第119話 焔の剣聖 

「ヒャッハー! 俺様の『フレアストライク』で燃やせねえ物はねえぜー!」



 僕のエアウォールに風穴が空いていた。

 風魔法の壁に風穴というのもなんだか変だけども。



「こいつが『焔の剣聖』か……」


「そうみたいね」


 僕の前には赤くて短い髪を逆立てて決めた20歳ごろに見える男が大きなバスタードソードを構えて立っていた。

 その男の身の丈ほどもある両手剣には炎を象った紋様が刻まれている。

 固有スキルは二つ名と同じ【焔の剣聖】。


「この魔法の壁を破られてから来るってことは、てめえがクラウスか? 戦場に女連れとはいい度胸じゃねーか! 死ねえ、バックドラフト!」


 マスタングの足元で後ろ向きの小爆発が起き、一瞬で最高速に達した男がその勢いのまま僕に斬りかかってくる。


 対する僕はメタルブレードをかざして防ぐ。

 ガゴン、と音がする。

 斬る、というよりは超重量の鈍器とぶつかる感じだ。


「知ってるぜ、結界で物理攻撃を防いでいるんだろ? 俺の剣で結界もろともそんなヒョロい剣ごと叩っ斬ってやるぜぇ!」


 残念ながら一撃を防いだのは魔法で武器を強化しているからで、結界は使ってない。

 しかしそんなことよりも焔の剣聖の後ろに控えている軍隊がこっちに向かってきている。

 僕はともかくレティ様はこの人数で攻撃されたら多分結界が保たないだろう。



「七色の薄膜、レインボーシール!」


 【虹魔法】による全属性防御機能を持つ薄い壁を帝国軍の前に展開する。

 これにより、焔の剣聖と帝国軍が分断され、彼を援護することができなくなった。



「この俺を目の前にしてよそ見だと! 舐めやがって!」



 舐めてなどいない。

 十分に強敵だ。

 舐めていないからこそ、


スキル

【剣術マスター】(←【上級剣術Ⅲ】)

【火魔法マスター】(←【MP回復力上昇Ⅳ】)

【ストロングⅤ】(←【ストロングⅢ】)

【バイタルⅤ】(←【バイタルⅡ】)

【撃破時MP回復Ⅴ】(←【生活魔法】)

【マンイーター】(←【撃破時MP回復Ⅳ】)


その他

 ディアス流剣術継承者(←ディアゴルド流見習い)



 ディアス流剣術はマスタングが師匠から受け継いだ一子相伝の流派。

 その継承は師匠との死合の末勝利することで得られる。

 なかなか物騒な流派だが一度も他流試合に敗北したことがない。

 これでもう『構えが半端』とかバカにされなくなるだろう。

 冒険者は生き延びればいいという考えに変わりはないが、貰えるなら貰う。

 


 さらに、


「我は暗黒神の名の下に望む、傲岸不遜にして傍若無人たる汝の破滅! 捧げるは我のスキル! ブラックカース!」



スキル

【火魔法マスター】(消滅)



 【暗黒魔法】のブラックカースにより発せられた黒い波動がマスタングに吸い込まれていく。



「くっ、何だこれは!」



 マスタングは黒い波動を見た瞬間後ろに飛び退ったが、既に遅かった。

 これで、僕のスキル(元はマスタングから交換したものだけど)を犠牲にしてマスタングに呪いを付与できた。

 付与したのは【全ステータス半減】。

 僕がかつて持っていた各種半減スキルを統一したようなスキルだ。



「貴様、何をしやがった!」


「クラウス、なんで【暗黒魔法】が使えるの……?」


 驚いたのはマスタングだけでなく、レティ様も同じだった。


「訳はお話しできませんが、教皇と対峙してから使えるようになりました」


「ええ…… 一体どんな固有スキルなら使えるようになるのよ…… まさか、強奪系のスキル?」


「ええい、俺を無視するんじゃねえ! 後悔させてやる! 『フレアストライク』!」

 


 マスタングの一撃必殺技。


 腰を深く落とし大剣を水平に構えて焔を集める。

 そしてそのまま大剣を前方に突き出し、どでかい焔の塊が発射される。

 反動で少しマスタングが少し後ろに下がった。



 僕は迫り来る焔に対して相殺するために水魔法を使用する。


「アイスニードル」


 巨大な焔の塊に対抗するにはあまりにも心許ない細長い氷の針。

 【初級水魔法】の攻撃魔法だ。

 

「クラウス、さすがにそんな魔法じゃ無理なんじゃ……」


「まあ見ていて下さい」


 細長い氷の針は、焔の塊を消し飛ばしてマスタングの持つ大剣に辿り着き、その剣身を凍りつかせる。


「神器『レーヴァテイン』が凍るだと……」



 さらに追い討ちをかける。



「ああ、ごめんなさい。じゃあ僕の武器を貸してあげますね」


 そして、僕は武器の【交換】を行う。


 僕の手元には凍ったレーヴァテイン、マスタングの手元には凍っていないメタルブレード。

 僕の手元にきたレーヴァテインは、形を変えて僕が慣れている片手剣の大きさにまで縮み、炎を象った紋様は消えていた。

 所持してわかったが、この神器は持ち主に最適な形となり能力を強化してくれる。

 僕の場合は、戦闘時のみ全能力50%上昇だった。



 弱体化したマスタングのステータスは精々B級だ。

 【焔の剣聖】にしか使えないフレアストライクも本来より威力が落ちている。

 それでも技そのものが強く、持ち主を強化するレーヴァテイン込みでS級程度の威力はあったが。

 ま、今のマスタングならメタルブレードがお似合いだろう。



「ふざけんな! 俺のだぞ、返せ!」


「そもそもどうやって手に入れたんですか?」


「俺が滅ぼした国から奪ったんだよ! だから俺のもんだ!」


「ならあなたから奪えば僕のものですね。返しません」




◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 【マンイーター】は人間系特攻×1.5倍です。民衆を殺しまくったマスタングが修得していました。

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