第118話 前借り 

 ミストラルさんとマリー様が狂気に陥っているが、どうしようもない。

 早くエンシェントカオスリッチを撃破するしかない。


「タイムストップ!」


 これで2人の時間を止める。

 そしてエンシェントカオスリッチを向いてどうやって倒すか考える。


「ククッ、二人の動きヲ止めタカ。だがMPが持つマイ。MPが切れるマデ死者と戯れてモラウゾ。混沌ノ果てより甦レ、歴戦の強者ドモヨ! アンデッドクラスター!」


 エンシェントカオスリッチの固有スキル【混沌魔法】により武装したアンデッドが地面?からわらわら湧き出てくる。

 一端の戦士や魔法使いと思われる者たちだが、エンシェントカオスリッチが込めた魔力の割には意外にもそんなに数が多くない。

 100体ほどだろうか。

 思ったことは同じだったようで、


「神罰ノ塔に囚われてイルハズの者たちがオラヌナ…… マサカ神罰ノ塔の瘴気を全て祓い切ったノカ?」


 その通りだ。

 そして、仮にそうでなかったとしてもこれから起こる事に変わりはない。


「あるべき場所に還れ、ターンアンデッド!」


 発生したアンデッドの足元から浄化の光が立ち昇り、アンデッドたちを包みこむ。

 アンデッドの全身が浄化の光で覆われたあと、彼らはすぐに光の粒子となり消え去っていった。

 【上級光魔法】で修得する対アンデッド必殺の魔法だ。

 アンデッドクラスターで召喚された者たちは知性がないらしく交換対象ではなかった。

 残念。


 そして、


スキル

【アンデッドスレイヤー】(NEW)


 大量の死者を一度に浄化したからか、【アンデッドスレイヤー】が生えてきた。

 死者系特攻ダメージ2倍だ。


「す、すごい…… どれも高レベルなアンデッドだったはずなのに……」


 レティ様が神聖結界の中で驚いている。

 多分レティ様でもできると思うが、彼女はいま自分のことをカオスフィールドから守るので精一杯だ。


「キ、貴様は何なのダ! そもそもカオスフィールドの中で何故平然としていらレルノダ!」


 このやりとりガーゴイル戦でもやった気がする。


「クラウス! あなたのMPを貸して!」


「? いいですけど」


「ちょっとこっち来て。触らないと借りられないの」


 レティ様の言うとおり少し後ずさると、レティ様は僕の肩に触れる。

 そして神聖結界が全員を包むまで広がると同時に、僕のMPが減る。


「これで大丈夫なはずよ」


「わかりました」


 タイムストップを解除する。


「「はっ……!」」


 ミストラルさんとマリー様は正気を取り戻した。


「ごめん、もうちょい貸して。『祈りを捧げ、穢れし魂を浄化する、ソウルピュリファイ!」



 エンシェントカオスリッチは天から降り注ぐ光に包まれていく。


「グオオオオッ! だがコノ程度で我は浄化できヌワ!」


 ソウルピュリファイ自体は威力があるのだろうが、おそらくレティ様のステータスが足りていないのだろう。

 MP効率でいえば僕が攻撃した方がいい。

 浄化できなかったとはいえ、明らかにエンシェントカオスリッチは弱っている。

 だが、闘志まで弱くなってはいない。


「邪空ナル剣、混沌の果てカラ飛来し、聖なる者ヲ貫き堕とセ! カオスブレイド!」


 【混沌魔法】最強の魔法が詠唱され、エンシェントカオスリッチの真上に召喚された闇色の巨大な剣が僕たち目掛けて容赦なく振り下ろされる。



「光の魔法剣! テトラスラッシュ!」


 シャインセイバーを発動した魔法剣でテトラスラッシュを繰り出す。

 カオスブレイドに比べればいかにも小さい剣閃だが、カオスブレイドをかき消してエンシェントカオスリッチを刻んでいった。

 物理半減のスキルも交換したし、エンシェントカオスリッチもアンデッドなので、いま生えたばかりの【アンデットスレイヤー】でダメージがさらに上乗せされる。


「グギャアアア! バカ、ナ…… ニンゲンを超越した存在にナッタハズ……」


 テトラスラッシュで斬り刻まれたエンシェントカオスリッチは光る粒子となりながら消えていく。


 ていうか、魔物になって世界を支配してどうするのか。

 生前彼が求めていた奢侈は、人間の肉体あってのものだと思うんだけど。

 本人の意思で魔物になった訳ではなさそうだけど、聞いておけばよかったな。



 エンシェントカオスリッチが消えた後、残ったのは大きな魔石と、膨大な魔力の詰まった賢者の石。

 賢者の石はこれで二つ目だ。

 そして、カオスフィールドが解除されもとの教皇の寝室に戻ってきた。


「じゃあ、王国に戻りましょうか。ゲート!」


 教皇はもう倒したし、あとは王国に任せるとしよう。



◇◇◇



LV:138

HP:123054/123054

MP:4599/4599

腕力:7429

体力:7064

速さ:7075

器用:6769

知性:12217

精神:12217

スキル

【生活魔法】

【上級剣術Ⅲ】【上級体術Ⅰ】

【中級盾術Ⅳ】

【全属性魔法マスター】【時空魔法マスター】

【暗黒魔法マスター】

【エクスペリエンスⅣ】【ラージⅤ】

【ストロングⅢ】【バイタルⅡ】

【クイックⅢ】【コンプレクスⅡ】

【クレバーⅤ】【メンタルⅤ】

【ドラゴンキラー】【ウイングスレイヤー】

【アンデッドスレイヤー】

【ライフレスキュー】

【スキル成長速度上昇Ⅲ】

【フルムーン】

【MP回復力上昇Ⅳ】【セレニティⅤ】

【レアドロップ率上昇Ⅳ】

【MP限界突破】【MPバースト】

【攻撃時MP回復Ⅴ】【撃破時MP回復Ⅳ】

【無詠唱】【詠唱時防御】

【不意打ち】【威圧】

【捕縛術】【目利き】

【ステルスサーチ】【トラップシーカーⅤ】

【上級錬金術Ⅲ】【闇属性強化】

【フォースレジストⅤ】

【エレメントレジストⅤ】【リボン】

【弱者の意地】

固有スキル

【交換Ⅴ】




 エンシェントカオスリッチ撃破後のステータスはこんな感じだ。

 ちょっとだけMPが上昇した。


 あと、ミスティリングをレティ様に渡した。

 『婚約指輪ね!』とか言っていたが、そんなわけはなく、一応パーティメンバーなので少しでも戦力になってもらおうと思っただけだ。





 スタン侯爵様に会って、大聖殿での経過を報告する。


「そうか。これでメルティアはそのうち陥落するだろう。ご苦労だった。あとは王国軍に任せるといい。S級のナナ=ツキシマも参戦しているぞ」


 【陰陽術】って戦争に使えるんだ。

 まあそれはいいか。

 メルティアはもういいとしても、まだ帝国が残っている。



「帝国なのだがな、クラウスの張ったエアウォールが破られるかもしれない」


「お父様、もしかして『ほむらの剣聖』ですか?」


「そうだ。とうとう出てきよった。風に対する火だからな。メルティアが劣勢なのを知れば帝国も引き下がるかと思ったが、割と本気のようだ」


「マリー様、『ほむらの剣聖』というのは?」


「『ほむらの剣聖』マスタング=キャタピラー、帝国皇帝の最強戦力だ。剣術はもちろん、炎魔法も極めていて、その一振りで戦場をひっくり返すという。本人は戦闘狂で占領対象まで焼き尽くしてしまうので使いづらいらしく、最近は表に出てきた記録がないな」



 それほど火力があるのなら、一点集中で僕の魔法が破られることがあるかもしれない。


 ちょっと心配になったので、その場を辞してエアウォールを展開した場所に転移することにする。


「私も着いていくからね!」


 とレティ様が言うので仕方なくいっしょに連れて行く。

 またMPを借りられたりするのかな。



 転移した先では、ちょうどエアウォールに大穴が空けられたところだった。



「ヒャッハー! 俺様の『フレアストライク』で燃やせねえ物はねえぜー!」





◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 新しく出てきた敵ですが、モヒカンではありません。

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