第16話 パーティの誘い
タケヤマを倒してから1週間後、冒険者狩りが捕らえられその場で処刑されたことが発表された。
冒険者ギルドのサブマスターが冒険者狩りに狙われ、捕縛しようとしたところ抵抗されやむなくその場で殺した。
証拠となる黒い仮面と黒装束も見つかり奪われたスキルも戻ってきたことを確認済みである。
というのが大筋だ。
そして僕はサブマスの部屋に呼ばれていた。
エリアさんもいる。
「クラウス君。冒険者狩りについては役に立ってくれた。早い段階で解決できたのはお前のおかげだ、礼を言うぞ」
「いえ、とんでもないです。こちらも助けていただきましたし」
「それで、お前の功績についてなんだが、お前のスキルの内容は明かさないほうがいいだろうと思ってな。私が偶然遭遇してそのまま片づけた、ということにしておいた。だから、お前に報償がない。正式にはな」
「そうですか。スキルについてバレたくないですし、それでかまいません」
「だがな、【交換】スキルがなければやつの居場所もつかめなかったし、やつのステータスやスキルも把握できず、対応は間違いなく遅れて被害はもっと拡大していただろう。それにお前は【時空魔法】も失ってしまったのだろう? そこでだ」
サブマスが言葉を切ったあと、エリアさんが冒険者用のバッグを手渡してきた。
「クラウスさん、私たちから報酬と補償を兼ねてということで、こちらのバッグをお受け取りください。これはマジックバッグです」
エリアさんがバッグを差し出してくる。
見た目はその辺に売っているものと変わらない。
が、なんとなく上品そうな雰囲気がある。
「ディメンションボックスのように魔法を収納はできませんが、これからクラウスさんのランクが上がって長期の旅に出られるときには必ず役に立つはずです」
「……いや、さすがにこれは受け取れないかと」
「確かお前は『助けてくれたら何でもする』と言っていなかったか? ならそれを遠慮なく受け取れ。いいな?」
多分これは断ることが失礼に当たるんだろうな。
というか、サブマスから絶対に受け取れ、というオーラが滲み出ている。
「……分かりました。ありがたく頂戴します」
というわけで、僕はマジックバッグを手に入れた。
マジックバッグ自体は、ものすごく入手困難というわけではない。
A級以上のダンジョンの宝箱にたまに入っているらしいし、上級の錬金術師が作成できる。
ただ、その上級錬金術師がそもそも数が少なくて、王国のシビルカード作成魔道具のメンテナンスという大事な仕事もあるのでマジックバッグの流通はあまりない。
持っていればA級なんだろうな、と思われるような代物だ。
一体いくらするのか想像つかないが、考えないことにしよう。
多分考えてはいけないやつだ。
◇◇◇
僕はタケヤマとの戦いの結果、結構強化された。
最大HP:8367(←2789)
最大MP:200(←100)
スキル
【ラージⅤ】(←【最大HP半減】)
【ドロップ率上昇Ⅱ】(← 【ドロップ率上昇Ⅰ】×2)
【時空魔法Ⅰ】は消滅
固有スキル
【交換Ⅲ】(UP)
MPが200になったことは言うまでもなく今回の最大の成果だ。
タケヤマとの初遭遇時に【交換】で得た。
【ラージⅤ】は最大HPを50%上昇させる。ちょうど【最大HP半減】と反対だ。
これは予想だが、おそらくタケヤマに奪われた【最大HP半減】が強化されて戻ってきたのだと思われる。
最初に奪われた【交換】もスキルレベルが上がって戻ってきたし、ギルマスも【上級剣術】が強くなったと言っていたからだ。
HPが8000を超えたけど、S級はだいたい10000オーバーと言われるので、あと少しでS級。
【ドロップ率上昇Ⅱ】は、上昇率10%だ。
タケヤマが僕の【時空魔法Ⅰ】と交換したのが【ドロップ率上昇Ⅰ】だったのか、同じスキルが2つになっていた。
【交換】スキルによると、同じスキルが2つあっても効果は重複しない。
またスキルを統合でき、その場合レベルが上がることもあるという。
というわけで統合してみたら、無事レベルが上がった。
【時空魔法Ⅰ】については……、まあ過ぎたことだ。
代わりにマジックバッグもらったし。
そして、【交換Ⅲ】は、戻ってきたときにレベルアップしていて、『同じ相手には1回しか使えない』という制限がなくなっていた。
1日1回はそのままだが、これで同じ相手からどれを交換するかを絞る必要がなくなった。
早速今まで交換してきた相手を思い返してみたけど、【交換】できなかった。
どうやらレベルが上がる前に対象となった者については、もう一度視界に入れないとレベルが上がった後の効果を発揮できないようだ。
『剛力無双』からまた交換しようと思ったが、そのために探すのもちょっと、って感じだし、あれからパーティのランクも落ちたらしいのでもしどっかで出会った時にまた考えよう。
◇◇◇
山彦水を錬金術で30個ほど作ったのでそろそろD級ダンジョンの『沈黙の谷』でも挑もうかと思ったところ、エリアさんから声がかかった。
「クラウスさん、D級パーティのメンバー募集がありまして、その条件にクラウスさんが合致していると思われますので、検討されてはいかがでしょうか?」
うーん、どうしようかな。
エリアさんの薦めだしな。
なんだか断りにくい。
ま、とりあえず会うだけ会ってみようか。
「話だけでも聞いてみようと思います」
「それでは、先方にお話ししますので、明日のこの時間にロビーにいらして下さい。それと、話した結果、断っていただくのはもちろん問題ありません。当然、パーティに参加するかどうかは自由です。ギルドはただ機会を提供するだけですので、私に気を使う必要はありません」
「わかりました」
◇◇◇
次の日、ギルドのロビーに行くとエリアさんと4人組が待っていた。
「お待たせしてすみません」
「クラウスさん、指定の時間通りですので問題ありません」
「あんたがクラウスか。俺はウォーレン。メンバーを募集してもなかなか集まらなかったから、エリアさんに誰かいないか相談して、あんたを紹介してもらったんだ」
灰色の髪で背が高く、がっしりとした体格の男が僕の目を真っ直ぐ見て話してくる。
第一印象は頼れる兄貴、って感じだ。
「それでは、私はこれで。ウォーレンさん、後はあなた次第となります。クラウスさん、私の仲介を受け入れていただきありがとうございます」
エリアさんは一礼すると去っていった。
「クラウス、話を聞いてからとのことだから、まずはこちらの自己紹介から始めて構わないかな?」
「はい、かまいません」
「俺はウォーレン。パーティのリーダーをしている。クレミアン商会の四男で19歳だ。【初級槍術】と【初級風魔法】が使えるぜ」
次に水色の髪で目にホクロがあるグラマラスな女性が自己紹介してくる。
「アタシはサレン。18歳よ。ウォーレンについてきたの。【探知】や【罠発見】、主に斥候役ね。短剣や投げナイフを使うわ」
そして、緑色の髪に白い修道服を着て弓を持った男が自己紹介する。
「私はミストラルと申します。20歳で、聖メルティア教国出身の神官です。以後お見知り置きを。【初級光魔法】と【初級弓術】が使えます。回復と不浄の者への対処はお任せ下さい」
最後は長い黒髪にクリッとした黒目で、黒いマントを羽織った女の子だ。
「トルテなの。17歳なの。見た目のとおり魔法が得意なの。初級の火、水、風、地の魔法を使えるの。よろしくなの」
最後のトルテさん、四大属性全てが使えるのか。
ってことは、水と風の魔法スキルを持ってれば自動的に使える雷魔法も使えるはずだ。
「僕はクラウスといいます。15歳です。【中級剣術】と【初級水魔法】が使えます。あと、【初級錬金術】を持っています」
ウォーレンさんが本題に入る。
「で、俺たちのパーティは前衛を求めてる。D級で【中級剣術】が使えるくらいなら、スキルは前衛として問題なさそうだが、それ、水のローブだろ? そんな装備で大丈夫か?」
◆◆◆◆◆◆
「一番いいのを頼む」
いつもお読みいただきありがとうございます!
クラウスは知る由もありませんが、今回の出会いもエリアのスキルによる導きです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます