第65話 統括部長 

 納品所では、ちょっと偉そうな感じの人が待っていた。


「お前がクラウスか。そして横にいるのはミストラルだな?」


「はい。そうですが、あなたは?」


「俺はワーズワース=グレイン。ギルド一階の統括部長だ。A級の管理をしている。支部でいうとギルドマスター的な位置だ。わかっていると思うが、軍所属だ。ミストラルとやら、おかしなことをすると容赦しないからな」


 強面で真っ黒いメガネをしているため、見た目がとにかく怖い。

 てか、なんでいきなりミストラルさんが目の敵にされているんだろう。


「クラウス、さあダンジョンの戦利品を出せ」


「はい……」


 マジックバッグから魔石やドロップ品を出して職員に渡していく。


「これ一ヶ月分くらいありますね」


「お前の感想なぞ聞いとらん。さっさと計量しろ」


「ひいっ」


 職員がワーズワースさんに怒られている。


「さすが『メイベルの麒麟児』か。伊達ではないな。ミストラル、お前クラウスのおこぼれにあずかっているだけではないのか?」


 知らないところで名前が付けられている。


「ええ、そう言われるのは仕方がないと思います」


「ワーズワースさん、さっきからどうしてミストラルさんにきついんですか?」


「クラウスさん、構わないんですよ。私が聖メルティア教国の出身だからだと思われます」


「ほう。分かってるじゃねーか。お前がS級になれないことも分かってそうだな」


「そんなのギルドの規約にないんじゃないんですか」


「クラウスさん、必ずしも書いてあることが全てではないんですよ。書いてあるのは最低限のことだけです」


「その通りだ。場合によってはお前がミストラルを処分する必要があるが、その覚悟はあるのか?」


「処分って、どういう意味ですか……?」


「私がスパイだった場合、などですね。要はこの国に不利益を及ぼすと認められる場合です」


 あっさりとミストラルさんが言う。


「私も死にたくないのでそんなことしませんが」


「その様子を見るとクラウスは何も分かっていなかったようだな。実力はあってもまだまだお子様だな」


「…………」


 不穏な空気が場を包む。



◇◇◇



「あの部長、終わりました」


 さっき怒られた職員が恐る恐る口を開く。

 もう終わったのか。

 さすがギルド本部にいるだけあって手際がいい。


「で、どうだ?」


「何がでしょうか?」


「お前の見立てでクラウスの実力はどんなものかってことだよ。今はお前の個人的な意見を聞いている」


 さっきお前の意見は聞いていない的なことを言ってたような……


「あ、はい。納品量とそれに要した期間と人数を考えると既にA級上位、いやS級かと。あくまでダンジョン攻略に関してのみですが」


「転移陣を何階に設置した?」


「……80階」


「おっと、の機嫌を損なってしまったかな。しかし最終階でプレイスメントを使うとは、『永遠の回廊』の踏破を目指すだけはあるか。頑張りな、




◇◇◇




 個人的にとても腹立ったが、ワーズワースのステータスは見えなかった。


「ミストラルさん、どうして言われっぱなしだったんですか」


 報酬を受け取って宿舎に帰る途中、聞いてみる。


「この国の軍人は職務にとても忠実です。ティンジェル国民を守るため、外国人に警戒するのは当然です。むしろ私はこの国に隙がないとすら思いました」


「…………」


「以前に布教の話をしましたよね。メルティアに報告書を送っていますが、その内容はこの国に事前に見せなければなりません。もし私がスパイだと疑われていた場合、この世にいないか、洗脳されて逆スパイに仕立て上げられているでしょうね」


「怖い二択ですね。何でそんなこと知ってるんですか?」


「布教でこの国に派遣される時に教えてもらえるのです。この国と余計な争いを起こさないように、この国の政治や文化、宗教などを徹底的に学んでおくのです。個人的に興味があるというのもありますが」


「ミストラルさんが物知りなのはそういうことだったんですね。正直僕よりこの国に詳しいですもんね」


「みなさん意外と自国については知らないものですよ。私も布教に際してこの国のことを知ってからあらためて自分の国のことを見直しましたから」


「そうなんですか……。それにしても外国人はS級になれないなんて知りませんでした。ギルドって実力主義だと思っていたんですが」


「メルティアでも外国人は司祭より上にはなれませんよ。司祭は…… そうですね、冒険者でいうとC級相当でしょうか。たとえ最上位スキルの【光魔法マスター】を持っていたとしてもです」


「A級までは外国人に認めているこの国はまだ寛容なほうなんですね……」


「ええ、東のカイト帝国では、外国人は公職に一切就けないそうです。スパイト王国に至っては外国人に対して危害を加えても罪に問われませんからね」


「ええぇ…… それって自分の身を守るために反撃したらどうなるんですか?」


「もちろん、外国人の側のみが罪に問われます」


 わけがわからないよ。

 旅行とかできないな。

 まあいいや。

 たぶん行くことないし。




◇◇◇




 A級からさらに昇格するには、王国内にある10ヶ所のA級ダンジョン全てについて50回以上クリアし、かつ3名以上の貴族の推薦が必要となる。


 このうち、貴族の推薦はもう条件を満たしている。


 スタン侯爵様だ。


 そして侯爵様子飼いの貴族からの推薦も確定している。

 スタン侯爵様は国内でも有数の大貴族なので、そのくらいのことは容易い。


 僕はスタン侯爵様との縁ができたけど、普通は時々貴族からギルド本部に持ち込まれる依頼を成功させて、徐々に信頼を得ていくものらしい。



 あとはいつも通りダンジョンを攻略していくだけだ。

 帰還の転移陣を自分で設置できるから、むしろペースが速くなりそうだ。



 というわけで、ギルド本部の受付で1週間空けることを告げて、ホワイトドラゴン狩りだ。



 1週間無心になってひたすらホワイトドラゴンとワイバーンを狩り続け、ギルドで納品すると、120回も倒していたことがわかった。

 途中から数えるのが面倒になったので特に気にしていなかったが、4日目くらいで【ドラゴンキラー】のスキルが生えてきたから結構倒してたと思ってたんだけど。



LV:145

HP:26848/26848

MP:200/200

腕力:2015

体力:1878

速さ:1814

器用:1697

知性:1672

精神:1503

スキル

【生活魔法】

【上級剣術Ⅲ】【上級剣術Ⅱ】

【上級体術Ⅰ】【中級盾術Ⅳ】

【中級火魔法Ⅴ】【上級水魔法Ⅰ】

【中級風魔法Ⅴ】【中級雷魔法Ⅴ】

【中級光魔法Ⅴ】

【エクスペリエンスⅡ】【ラージⅤ】

【ストロングⅠ】【体力上昇Ⅴ】

【クイックⅢ】【クイックⅠ】

【コンプレクスⅡ】【器用上昇Ⅳ】

【知性上昇Ⅴ】【精神上昇Ⅳ】

【ドラゴンキラー】(NEW)

【ライフレスキュー】

【スキル成長速度上昇Ⅱ】

【MP回復力上昇Ⅳ】 

【レアドロップ率上昇Ⅳ】(UP)

【攻撃時MP回復Ⅲ】

【撃破時MP回復Ⅲ】(UP)

【高速詠唱Ⅱ】【詠唱時防御】

【不意打ち】【捕縛術】

【ステルスサーチ】【隠蔽Ⅳ】

【トラップシーカーⅢ】

【中級錬金術Ⅳ】

【毒耐性Ⅳ】【睡眠耐性Ⅳ】

【沈黙耐性Ⅱ】【麻痺耐性Ⅲ】

【暗闇耐性Ⅳ】

【弱者の意地】

固有スキル

【交換Ⅳ】





◆◆◆◆◆◆


 いつもお読みいただきありがとうございます!


 スタン侯爵については第58話参照です。

 たまたま縁があったと思っているクラウスですが、もちろんエリアがスキルで誘導しています。

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