第17話 卵探しの旅

 それに動物もいっぱいいる。ヒンフトにピルグ、ブホル、羊さん(仮)、馬さん(仮)、キリンさん(仮)、蛇さん(仮)、蜥蜴さん(仮)、蛙さん(仮)等と様々だ。


 これだけいるなら、交渉して卵をもらえるようにできるかも。流石に蛇さん(仮)とか蛙さん(仮)とかの卵は食べるつもりはないけど。


 はっ! ラキがここに連れて来てくれたのは、色々な卵があるからだったのか。なるほど。理解した。確かになんの卵かは言ってなかったね。



「ラキ、ここに連れて来てありがとう」

『どういたしまして。それで、どの卵がほしいの?』

「そうだね……。ヒンフトの卵って美味しいのかな?」

『そう、食べるつもりなのね。私は食べたことはないけれど、昔ヴマスあいつが美味しいからと言って、次々と食べてヒンフトたちに懲らしめられていたわ』

『その時に私はヴマスあいつに卵を丸ごと口に入れられて、大変なことになったから卵にいい思い出はないわ』

「ははは、ヴマスさんは昔もあんな感じだったんだ。大丈夫、俺は卵の殻を取って使うから、そんなことにはならないよ」

『そうなのね。安心したわ。それじゃあ私の知り合いに会いに行きましょうか。きっと卵を分けてくれるはずよ』



ラキは俺を背中に乗せたまま、どこかに歩き出す。


 きっと、さっきの話に出てきたヒンフトたちなのだろう。卵は数個だけでいいかなと思ったけど、ラキが大食いなのを忘れてた。卵に苦手意識があるみたいだけど、その内普通に食べてくれそう。


 でも、あまりほしがるとヴマスさんの二の舞になるよね。卵の数は交渉次第かな。


 そんな考え事をしているとラキが着いたわよと声をかけてきた。前を見るとヒンフトが五匹いる。どうやら洞窟のようで、声が響いてるみたいだ。



『あら、ライハイトじゃない。久しぶりね!』『あっ、本当だわ!』『久しぶり!』『久しぶりだね!』

『久しぶりね、ヒンフト姉さんたち』

『どうしたの、いきなりこんなところに来て?』『そうよ、そうよ!』『しばらくは来ないと思っていたのに』『まだ来ないと思ってた』

『そうね。十数年後に来るつもりだったんだけど、今日はちょっと用があってね。紹介するわ、友達のエリよ』



紹介されたから、自己紹介するためにラキに降ろしてもらう。


 割と緊張するな。つい首をポリポリかいてしまう。深呼吸をしてから気合を入れ、話しかける。



「初めまして、人間の杉原恵理と言います。恵理が名前なので、そう呼んでくれると幸いです」

『これは丁寧にどうも! でもそんなに固くならなくて大丈夫よ!』『エリって言うのね。よろしく!』『よろしくね!』



ラキがお姉さんって言うから、緊張し過ぎて敬語になっちゃった。でも初対面だし、結果的に敬語の方がよかったね。


 と思ったら指摘されてるし。恥ずかしさのあまり顔を手で隠す。



『あらー! 反応もかわいいのね!』『なかなかいい子じゃない! 流石はライハイトね』『ライハイトも、もちろんかわいいからね!』『うん、うん!』

『もう、恥ずかしいこと言わないで! ……それで用事のことなんだけど』



ラキは褒められて少し照れているみたい。だけど恥ずかしがっている俺を見かねて、ラキが代わりに卵の話をしてくれた。


 ヒンフトたちはラキの話を聞いて、何かを話し合っている。話がまとまったのか、こっちを向いた。



『卵をあげるのはいいんだけど、どうせなら一緒について行きたいねって話になったのよ』『ねー!』『楽しそうだから、行ってみたい!』『行きたい!』

『言いたいことはわかったわ。私は気にしないけど、エリが決めなさい』



うーん、そうだなぁ……。と言って腕を組んで顎に手を当てる。


 どうしようか。連れて行っても良いんだけど、肉がヒンフトの肉なんだよね。ヒンフトたちだけ野菜とか穀物とかばっかりだと仲間はずれになっちゃうし。


 俺だけで考えてもわからないから、とりあえず聞いてみようかな。



「聞きにくいんだけど……お肉って食べられますか? ヒンフトの肉なんですけど」

『うん、食べられるわよ。ねえ、皆?』『そうよ』『別に気にしないわ』『全然平気』

「そっそうなんですね。わかりました。特に問題なさそうなので、ついて来ても大丈夫です」

『やったわ!』『そうなのね!』『じゃあ早速行きましょう!』『行こう!』『出発!』



ヒンフトたちはしゃいでいるな。そんなにも喜ばれるのは予想外だった。ラキと一緒にいれるからなのか。てか、もう出発しようとしてる。まだ俺の準備ができてないからまだ行かないで!


 先に行こうとするヒンフトたちをなんとか止められた。向かう場所もわかってないまま行こうとしないでよ……。


 ラキが先に行ってそのあとをヒンフトたちがついていくことになった。ラキに声をかけて背中に乗せてもらう。忘れ物はないはずだから、家に向かって出発!


 帰り道に最初はチンチラさんたち(仮)、次にライハイトさん(サバトラ)に出会って診療所の宣伝をしてきた。チンチラさんたち(仮)は興味津々に聞いてくれた。


 だけどライハイトさんは興味なさそうにしていた。まあ、気にしないけどね。興味があれば儲け物って感じだから、ラキはそれ以上刺激しないでね?


 ああ! ヒンフトたちたちも煽らないで……! ラキたちが喧嘩したら、俺は止められないから勘弁して。ラキを宥めながら、ライハイトさんから離れるように言う。


 ラキは渋々従ってくれた。ライハイトさんに別れを告げて、再度目的地の家に向かう。それにしてもヒンフトたちの癖がすごい。全く、突っ込みが間に合わないよ。


 それからは何事もなく無事家に着いた。よかった。これ以上何かが起こったら処理しきれない。


 ラキの背中から降りて、一息つく。休憩が終わったところでヒンフトたちに家を紹介していこう。


 と思ったけど本鶏たちが外で十分と言うので、とりあえず一階だけ紹介しておいた。何かで使うことになるかもしれないし。


 ついでにヴマスさんが毎朝ここに来ると伝えたら、嬉しがっていた。そんなに仲が良かったのかな? と首をかしげる。


 ……もしかして前にやらかした時の仕返しだったりする? まあ、そうだとしたらヴマスさんの自業自得だから庇ったりしないけどね。


 話は変わるけど、昼食用のカレー足りるかな。この数だと足りる気がしないから、何か作った方がいいよね。本鶏たちが肉は気にしないみたいだから、からあげ作っておこうかな。


 ただのからあげでもいいけど、何かアレンジしたい。そうだ、チキン南蛮風の奴にしよう。タレをかけてタルタルソースを乗せればそれっぽくなるよね。


 よし、そうと決まったら早速やるか。ラキに昼食の準備してくると言って二階に向かう。






 エリが昼食の準備をしに行ったあとに、ヒンフト姉さんたちが質問攻めしてきた。「貴女が人間といるのは何故だか気になるわ!」だの、「どうやって出会ったの?」だの、「あれだけ嫌がっていたヴマスに毎日話すようになったの?」だの、しつこい。


 かと言って逃げるわけにもいかないから、大人しく質問には答えたわよ。早くエリに呼びに来てほしかったわ。質問が終わってもまだ来てくれないけど。


 一方でヒンフト姉さんたちは、話が盛り上がっているみたい。また変な方に突っ走らなきゃいいけど。五匹で一組だがらか、一致団結するとすぐ行動に移すから目が離せない。



『ってどこに行こうとしているの! もう少しここで待っててちょうだい……!』

『えー?』『ちょっとこの辺りを見て回るだけだから、ね?』『そうだ、そうだ!』『別にどこかに行くわけじゃない』

『はぁ、わかったわ。本当に、この辺りだけだから。それ以上離れないで』



このままだと止められなさそうだから、仕方なくあとをついていくことになった。家の周りを歩いていると、エリが作った野菜コーナーと薬草コーナーのところにたどり着いた。



『これはなんなの?』『綺麗に並んでいるわね!』『そうだね!』『美味しそう』『食べて良い?』

『畑と言う物らしいわ。自分で植物を育てるところだそうよ。食べていいかどうかはエリに聞いて。勝手に食べないようにして』

『はーい』『自分で育てるなんて凄いわ!』『凄い、凄い!』『わかった、食べない』『食べられないのは残念』



ヒンフト姉さんたちと畑を見ていると、足音が聞こえてくる。この感じはエリだと思う。昼食の準備にしては、かなり時間がかかっている。だから何か料理でもしていたのかもしれない。


 エリがこっちに気付くと手を振って声をかけてきた。



「ラキ、ヒンフトさんたち、昼食が出来たよ! みんなで食べよう」

『わかったわ。姉さんたちも行きましょう?』

『わかった!』『何が出るか楽しみ!』『気になる、気になる!』『美味しそうなにおいがする。早く行こう』『どんな味かな』





 ラキと楽しそうなヒンフトたちを連れて家に入る。そこまで楽しみにされるとちょっと緊張するな。ひとりずつに料理を盛った皿を配る。食べやすいようにラキと似た浅くて広い皿を使った。


 ちなみに、みんなにはチキン南蛮風からあげとチキンカレーを盛ってある。サラダは食べるかわからないので、俺の分だけ持ってきた。


 手を合わせていただきます。ヒンフトたちに食べていいよと声をかける。ヒンフトたちはおそるおそる一口を食べた。



『なにこれ!』『今まで食べたことがない味だわ!』『そうだ、そうだ!』『これは癖になりそう』『うん、美味しい!』

「口に合ってよかった。からあげはおかわりあるから、もっと食べたい時は言ってね」

『ちょっと、エリ。そんなこと言ったら、私の分がなくなっちゃうわ。ヒンフト姉さんたちは結構食べるのよ』

「ラキが食べるって言うくらいだから相当だよね。そうだ、なくなり次第おかわり終了ということにしよう」

『えっ、それは駄目よ。私はじっくり味わいたいの。そんなことをしながらなんてもったいないわ』

『えー? いいじゃない!』『私たちは賛成よ!』『賛成、賛成!』『でも、ライハイトの気持ちもわかる』『貴女たちはそうすればいいと思う』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る