第2話

「お前には音楽の才能がある。音大付属の高校に行きなさい。」





数ヶ月前、真生の父が放った言葉が脳裏にこだます。



「そういえば、真生はどこの高校に行くの?なんだかんだ俺、聞いてないんだけど」

「あ、えーっと…」


真生が視線を泳がせていると


「ま、教えたくないなら、いいんだけど」


と優は話をやめた。

いつも友達から、「あほ」と呼ばれるも、こんな時はさり気なく気を使ってくれる優は、友達は沢山いる。


「あ、全然、関係ないんだけどさ、」


次の話を振ってくる優。

真生は先生以外の人に高校の話をしなかった。いつも一緒の優にも碧斗にも渉にも…


直前に話すのも彼らを悲しませるだろうし、かといって、前々から話すのも真生にとっても辛いし、そんな余裕もなかった。


(本当は4人で同じ高校に行きたかったなぁ…)



真生と碧斗は同じ学校でもずば抜けて頭が良かった。そのせいもあってか、進路相談の先生に沢山の高校を進められてきた。

真生が音楽の才能があるのは、先生はわかっていた。けれど、勧めてくる高校の中には、音大付属高校はなかった。


真生の父が勧める高校は、県外の高校だった。



「って、真生〜聞いてる〜?」

「あ、ごめん、ボーッとしてた…」

「また、親父さんになんか言われた?」


また気にかける優。


今まで真生は父に怒られることが何度かあった。その度に真生は辛くて、碧斗や、優、渉に相談していた。


「ううん。なんでもない」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る