第7話
「世界は笑っていた」7
東京は広範囲に渡って潰れてしまったけど空は快晴である。
都市部は自衛隊や消防、警察が協力して瓦礫の中からたくさんの人を救出活動している。崩れた建物や傾いているビル、看板が半分取れて揺れている中で自分の命を賭けてまで他者の命を助けようとしている。
そして荒れた街を眺めていると狸やハクビシンや野良猫、野良犬をよく見る。それに混ざって三歳児くらいの大きさの鬼が混ざっていたりしている。狭いところに入って生きている人達に飲み物や食べ物を運んでいるのである。それを指揮しているのは近所の神社の宮司さんやお坊さん、狛犬のような神獣であった。少しでも助かるようにと延命のために食料や薬を隙間から運び入れているのである。
瓦礫が転がっていたりや陥没した道路をゆっくりと進みやっと大手町の平将門の首塚に着くと被災者達の行列が出来ていて、まささんがおにぎりを握りながら配っていた。まささんの後には矢が刺さった落ち武者達が米を炊いたり豚汁を造ったりしている。
ブーチャンは行列の邪魔にならない所に車を停めた。僕は慌ててまささんの所へ駆け寄った。
「おう、来たか小僧」
「はい。すぐ手伝います」
「全くのんびり酒も呑めないぞ。ワシはもう新皇ではないけど民が困っているのは見過ごせないわい」
「まささんは怨霊じゃないんですか」
「ワシはそんなに根に持つタイプじゃないぞ」
後ろの落ち武者達がクスクスと笑っている。話ながらもおにぎりや豚汁を配っている。僕とブーチャンも軽トラから物資を下ろして行列の人達に配り始めた。
まささんはねじり鉢巻きを頭に巻いて汗をかきながら配給活動にいそしんでいて僕はこの人のカリスマ性を見た気がする。僕が引っ越しの相談をしたいと思ったのもこの人のカリスマ性に惹かれたのかも知れないと思った。
行列がなくなり一段落していると銀行員の制服を着た女の人が近づいてきた。
「あの、私にも何か手伝えませんか」
僕は制服を見て一気に緊張してブーチャンの影に隠れてしまった。
「あ、いえ、え、どうしましょ」
ブーチャンは困っている。
「おねえちゃんは、休んでなさい。今は体力つけて身体を休めなさいな」
まささんが対応してくれた。
「何かしていないとおかしくなりそうで、何でも良いから手伝わせてください」
女の人は悲しそうな顔をして今にも泣き出しそうであった。
つづく
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