第66話 鋼鉄の絆 

 【ドラゴンキラー】は竜族に対して50%の特攻と竜族から受けるダメージを1/3減少させるスキルだ。

 僕がスタン侯爵からもらったドラゴンブレイドと効果が一部被るが、効果は重複しない。

 そしてこのスキル、人によっては固有スキルで持っていることがある。

 でも汎用スキルの場合と効果は同じだから、固有スキルとしてはハズレと言われている。

 

 あと、【レアドロップ率上昇】と【撃破時MP回復】もレベルが上がった。

 そして僕自身のレベルも大きく上がった。

 【エクスペリエンスⅢ】(取得経験値80%上昇)のおかげだ。


 ホワイトドラゴンのレアドロップである白竜石が10個溜まっていた。

 僕の本命はこれだ。

 ノルマの50回を超えてもなお狩っていたのは、この白竜石をできるだけ取っておきたかったのだ。


 なぜかというと、竜族のドロップ素材を利用して作成する武器防具は、竜石でないとメンテナンスができないからだ。

 ドラゴンブレイドもそうだし、この先オーダーで武器防具を作ってもらうこともありそうなので、竜族で最も弱いホワイトドラゴンで稼いでおいた方が効率的だと考えたのだ。

 なので、白竜石以外をギルドに納品する。



 ワーズワースさんに怒られていた納品窓口のギルド職員は『たった一週間でA級ボスの魔石が120個とか意味がわからない。人間ではないのかもしれない』とかなんとか言いつつ、作業はしっかりこなしていた。


 通常ドロップの白竜の鱗も全てギルドに納品だ。別のギルド職員から、


「これだけ一度に納品すると分けて納品するより報酬が下がってしまいますが、本当によろしいですか?」


 と念押しで聞かれたが、ちまちま納品するのが面倒なのでそのままでいいと答えておいた。

 そもそも分けて納品していると次のダンジョンでのドロップも溜まっていくだろうから、さすがのマジックバッグにも入りきらなくなると思う。

 貸倉庫という手もあるが、正直そんなことに気をもみたくない。



「クラウスさん、やっぱりやめておいた方が…… いや、これからも繰り返されるだろうから同じことか…… 何も起きなければいいんですが……」



 とミストラルさんが小声で何やら悩んでいたが、結局僕にはっきりとは言ってこなかったので気にしないことにした。



◇◇◇



 次のダンジョンは『鋼鉄の絆』だ。


 ここに入っている間だけ、各種のステータスがパーティメンバーで平均化される。

 HPもMPもだ。

 なので、ミストラルさんは最大MPが150となる。

 僕のステータスがバレてしまうので言わないけど。


 僕は自分のスキルでステータスが見えるから、ミストラルさんのステータスが分かってしまう。

 一応ミストラルさんに確認したが、別に構わないとのことだ。

 むしろ、現時点でのステータスを教えてほしいとのことだ。


 これが分かれば、自分の戦闘スタイルとステータスが噛み合っているかある程度分かるからだ。

 ただ、これはパーティが2人しかいなくてかつ僕が自分のステータスがわかるからできる芸当だ。


 なお、一人で入ると全ステータス半減。

 このダンジョンはソロに厳しい。




◇◇◇




 ミストラルさんが教えてほしいと言ったステータス(ダンジョンの平均化から逆算した)はこのとおりだ。


ミストラル 21歳 男


HP:7403/7403

MP:100/100

腕力:519

体力:542

速さ:443

器用:708

知性:543

精神:680



「器用が高いので、遠距離攻撃と命中に優れています。精神の高さは補助系や回復系魔法と相性がいいです。弓使いで光魔法使いという私のポジションは適切だったようです」

 

 ミストラルさんは概ね満足そうに自分を評価していた。


「ただ最近修得した【初級闇魔法】は知性が高くないと威力が出ないので、ちょっと残念です」


「【初級闇魔法】を覚えたんですか? 確か光と闇は相反する属性だったような……」


「そうですが、隣接スキルでもありますから、光魔法を持っているとむしろ闇魔法を覚えやすいです。逆も同じです。メルティアでは光も闇も等しいものとして扱っています。ただ、私の場合長らく修得出来なかったので、固有スキルによって闇魔法への適性が低くなっている可能性があります」


 そうなのか。

 知らなかった。

 ってことは各地の教会にいる神官も闇魔法が使えるのだろうか。



◇◇◇



 二人のステータスを平均すると、僕は30%ほど下がり、ミストラルさんは100%ほど上がっていた。

 二人とも同じステータスになるが、S級下位くらいのステータスはある。


 僕の腕力が結構落ちてしまい、一撃で仕留められないときがたまにあった。

 それでも2回通常攻撃すれば確実に仕留められるのは、ドラゴンブレイド自体の攻撃力も高いからだろう。

 

 ミストラルさんは僕とは逆に、光の矢を2本当てれば敵を消滅できるようになっていた。


「いやー、これ爽快ですね〜。通常攻撃だけで敵を薙ぎ倒せるなんて思ってもみませんでした。スキルの成長が遅くなりそうです」


 僕は多分それにはまってる気がする。

 使い勝手のいい瞬速連斬と通常攻撃しか使ってない。

 たまにはなんかスキルを使ってみようかな。



◇◇◇



 ここは100階層まである。

 出てくる敵は必ず二体セット。

 オーガプリーストとオーガシュバリエ、ハイウィザードとエスクワイア、といった感じで前衛・後衛の組み合わせが多い。

 

 僕はスタン侯爵から交換した【中級火魔法】で使える『パワーアップ』で腕力を水増ししながら敵を倒していく。



 途中の50階には中ボス的な感じの魔物がいた。

 ゴーレム&マジシャンと俗称される敵だ。


 このゴーレムは、最も硬い鉱石の一つであるアダマンタイトから出来ている自律行動タイプだ。

 黒色で体長4メートルほどもある。

 一方のマジシャンはというと、一つ目をした道化師みたいな魔物だ。

 ゴーレムと並んでいると小さく見える。


 ゴーレムに弱点はない。

 ただひたすら攻撃して斬るだけだ。

 パワーアップをかけておいて、剛力剣で攻撃。

 剛力剣のあとの僕の隙は、ミストラルさんの【中級弓術】のアローレインでカバーしてもらう。

 アローレインは全体攻撃だが、ゴーレムは味方への攻撃を全て肩代わりする特性があるので、マジシャンに攻撃は届かない。

 

 やがて、ゴーレムの核を斬り裂き、光の粒子となって消える。

 すると、マジシャンが魔法を唱え始める。ゴーレムを蘇生する魔法スキルだ。


「直刺剣!」


 マジシャンの一つ目をドラゴンブレイドで深く突き刺す。

 蘇生させたらちょっと面倒なのでさっさと倒す。

 ゴーレムさえいなくなれば紙のような防御のマジシャンなど一撃だ。



 こうして、5日目には100階に到着。

 プレイスメントを使い、転移陣を設置。

 ボスは2ヘッドマンティスだ。





◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 ミストラルの固有スキル【光弓の使い手】

・光の矢を生成(20本でMP1消費)

・弓術の成長率上昇(それ以外の武器スキルの上昇率低下)

・光属性の効果1.5倍

・光、闇属性の被ダメージ1/2

・闇属性の修得率、成長率大幅低下


 クラウス視点だと知ることができない可能性が高いためここに設定を載せておきます。

 ストーリーの都合上ちょっと変えるかも。

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