第35話 C級の聖地
トルテさんによからぬことを考えていたC級パーティの人(レベル59)と僕のレベルを【交換】する。
LV:59(←69)
レベルを交換してみたが特に他のステータスやスキルに変化はなかった。
実は、レベル差の分だけステータスが下がってしまうという最悪の事態も考えていたが、そうならなくてよかった。
これで安心してレベルを下げられる。
で次の日、本命の【交換】を行う。
LV:33(←59)
相手は元ギルド職員のジバンだ。
暁の戦士団に命を狙われることになった元凶。
これでステータスを維持しつつ【弱者の意地】の効果を受けることができる。
◇◇◇
ミストラルさんとトルテさんと合流すると二人とも新しいスキルが生えてきたというが、効果がよくわからないという。
僕は心当たりがあったので確かめるためにE級の火の山岳に行ってみることにした。
どうせ六つ子のゆりかごはしばらく封鎖だし、お金もしばらくは稼ぐ必要がない。
懐かしの火の山岳だ。
虹色のスライムに遭って【時空魔法】と【弱者の意地】を取得して、ボスと戦って死にかけて……。
いろいろあったよ。
入ってすぐにゴブリンファイターが2体現れる。
「トルテさん、水魔法でやつらを倒してください」
「わかったの」
トルテさんはウォーターボールでゴブリンファイターを倒す。
「MPはどうですか?」
「敵を倒したらMPが少し回復した感じがするの」
「トルテさん、新しいスキルは【撃破時MP回復Ⅰ】です。敵を倒したときに最大MPの5%分が回復します。モンスターハウスの消滅後に僕にも生えてきました。ミストラルさんも同じだと思います」
このあとミストラルさんも光魔法で攻撃し、同じ感触を得たとのことだった。
「なぜ【撃破時MP回復Ⅰ】だとわかったのですか? この手のスキルは鑑定系でも持っていないとすぐにはわからないものですが……」
「僕は自分のステータスとスキルを見ることができます。それでモンスターハウスの消滅時にいたトルテさんとミストラルさんにも生えているだろうと予想しました」
「トルテのステータスは見えないの?」
「ええ、他人のステータスは見えません。だから魔物を使って試してみました」
もちろん本当は悪意のある相手なら見えるが、流石にそこまでは言わなくていいかな。
どのみちこの二人のステータスは見えないんだし。
「なるほど、便利なスキルをお持ちですね。普通なら手探りで自分のステータスやスキルを特定していくものですから」
「ええ、まあ」
「それとあの場に居合わせたおかげか、レベルもかなりあがったようです。魔法の威力が以前より増しているのがはっきりわかります」
僕もそこそこレベル上がってたからね。
【取得経験値半減】のない2人はもっと上がっているんだろう。
◇◇◇
いろいろと確認できたので、ギルドに戻る。
掲示板に僕の呼び出しが貼ってあった。
受付に行ってみるとエリアさんが僕に指名依頼が入っていると教えてくれた。
「クレミアン商会からの指名依頼です。ランベールとの往復の護衛となっています。詳しくはこちらの紙をご覧ください」
エリアさんから渡された紙を見てみるが、指名されているのが僕だけだ。
「ランベールですか。C級になったことですし、一度は行ってみてもいいかもしれません」
「でもこれ、指名が僕だけですよ」
「クラウスさんが行かれるなら報酬がなくてもついていきますよ。お金なら十分にありますし。トルテさんはどうされますか?」
「トルテもついていくの。クラウスといたらまたいいことがあるかもなの」
◇◇◇
今回の依頼者のクレミアン商会の担当者に会う。
実はウォーレンさんからの紹介だったようだ。
いわく、C級の報酬でA級を雇えるぞ、と。
ミストラルさんとトルテさんについては、同行を許可してもらえた。
ただでついてくるなら別にかまわないということで。
道中3日かけてランベールについた。
途中の敵は雑魚ばかりだったので特に問題はなかった。
次の出発が2日後なのでランベールにあるC級ダンジョンの『ゴールドラッシュ』に向かってみる。
ここの入り口前に建物があって必ず建物を通らないとダンジョンに入れないようになっていた。
建物に入ってギルドの職員にシビルカードを渡すと、カードに何か記録をしているようだ。
「では、今日から一週間ですね。頑張ってください」
と言われ、見送られる。
◇◇◇
このゴールドラッシュはC級の聖地とも呼ばれている。
ここの魔物はドロップ品がお金なのだ。
レアドロップもお金。
敵は属性攻撃がなく物理攻撃のみ。
状態異常攻撃もない。
とても攻略しやすい。
全20階で5,10,15階に転移陣がある。
ここに一週間こもれば、最低でも2,3週間分の収入が得られる。
ドロップがよければ最大で半年は稼がなくてもいい金が手に入る。
そんなわけで大人気ダンジョンだが、入場制限がかかっている。
まず、C級しか入れない。
また一週間過ぎたら、次に入れるのは3週間後。
シビルカードは入場記録を取っていたのだ。
さらに一週間を過ぎてダンジョンにいたら、一年間の入場停止にされる。
これがあるから、C級で停滞するのだ、ともよく言われる。
上を目指さないならここで一生稼いでいればいいからだ。
僕には向いていないダンジョンだ。
昇格の条件でボスの100個の魔石が必要なのに、三週間の間を空けないといけなくなるから効率が悪い。
とりあえずの金策にはいいのかもしれないが。
そういうわけでいまいちやる気がでないが、ひととおり魔物を倒しておく。
ここに出るのはオーク、ウォーウルフ、ゴブリンバトラーなどだ。
他の冒険者が倒したそうにしていたので、今回はできるだけ魔物を避けたり逃げたりして、二日かけて攻略した。
ボスはキングインセクトで、金色の一本角が特徴だった。
弱かったけど。
それなりにレベルが上がったが【弱者の意地】の効果が減るので、少し損した気分だ。
◆◆◆◆◆◆
いつもお読みいただきありがとうございます!
安心してレベルを下げられる、とかいうパワーワード。
書いてる最中に、FFTでトラップを使って吟遊詩人でレベルを下げて忍者でレベルを上げる、を繰り返したことを思い出してました。
スピードを上げまくったキャラがうっかり戦闘不能になろうものなら即クリスタル→リセット。
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