第2話
「世界は笑っていた」2
高尾山は夕焼けに燃えていた。僕は男坂を登り蛸を通り過ぎて猿園を横目に、ん、女猿が男猿に頭を下げている。
「ごめんなさい…出来心なの」
「最低な女だな」
「ごめんなさい……許して」
「お前なんて知らねぇよ」
「ごめんなさい」
女猿は泣いている。
「あんな野蛮な奴なんかとイチャつきやがってよ」
「……」
「俺がどんな思いで客のご機嫌取ってると思ってんだよ」
「あのさぁ…いせておけば調子乗りやがって、テメェがひ弱だから強くて逞しい男達が余所から入ってくるんだろがい、お前らがしっかりしてれば余所からなんて入ってこねぇんだよ。おめぇよビビって見て見ぬふりしてただろ。テメェ見てねぇな十円ハゲのガリガリ君なんてこっちから別れてやるよバカ」
いきなりキレた女猿に男猿は何も言えずにうずくまってしまった。
「あたしゃお山に行きます。もうアンタとはお別れよ」
女猿は走って山の方へ消えていった。
僕は猿も大変だなぁと思いながら見て見ぬふりで通り過ぎた。
ビアガーデンは自粛閉店していて、その先の売店も閉まっていた。
薬王院は天狗があちこちに居てやたら睨んでくる。有難い十箇条や御言葉があるのにこの天狗の目つきは無いわぁと思いながら、親切そうな天狗を探した。
ちょいデブの鈍くさそうな天狗が御朱印の所に居るから声を掛けてみた。
「あの、将門さんからの紹介でカラスに会いに来たんですが」
「え、あ、少々お待ち頂けますか、あ、か、確認してみます」
デブ天狗は奥へ消えた。
つづく
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