第6話
「世界は笑っていた」6
軽トラを運転しているのはデブ天狗である。
僕は運転できなかったのであった。
国道20号線は奇跡的に車が走れる状態であった。大型車は端に寄せて停まっていて緊急車両の為に真ん中を開けてあるようであった。所々に街路樹が倒れているが、生き残った人達により復興作業が始まっていた。意識を失っているときに見た地獄絵図は耐えがたいものであったが、生き残った人達が力を合わせて助け合っている姿を見れて安心している自分が居る。
空は晴れ渡っていてラピュタに出て来るような青空である。
まささんの所まで人が非難している神社やスタジアムに寄って物資を配りながら進んだ。
「サンチョさん」
「なんすか」
「誰も私の姿にビックリしないんですが」
「あぁそれは、僕の格好もそれなりに目立つからブーチャンに違和感を感じないのではないっすかね」
「この鼻ですよ」
「天狗のわりには団子っすね」
「それ言っちゃ駄目な奴ですよ。デブは良いですけどね。鼻はダメです」
「自分から見た目のことを言いだしたのに」
ブーチャンは少し不機嫌になっている。
永福町辺りから被害が尋常じゃ無くなってきた。
ビルは焼け爛れていたり大きな看板が倒れていたり高速道路が傾いている。また黒い煙が上がっているところもあった。
気に入っていた藤棚の公園には亡くなった遺体が並べられていて家族が泣きながら遺体の確認をしているのが見えた。
母が亡くなった時を思い出した。集中治療室で色んな器具に繋がられていて僕は息を一生懸命に吸っている母親の手を強く握った。看護師が声を掛けてからほんの数分で母親の呼吸は弱くなり蝋燭の火が消えるように母親は亡くなった。
目の前の人達は見贈る時もなく大事な人を失ったと思うと受け入れられない気持が心を刺した。
僕とブーチャンは新宿御苑の入口付近に軽トラを停めて野宿をした。夜はまだ寒いからペール缶で焚き火をした。潰れた家屋や店舗から薪になる木を拝借した。新宿御苑の置く方にはホームレスの人達が避難民達にブルーシートや食べ物を配っていた。
つづく
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