第111話 シールドキラー 

(クラウス、交易路からカイル帝国が侵略してきたわ)


 ……いつかあると思ってたけど、思ったより早くないか?


(おそらく聖メルティア教国の侵攻と合わせたのね)


 ああ、それでか。

 ただ、攻めてきてどうするんだろう。

 交易路までは仮に占領できたとしても、その先のスピネルさん率いる辺境軍を打ち破る自信があるというのか。

 そもそも、僕の領土に攻めてきてただで済ませるわけがない。


 とりあえず、交易路の上空に転移。

 人だかりがあるのが多分カイル帝国軍だろう。

 東から1/3くらいまで進軍してきている。

 とりあえずそのあたりで対人障壁を展開しておく。

 王国民以外はこれで通れない。



 交易路を巡回してくれている辺境軍の屯所に転移し、指揮官のスピネルさんに会う。


「おお、クラウス殿」


「スピネルさん、帝国軍が攻めてきたと聞いて飛んできました」


「突然のことでな。民間人の避難もあまりできていない。サランディアからの第一陣が来ているが、あまり持ちそうにない」


 ウォーレンさんの安否が気になるが、まずは撃退が先だ。


「進軍地点で南北に対人障壁を展開しています。これで、これ以上はこちらに来れません」


「なら第一陣をこちら側に戻しても構わんな」


「ええ。相手はどのくらいの戦力ですか?」


「正確な数はわからんが、一万くらいだと思う。対人の争いなど久しくないのでな、正直なところ苦戦している」


「そうなんですか……。王国が統一されて以降戦争なんて僕が生きている間はないかと思っていました。怪我人の方はいますか?」


「隣の商館だ。臨時の野戦病院としているが、回復の手が足りない。治してやってくれ」


「もちろんです。僕の領地を守ってくれているのですから。終わったら遺族の方にも補償をしなければいけませんね」


 早速隣の商館にいき、生きている人をセレスティアルヒールで全員を回復する。


 


 次は、帝国軍の撃滅だ。


 対人障壁を張ったところへ浮遊して向かう。

 すると軍が結界を張ったはずの場所を越えて進んでいるのが見えた。


 おかしいな。

 効力が切れたのだろうか。

 別に手を抜いた覚えもないのだけど。


 ある程度近づいてもう一度対人障壁を張り直す。

 淡い緑の結界が展開されるが……



「バカの一つ覚えだな!」



 と、居並ぶ軍人の中から赤い鎧に全身を包んだ指揮官っぽい人間が出てくる。

 メイラというようだ。


「こいつに見せてやれ。お前など取るに足らぬとな」


「はっ!」


 メイラの横にいる魔術師が手に持っている魔道具が起動すると、僕の結界が溶けていく。


「ふっ、驚いたか? この魔道具『シールドキラー』で貴様の結界魔法は通用せぬ! さらに! 浮遊魔法を使う貴様のために【ウイングスレイヤー】を持つ者を集めておいたぞ。空中からの魔法攻撃で一方的に攻撃するのが得意なようだが、空に浮いたら【ウイングスレイヤー】の餌食だ」


 

 勝ち誇っているところ悪いが、それらを封じられたところで問題ない。

 わざわざ教えてくれたから適当な兵士から【ウイングスレイヤー】をもらっておく。

 飛行している敵に2.5倍ダメージを与えられる特効系スキルだ。


スキル

【ウイングスレイヤー】(←【麻痺耐性Ⅲ】)



 シールドキラーについても、壊せば済む話だ。

 ただ、メイラの記憶を読むと、これはスパイトから援助金と引き換えに手に入れた貴重な魔道具らしい。

 壊さずに王国に持って帰りたいところだ。



 どうやってこいつらを処理しようかと少し考え込んでいると、


「どうした? 手も足も出まい。ザンボーのやつは何を恐れて処刑されたのだろうな? はっはっはっ!」


「ザンボー将軍が処刑された?」


「そうだ。何を血迷ったか絶対に勝てないと今回の戦争に異を唱えてな。皇帝陛下のお怒りを買って処刑されよったわ。とんだ無駄死よな」



 あの人の【神速の抜剣】ってかなり貴重だと思うんだけど。

 わざわざ戦力を減らすなんて。

 目の前のメイラも【紅蓮の突撃兵】というスキルを持っているが。


 どの道コイツらは許さない。

 記憶を見ると数少ない僕の領民を殺したり奴隷にしていたり、せっかく作った施設を壊したりしているので、ただでは済まさない。

 大火力魔法で一気に殲滅してもいいが、それでもまた軍を差し向けてくるかもしれない。


 何をするか決めた。

 ディメンションボックスから青い珠をいくつか出して僕の周りに浮かばせる。七曜の魔女の真似事だ。


「マス・ディストーション!」


 

 いくつかの青い珠が粉々に砕け散り、帝国兵の足下に次々と黒い渦が発生し、兵士を飲み込んでいく。


「うわぁぁ! 何だこれは! 引きずり込まれるぅ!」


「助けてくれぇぇ!」


 その叫び声もすぐになくなり静かになる。

 剣や弓、鎧や盾などを残してほぼみんな闇の中へご招待した。

 大量のディストーションを発動するのに今の僕の魔力でも少し不安だったので、青色の珠の魔力を解放したが、正解だったようだ。

 ディストーション自体あんまり使い慣れてない上に少し細工も施したから、MPはいくらあっても足りない。

 

 そして、ディメンションボックスで武器防具を回収する。



 唯一残したメイラは唖然としている。

 こいつを残したのは捕虜のためだ。

 なにせ、現皇帝の甥だからね。

 バインドチェーンで拘束し、ゲートでスピネルさんのところに連れて行った。

 あとはお任せだ。

 苛烈な拷問のあと王都に送られると思う。






◆◆◆◆◆◆


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