第5話 昇格祝い(勝手にもらう)
一週間後、魔物討伐を繰り返して僕はゴブリンウォーリアの討伐数が足りたということでE級に昇格した。
レベルも2上がって13になった。
そして、エリアさんの言ったとおり剛力無双は戻ってきていた。
向こうは依頼終了の手続中のようだから、今のうちに交換できる最後の一人とスキルを交換しておこう。
腕力:685(←274)
スキル
【腕力上昇Ⅴ】(←【腕力半減】)
【中級剣術Ⅲ】(UP)
固有スキル
【交換Ⅱ】(UP)
剛力無双の4人目からは、【腕力上昇Ⅴ】を貰っておいた。
僕もちょうどE級に昇格したし相手の了解なんかないけどお祝いってことでね。
そして代わりに【腕力半減】をプレゼントしてあげた。
攻撃は最大の防御なり、ということで、ヒュージスと交換した腕力を最大限に生かそうと思ってこの組み合わせを選んだ。
【腕力半減】がなくなって本来の腕力に戻ったうえ、【腕力上昇Ⅴ】によってさらに腕力25%アップだ。
これで腕力はもうA級といってもいいだろう。
さらに思いもかけなかったけど、【交換】も同時にレベルがあった。
『相手が視界の中にいること』が、『一度視界に入れれば、その後はいつでも交換できる』となっていた。
これで一度相手を見てさえおけば交換の機会を逃すことがなくなり、制限が緩くなった。
僕の【交換】スキルの餌食になった剛力無双は、受付での手続が終わったあとよほど疲れていたのか、僕に気づくこともなく俯いてどこかへ消えていった。
◇◇◇
剛力無双の4人から【交換】したあとの今のステータスとスキルはこうだ。
LV:13
HP:2256/2256
MP:100/100
腕力:685
体力:296
速さ:54
器用:38
知性:41
精神:33
スキル
【生活魔法】【中級剣術Ⅲ】
【初級水魔法Ⅰ】
【取得経験値半減】【最大HP半減】
【腕力上昇Ⅴ】【体力半減】
【速さ上昇Ⅴ】【速さ半減】
【知性半減】【精神半減】
【器用半減】【MP回復力半減】
【消費MP軽減力半減】
【スキル成長速度半減】
【ドロップ率半減】
【全属性耐性半減】
【状態異常耐性半減】
固有スキル
【交換Ⅱ】
最大HP、腕力、体力が大幅に上昇していて、今の僕は完全に脳筋だ。
ちなみに、A級冒険者の平均ステータスは550前後だ。
また、【初級剣術Ⅴ】から【中級剣術Ⅲ】にレベルが上がっている。
また腕力のステータスが急上昇したことに対応したのだろう。
スキルレベルが上がり、使える技も大幅に増えた。
その中で使えるのは【中級剣術Ⅰ】で覚える『清流剣』だ。
この技は流れるような動作で攻撃し、攻撃時に水属性に弱い者に対して30%の特攻がついて、さらに命中率が2倍となる。
器用が低い僕にはありがたい技だ。
なんせ攻撃力が高くても当たらないと意味ないからな。
ボス戦でこれを使用することになるだろう。
ダンジョン攻略では、道中を通常攻撃か、使い込んで消費MPの低くなった初級の技や魔法で駆け抜けてMPを温存しておき、ボスに最強の攻撃を叩き込んで短期決戦で終わらせるのが理想とされる。
もし、短期で終わらなければ潔く早めに撤退をした方がいい。
持久戦だと回復アイテム頼りになりやすいので無事倒せても結局赤字になりやすいからだ。
◇◇◇
E級に昇格した後、僕はゴブリン洞窟のさらに南にあるE級ダンジョン『火の山岳』に挑戦することにした。
ここの敵は、ほとんどが【火耐性Ⅱ】(火属性ダメージを10%軽減する)を持っていて、代わりに【水属性耐性低下Ⅰ】(水属性ダメージが5%増える)を持っている。
またダンジョンは勾配が多く進むだけでも結構疲れる。
全7階層あって、一気に攻略しようとすれば日帰りが厳しくなる。
ただ、E級のダンジョンからは入り口と途中の階と最後の階のボス部屋直前には転移陣が置いてあって、わずかなMPを流し込めば使えるようになっている。
そして、いったん到達すれば同じダンジョン内の転移陣同士でワープできるので今日は転移陣のある4階到達が目標だ。
なお、最後の階にある転移陣は帰還しかできず、他の転移陣から直接ワープすることができない。
なので、いったん到達してボスだけ倒し続けることはできない。
火の山岳に出てくる魔物は、棍棒を持ったゴブリンファイターや弓を使うゴブリンアーチャー、火属性魔法が使えるゴブリンメイジにファイアラビット、火トカゲとかだ。
2階に到達したところで他の冒険者パーティから勧誘を受けた。
どうやら魔物を一撃で倒し、攻撃を受けてもほとんど怯まずに進んでいく僕の姿を見られていたようだ。
丁寧にお断りしたあと、極力他の人に姿を見られないように周囲に気を付けながらダンジョンを進んでいく。
勧誘を断るのもなんとなく気を使って疲れるからね。
少し時間がかかって4階の転移陣に向かう途中で、【探知Ⅰ】が生えてきた。
自分の周囲5メートルの気配を察知できるスキルだ。
◇◇◇
4階までの転移も確保したので、気分を変えて通常の依頼を受けてみることにした。
E級になってもギルドの仲介する依頼はF級とそこまで変わらない。
ただ、今はちょうど僕にとって割りのいい依頼があった。
それは、クレミアン商会の依頼だ。
商会は中規模で生活用品や簡単な魔道具を扱っている。
依頼はここから3日かかるランベールの町にある支店に商品を届け、帰りに支店の品をメイベルに運ぶというものだ。
同時に道中の護衛依頼もあったが、護衛はC級からなので僕は受けられない。
荷物の量はかなり多くて馬車3台分もあった。
僕は腕力と体力に自信があったので、サクサク運んでいって驚かれていた。
護衛はCランクパーティ『酒人公』。
5人パーティで、剣士2人、盾使い、弓使い、魔法使い1人ずつの構成だ。
リーダーの人は剣士でライネルさんという。
エリアさんによると、堅実で安定感のあるパーティで、Bランク昇格間近の実力派とのこと。
あと、冒険後の一杯をこよなく愛しているらしい。
ちなみに僕はまだ酒を飲んだことはない。
ライネルさん達と打ち合わせを済ませ、依頼人の商会員2人と合わせて出発。
街道を順調に進んでいたが、2日目に入ったところで弓使いのエリーゼさんがみんなに【探知】スキルに7つの人型の反応あり、と知らせる。
少しして緑のマスクと緑のマントをした者たちが馬車を囲むように現れた。
事前の打ち合わせでは、戦闘の心得がない商会員1人と依頼が護衛でない僕は馬車の中で隠れることになっていた。
中から様子を見てみると、リーダーと思われる者がライネルさんと話をしている。
リーダーを見ると、ステータスやスキルが見える。
てことは盗賊確定だな。
少しして、『奪え! 殺せ!』の声とともに盗賊が襲いかかってきていた。
数の上ではこちらが不利だ。
ライネルさん達を抜けて2人の盗賊がこちらに向かってきた。
このまま馬車に閉じこもっていてもいずれ殺されるだろうから、自分から外へ出て応戦の構えをとる。
対人で命のやり取りをするのは初めてだ。
いつかあると頭でわかっていたが、実際に対峙すると動けなくなってしまった。
「へへっ、こいつ震えてやがるな」
「さっさと殺しちまおうぜ」
僕は相手の顔を見る。
人を殺すことに遠慮がない冷たい眼だ。
ヒュージスのときとは違って、相手は嘲笑いながらも殺意を向けてくる。
殺されるかもしれない。
そう思うと、僕の心臓が激しく鼓動を打つ。
やばい、怖い。
ステータスは僕が上なのに。
……そうだ、怖いならこの感情を交換してしまえばいいんだ。
◆◆◆◆◆◆
いつもお読みいただきありがとうございます!
なんでも交換できる、という設定にしているので、今回はステータスやスキル以外のものを交換させようとしてみました。
今のところ一回しかない交換の機会をこれで使うのももったいない気もするのですが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます