」


 プリンさんが聞いてくるが……


「プリン、普通はそうなんだけどクラウスだからね」


 レティ様が答える。


「スキルが封印されてなければトルテも魔法を試したかったのに……」


「トルテさん、陛下の命令ですから我慢してください」


 『試練の指輪』の効果でスキルが封印されているためトルテさんは魔法が使えない。

 というか僕以外そうなんだけど。

 だからみんな見ているだけだ。



 階層も進んでスケルトンドラゴンやレイスキングなども出てくるが、ファイアボールやライトボール、フレイムアローやシャイニージャベリンとかいろいろ飽きさせないように魔法を使って倒していったんだけど。



「クラウス、見てるだけで退屈なの。あまり参考にならないの」


「クラウスさん、申し訳ないのですが私もちょっと時間がもったいない気がしてきました……」


 トルテさんとプリンさんが僕に言ってくる。


「魔石も落ちないですし、クラウスさん的にもおいしくないのでは?」


 そうなんだよね、ミストラルさん。

 そのうえドロップアイテムも呪いつきばかりでアンチカースで解呪してもそこらの量産品程度にしかならない。


「じゃあ最下層まで転移しましょうか」



◇◇◇



 というわけでやってきました最下層。


 ボスは人型の魔物で『死せる賢者』。

 なんか古の賢者が魔に魅入られ堕ちた存在だとか。


「永遠の回廊に挑まんとするか?」


「いいえ」


 ここはノーと答える。

 両方のパターンを試してみたけど、意外にも弱いバージョンの方がレベルの上がり方が大きかった。

 イエスと答えるとエクスデスセージとのバトルになり、倒したら灰色の鍵を残していった。


 弱いほうはカオスナイトリッチとなり、デュラハンナイト2体をお供に召喚して戦うことになる。


 前教皇が変貌したエンシェントカオスリッチよりは弱い。

 というわけでいつもの光属性付きのテトラスラッシュで処分だ。


「見てるだけでレベルが上がるなんて申し訳ないですね」


 とミストラルさんが本当に申し訳なさそうに言う。

 それはそうなんだけど、ちゃんと裏の意味もある。

 ティンジェル王国に何かあったときには駆けつけてくれるよね? 

 まさかレベル上げしたのに不義理を働いたりしないよね?

 ということだ。


 もちろん、正式な契約とかしているわけではない。

 表向きはスパイトの浄化のために聖女の力が必要で、その聖女に何かあったら困るから、というものだけどね。


 多分ミストラルさんなら意味は分かっているはず。

 元は僕のパーティメンバーだ。

 もしメルティアがティンジェルを裏切るようなことがあれば僕は動かざるを得ない。

 

 そういったことを考慮してのこのパーティだ。

 陛下や宰相様の考えなのだが、僕には思いつかなかったことだ。

 これくらいはこなせないと国の運営とはできないものなのだろう。

 『クラウスがいるからこそ可能な方法』と言っていた。



 カオスナイトリッチを撃破して、いったん外に出て転移でまた入ってまた撃破して。

 15日ほどかかってみんなのレベルが255になった。

 なお、『鑑定の宝珠』を王家から借りているので成長具合はわかる。

 せっかくなのでみんなのスキルを教えあった。


 僕は【交換Ⅴ】。

 自分と自分に悪意を持つ者(人間並みの知性を持つ魔物も含む)とで同じ種類のものを一つ交換することができる。


 レティ様は【結界の聖女】。

 聖女独自の魔法が使えるうえ、結界に関する魔法も使える。

 光魔法は全て消費MP半減。

 また自分と他者からMPを貸し借りすることができる。


 プリンさんは【光輝の聖女】。

 聖女独自の魔法が使え、回復・補助系統は大幅な底上げがされる。

 光魔法は全て消費MP半減。

 パーティメンバーを常時体力・魔力回復状態にする。


 ミストラルさんは【光弓の使い手】。

 光の矢を生成でき、MP1で矢を20本生成できる。

 弓術以外の武器が苦手になるが、弓術の成長率が上昇。

 光属性の効果が1.5倍になるが、闇魔法の修得率、成長率が低下。

 光・闇属性の被ダメ50%軽減。


 トルテさんは【四神の導きⅢ】。

 最初から四属性魔法修得で四属性同時成長、成長速度上昇。

 弱点属性攻撃時ダメージ1.5倍。

 四属性攻撃被ダメージ25%軽減。

 光、闇属性魔法修得不可。

 



 レベルは上がるんだけど、見てるだけだからスキルレベルは上がりにくいんだよね……。

 この中では僕とトルテさんだけが固有スキルのレベルがあるんだけど、僕はもうこれ以上は上がらない。





◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 超高速レベリング回でした。

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