第5話
「世界は笑っていた」5
朝焼け。
しかし、東京は燃え続けていて海からは津波が襲ってきていた。黒いうねりは燃える家屋ごと内陸へ押し流している。首都高速道路はあちこち崩れ落ちていて道路を塞いでいる。
全てが埃っぽく
全てが焦げ臭く
全てが黒ずんでいる
目を開けると細かい格子の天井の部屋に寝かされていて、周りは障子である。明るくて気持ちの良い明かりが入ってきていて、外からは小鳥の囀りが聞こえる。
パンツ一丁の僕は襖を開けて外に出ると、デブ天狗が口笛を吹きながら竹箒で庭を掃除していた。
「小鳥の囀りはお前の口笛かい」
「お、おはよう、ございます。こんなのも吹けますよ」
ニルバーナをリアルなギター音で吹き始めた。竹箒をギター代わりにしていてやたら上手い。
ヤッサンが濃い朱色地に同系色のマダラ模様の入った半被と黒地に金の鳥の描かれた濃口シャツ、フィールドギアの作業ズボンとマルゴの足袋を持ってきた。
「これ着ろ。お前の名前の意味が解ったよ“山鳥毛”のサンチョだよな。お前さんの亡くなった母親から昨日の夜に聞いたよ。だから、山鳥模様の半被と鳳凰の紋様の濃口シャツ。これは日本の代表的な作業着だからな。あとはワークマンのオリジナルブランドと倉敷の足袋だ」
「ありがとうございます。めっちゃ拘ってますね。そうなんです俺の名前は赤羽山鳥毛と言います。良いずらいのでサンチョです」
ヤッサンはうんうんと頷きながら微笑んでいる。
「我々、神々は今まで通り日本を見守っていくつもりである。君達人間は忘れている感性を取り戻して互いに感じ合う世界を造り直そうでは無いか。君は感性が豊かだから、託すことにする。頼むぞ」
ヤッサンが肩に手を置いてきたが羽が首に当たってゲラゲラと笑ってしまった。
つづく
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