第121話 事後処理
シールドキラーでところどころ破壊された対魔結界を張り直していく。
最初に張った時よりも僕のステータスが上昇しているので少し強度が上がっていると思う。
ついでに、領域を拡大して北方に2kmほど増やしておいた。
「こうやって開拓していたのね、とんでもない力業……」
グランドシェイカー、ウインドカッター、ディメンジョンボックス、ファイアボール、コールグラウンドの組み合わせにより、更地を増やしていく。
巻き込まれて倒された魔物たちの魔石やドロップ品が自動で回収されるのを見たレティ様が目を丸くしていた。
「これなら収入に困らないわ。やっぱりクラウスについて行こっと」
何を言ってるんだか。
今レティ様は僕の屋敷に居候している。
部屋も提供しているが、僕の部屋から一番遠い場所にしている。
レティ様は、ミストラルさんと入れ替わりで僕のパーティメンバーとして登録することとなった。
S級の場合はメンバーの等級がなんであれかまわないこととなっている。
レティ様はこの国での実績はないが元聖女ということでC級からスタート。
ヴェインさんは裏でいろいろ走り回っていたようだ。
「聖女まで知り合いなのか…… クラウスよ、俺の苦労をどれだけ増やすつもりだ?」
とヴェインさんに言われたが、それも仕方ない。
「おっかしいなあ、A級で引退してギルマスしばらくやってそれも引退したら孫でもあやして過ごそうと思ってたのに。王都のギルマスに引っ張られてA級の統括とお前の面倒まで見ているのはなぜなんだ」
何だか会うと愚痴ばかりこぼされる。
聖女様の件も含め特例の適用ばかりあって、ヴェインさんはギルドの規則を調べまくったので無駄に詳しくなってしまったらしい。
おかげで口は上手くなったと言っていたけど。
「聖女様に手を出すなよ。お前は第三王女の婚約者候補なんだからな」
わかっていますよ。
もちろんエリアからも言われているが、その割には僕の屋敷にレティ様を居候させるのは認めている。
『クラウスの屋敷には私の味方がいますからね。ドレミーやレティシアがおかしな行動をしないように見張っていますから大丈夫です。それと、そもそもクラウスの好みではないでしょう』
とはエリアの言だ。
◇◇◇
そろそろダンジョンにも行きたいが、自分の領地の復旧に忙しい。
僕が伯爵になった時につけてもらった補佐官は優秀で、細かいことはお任せしている。
そして、さらに文官が追加されるそうだ。
それは聖メルティア王国から連れてくるとのこと。
僕が教皇を殺害したあと、聖メルティア教国は降伏した。
そして、事前の打ち合わせ通り聖女派から選出された次期教皇が王国と交渉して、戦後処理、というか賠償の話をしている最中だ。
そんななかレティ様はプリンさんに聖女の座を譲ったのを理由に一切参加せず僕についてきている。
で、賠償の一環として何人か優秀な者をよこすことも含まれ、それを僕に融通してもらうわけだ。
というか、ぶっちゃけ『神の御子』とかいう風評被害に対する詫びだ。
カイル帝国軍に蹂躙された僕の領地は、荒らされた交易路や建物の復旧、住民の募集、商人の勧誘などが必要だ。
一応結界も直して強化したし、帝国との境界にも武器を持った人間を弾くよう改良した対人結界を展開したので安全面は多分大丈夫。
でも一度帝国に攻められているから、住民や商人が集まるかはどうかは微妙だ。
交易路の修理や、新しく開拓した領地に施設を建てるための物資を届ける手伝いをしつつ、ダンジョンに潜ることになる。
領地の収入が安定するようになるまではそうするしかない。
僕に何かあったらすぐに立ち行かなくなるので、今の身分は結構不安定なのだ。
……あれ、冒険者の時とあんまり変わんなくない?
◇◇◇
S級ダンジョンにはノルマなんてものはないので、自由に行けばいい。
レアな宝箱目当てのトレジャーハンター的な意味だったり、A級で物足りない人の力試しだったり。
ロックドライブラリーは虹色の鍵を取ったからおそらく攻略済みということでいいだろう。
次に王都から近いのは全70階ある『竜の箱庭』だ。
と、その前に準備として帝国軍の兵士から適当なスキルを僕の【生活魔法】と交換してストックを増やしておく。
◇◇◇
『竜の箱庭』はその名の通り、おそらくほぼ竜系の魔物しか出ないだろう。
雑魚竜なら、飛んでいてかつ竜族なので【ドラゴンキラー】と【ウイングスレイヤー】の両方の対象になるが、倍率は重複はせずダメージ倍率2.5倍と被ダメ1/3の効果を得られることとなる。
レティ様といっしょに『竜の箱庭』の入り口に着くと、5人パーティが血塗れで座り込んでいた。
「ここに来るということはS級冒険者か? エクスポーションを持っていないか? 頼む、譲ってくれ! 対価は後でいくらでも払える!」
比較的軽傷そうな1人が僕たちに懇願する。
「頼む! 早く回復しないとカイ様が…… そうなると私はお館様に顔向けができん……」
頼んできた1人が介抱していたのは、黒騎士カイさん。
ただしボロボロになっていて意識がないようで、右肩から先がなかった。
◆◆◆◆◆◆
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