第42話 B級昇格と離脱
中断していた六つ子のゆりかごの攻略を再開だ。
あと19回ボスを倒せばいいので、2週間もあればいけるだろう。
六つ子のゆりかごの攻略中もノトリーとの【交換】を可能な限り行っていた。
ステータスは全て僕より下。
スキルも僕が持っているものの低レベル版だ。
スキル
【初級剣術Ⅳ】(←【生活魔法】)
【最大HP上昇Ⅱ】(←【生活魔法】)
【速さ上昇Ⅲ】(←【生活魔法】)
【毒耐性Ⅰ】(←【生活魔法】)
【詐術】(←【生活魔法】)
これでノトリーはスキルが全て生活魔法という面白いことになっていた。
交換したスキルはとりあえず統合せずしばらく置いておくつもりだ。
ちなみに、【生活魔法】は手放しても次の日に生えてくるようになっていた。
これもスキルに習熟するということだろうが、こんな経験してるのは僕ぐらいだろうな。
【詐術】については、【生活魔法】との交換を繰り返すつもりだ。
彼がいつまで生きているかはわからないけど。
◇◇◇
1週間たったときに、僕はヴェインさんから呼び出された。
「クラウス、B級に特別昇格だ。理由は国家に著しい貢献があったためだ。先に言っとくが断らせんぞ。今回の件や暁の戦士団の件もありながら全く報酬がないのはありえんからな」
「報酬がいらないとは言いませんが、それは僕のスキルを秘密にしてくれている対価だと思っています」
「これを断られるとな、あとの奴が報酬貰えなくなるだろ。国としても貢献があった者に何も報酬を与えないのは体裁が悪いんだよ。とりあえずもらっとけ。お前のことが表にでないのは変わらない。わかったか?」
「……わかりました。ありがたくお受けいたします」
このあと、受付でエリアさんにシビルカードを更新してもらった。
「クラウスさん、B級おめでとうございます」
「ありがとうございます、エリアさん。ランク負けしないように活動したいと思います」
「期待していますよ」
◇◇◇
ミストラルさんとトルテさんにも僕のB級昇格のことを知らせる。
「おめでとうございます、クラウスさん」
「……おめでとうなの、クラウス」
「それで、今後のことなのですが……」
「クラウス、六つ子のゆりかごが終わってからにしたいの」
「? はい、わかりました」
◇◇◇
さらに3日後、六つ子のゆりかごの魔石も規定の数を納め終わったところでトルテさんが話があるの、と言ってきた。
「トルテ、実は軍の魔法部隊に入らないかって誘われてるの」
「最近妙に黙っていることが多いし、魔法も少し安定していません、と思っていましたが、そういうことだったんですね」
ミストラルさんが納得していた。
僕はそのあたり気がついていなかった。
「それでね、クラウスがB級に上がったから、もうこれ以上ついていったらいけないと思うの」
「僕は気にしませんが……」
「もともとトルテは宮廷魔術師になりたかったの。そのために冒険者で名をあげれば軍の目にとまってそこで活躍すれば宮廷魔術師の道が開けると思ってたの」
「確かにその可能性はありますが…… 軍から保証されたのですか?」
「多分大丈夫だろうって。皆には今まで言ってなかったけど、トルテは15歳になってすぐに地水火風の4つの魔法が使えるようになっていたの。それと、魔法のスキルレベルは4つ全て同時に上がるの。このことを話したら、それだけ強い固有スキルならいずれは宮廷魔術師も夢ではない、と言われたの」
それは凄い。
普通は1つ修得するのにも時間がかかるし、才能がなければ上級レベルに上げるには20年かかると言われている。
仮に4つ持てたとして、それらを成長させないといけないから、一人の人生だと到底時間が足りない。
後衛で魔法スキルを2つ使いこなせれば十分に優秀だ。
魔法スキル1つしか持っていなくても別に珍しくないのだ。
それを4つも最初から持っていて、さらに4つ同時に成長するということは、おそらく4つの魔法スキルの熟練度が共通なのだろう。
4属性持ちでしかも使いこなせるなんて絶対なんか強力な固有スキルがあると思っていたけど。
実は、永遠の回廊の攻略について来てくれないかな…… とか密かに考えていた。
「だから…… パーティを抜けさせてほしいの!」
トルテさんの黒い帽子が揺れる。
「永遠の回廊の踏破が目的の僕といても宮廷魔術師には遠いでしょうから、いいですよ。その固有スキルは強力なので羨ましいですが……」
「何を言ってるの。クラウスのほうがよほど強力なの」
僕のは他人が育て上げたスキルを貰ってるだけだからなあ。
自力で育ててるスキルといえば【交換】スキルくらいなもんだ。
「トルテさん、夢に近づくのですから遠慮なさることはありません。私は喜んで送り出したいと思っています」
「ミストラル、ありがとうなの」
「では、送別会をしましょう。クラウスさんの昇格祝いもまだでしたし」
◇◇◇
その日の夜、ギルド併設の酒場で小さな送別会を行った。
今まであったことを話し、会話が弾む。
「トルテさん、なぜ宮廷魔術師になりたいんですか?」
この際だから聞いてみた。
「それはね、小さいとき街に来た宮廷魔術師のお姉さんがかっこよかったからなの」
「そうだったんですね」
冒険譚を読んで憧れた僕とあまり変わらないな。
「ミストラル、クラウスにこれからも着いていくの?」
「ええ、クラウスさんが許してくれる限りは」
「ランクの差はどうするの?」
「上下1ランクの差まではパーティを組めますからね。それにそのうちギルドの特別試験を受けますよ」
パーティは、1ランク差しか組む事を許されていない。
これは上位ランクの冒険者が下位ランクの冒険者を同行させて囮にしたことが過去にあったからだ。
また、上のランクの冒険者に同行していて、十分な経験と強さがあると思われる場合は、ギルドの課す試験をクリアすれば昇格できる。
「寂しくなりますね」
「クラウスなら大丈夫なの。でも早く永遠の回廊に挑む仲間を探しておいたほうがいいと思うの」
それはS級になってからだと思っている。
単独踏破ってのも悪くないだろうけど。
次の日、トルテさんとともにギルドの受付でパーティ登録を解除した。
◆◆◆◆◆◆
※この話の番外編を書いています。
◆番外編 トルテルート
https://kakuyomu.jp/works/16818093083567610939/episodes/16818093083568164943
いつもお読みいただきありがとうございます!
トルテが離脱しました。
トルテの固有スキルは成長すればさらに強力なものに設定していました。
強力な代わりに、光と闇の魔法スキルを取得できないのですが、触れる機会がなさそうなのでここに書いておきます。
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