第16話 野菜が大きくなった

 朝ごはんを食べ終わったので、ごちそうさまを言った。なんとなくラキの方を見る。いつも通りに美味しそうに食べているみたいで良かった。


 そういえば、さっきチキンカレーを作ったから野菜がなくなったんだよね。肉だけっていうのも偏っているし、なんとかしたい。


 昨日作った野菜コーナーに、野菜ができてるのは考えられない。だって種の状態だったんだよ? 育っていても芽が出ている程度だと思うんだ。


 でも、異世界パワーで大きくなっているかもしれないよね。あとで見てみよう。



『ねえ、エリ。今日は何をする予定なの? 昨日みたいにオコメをまた取りに行くのかしら?』



急に話しかけられてびっくりした。でも考えもまとまったところだったから、丁度良いね。言っちゃおうか。



「お米は在庫があるから、今日は行かないね。家の野菜がどうなっているか見ようかなって思っていたところだよ。ラキはヴマスさんだっけ、を指導してくるの?」

『今のところは出かけないのね。あいつはその内くるはずだから、来たら対応するわ』

「そうなんだ。じゃあラキがヴマスさんの家には行かないんだね。わかった」



ラキも食べ終わったみたいだし、ラキの皿と俺の皿などを持っていく。食器を洗って、しっかり拭いたあとに片付ける。


 早速、野菜がどうなっているか見に行こう。ラキに声をかけてから庭に出る。さてどこまで育っているかな。 


 あれ? ここで合っているはずだよね。間違えて薬草コーナーに行っちゃったのか? でも薬草も昨日植えたばかりだから、そんなことにならないと思うんだけど。


 どこからどう見ても、かなり大きく育っているよね? トマトとかナスとかって実の部分だから育つまでに時間がかかるのに。


 なんで、もう美味しそうに実っているんだ? あと、モヤシって日陰で育てるイメージだけど、こんな日向で育っているのはなんなのか。異世界パワー、恐るべし。


 まあ、これで野菜が収穫できるから気にしないでおこう。さあ、なんの野菜を採ろうかな? レタスとキュウリとかでサラダにしてもいいね。今日はそれにしよう。


 野菜がこれなら、薬草の方はどうかな。見てみよう。


 おーっとこれは、こっちも育つのが早すぎる。どれも使える状態になっているようだ。でも今は怪我や病気になっていないし、使うまではここは放置かな。


 薬草コーナーはこのくらいにして、野菜を採るためにハサミを取りに行こう。確か二階にあったはず。


 家に入って二階のリビングに行く。ここの引き出しにハサミがある。ハサミを片手に持って外に行って野菜コーナーへ。ラキもついてきた。


 レタスとキュウリ、トマトをハサミで切る。レタスを切るのはかなり大変だった。鎌みたいなやつだと楽なのかな。でも家にあったっけ? あとで探してみるか。


 ラキは興味津々で野菜を見ているみたい。そんなに珍しいものじゃないと思うんだけどな。ふと思ったけどラキは野菜を食べるのか? 食べなかったら他のやつも作らないとね。


 さて、サラダに使う野菜は収穫したし、家でサラダを作るか。ラキに先に家に行ってるねと声をかける。尻尾で返事してきたのでよしとしよう。


 家の二階の台所に行って、野菜の土を水で落とす。レタスを適当な大きさに千切って皿に盛り付けする。


 そういえば、まだヴマスさん来てない。寝ているのかな。まあ、その内来るよね。


 ヴマスさんのことを気にしつつ、キュウリを細切りにしていく。切り終わったキュウリをレタスの上に乗せる。トマトはざく切りにしてから適当に乗せる。


 あとはドレッシングをかければ完成なんだけど、それっぽい調味料の実あるかな。あ、あった。これにしよう。ゴマドレの実を割ってサラダにかける。


 あとで食べるから、ラップをかけて冷蔵庫で冷やしておこう。



『おーい、誰かいないのー? ボク来たんだけどー。ライハイトが来いって言うから来たのに』

『はいはい、わかったわよ。そっちに行くから何もしないで、待っていなさい』

『遅いよ。もう少し反応がなかったら、ここに穴掘ろうかなって思ってた』

『遅れたのは悪かったわ。でも、この巣の近くで勝手なことをしないでちょうだい』



ヴマスさん来たんだ。しれっとヤバいことをやろうとするのは、ヒヤッとする。だけど、この言動はもしかしてワザとやっているんじゃないのかな。


 かまってほしくて、無意識のうちにやっていそう。だから頻繁に誰かに会っていれば変なこともしなくなるかもしれない。


 ラキが頑張ってヴマスさんを矯正しなくても、あんまり問題ないかな。あの声を聞くとヴマスさん楽しそうだし、ラキには今すぐ言う必要もないね。


 ラキはヴマスさんと話してるから、暇じゃない。やることが特に思いつかないな。俺はどうしようか。


 あっ前に植えたシュタの木はどのくらい大きくなったかな。見てみよう。適当な窓から覗いてみるけど、高さがよくわからない。


 あまりふたりの邪魔はしたくなかったけど、仕方ないか。階段を下りて家を出た。話に夢中になっているふたりの横を通り、シュタの実を植えたところに向かう。


 おー! 大分大きくなったな。シュタの木の大きさは五メートルくらい。前に見た時の大きさと変わらないね。実はまだ実ってないようだけど。


 いやこのスピードで実ってたら、いくらなんでも繁殖するのが早すぎるだろ。ラキが言うには、実がなるのに時間がかかるみたいだから成長するのが早いだけなのかな。


 わからないことを考えても埒が明かないから止めよう。


 他の木の実はどんなのがあるのかな。デザートがなる木とかあったら面白そう。ケーキの実とかプリンの実とか。


 まあ、自分で作れって話になりそうだけど。料理の手伝いはやっていたけど、お菓子はほとんど作ったことがないから勝手がよくわからないな。


 あとは卵がほしいな。料理のバリエーションが増えるし、面倒くさかったら卵をご飯にかけるだけで朝食もできるし。


 でもあれか、消毒して清潔にしておかないと生じゃ食べられないよね。だとすると卵は生で食べるのは難しそうだな。


 そういえば、水やりしていないね。やるか。シュタの実の皮を持ってきて水をためて、木にかける。野菜コーナーと薬草コーナーにも水やりしてと。


 何回か繰り返して、土が十分に湿ったからよしとしよう。あんまり放置していると枯れそうだから、きちんと水やり忘れないようにしないとね。


 他に何かやることあったっけ? うーん。特に思いつかないから、夕食分の料理しようかな。何を作ろうか。


 サラダがあるから、サラダチキンはやろう。それだけだとラキが食べるかわからないんだよね。そうだ、照り焼きにしよう。


 そうと決まったら、台所に行くぞ! ラキたちの横を通りすぎて、家に入り、階段を上って、台所に到着。


 じゃあ作っていくよ。冷蔵庫から肉を取り出して、爪楊枝で穴を開けていく。肉の両面に少し塩をすり込んで、電子レンジで温める。


 その間に手を洗ってから、もう一回多めに肉を出して一口大に切る。塩とコショウの実を割って肉に混ぜ合わせてと。それから肉に片栗粉をつける。


 チンと音がした。どうやら電子レンジで温まったようだ。手を洗ってから一旦出して肉をひっくり返して、電子レンジでもう一度温める。


 フライパンに油の実を割り入れて火をつけた。肉をフライパンに入れて、焼いていく。


 焼けるのを待っている間に、照り焼きのタレを作っておこう。砂糖に酒、みりん、醤油を混ぜてタレの完成。


 焼き目がついたら、ひっくり返して焼く。もうそろそろいいかな。さっき作ったタレを入れて、適度にひっくり返す。火を消したあとにふたをして少し待つ。


 待っている最中に電子レンジから音が聞こえた。サラダチキンが出来たみたい。中から取り出して、サラダチキンを裂いていく。


 裂いたサラダチキンを冷蔵庫から出したサラダに乗せて、冷蔵庫に戻す。


 照り焼きの方はどうなっているかな? ふたを開けると美味しそうな照り焼きが出来上がっていた。味見をしてみる。うん、ちゃんと美味しい。これならラキも食べてくれるだろう。


 皿に照り焼きを移して、冷めるまで待つ。その間に使ったものを洗おう。洗い終わったら片付けてと。


 もう照り焼きは冷めただろうし、こっちも冷蔵庫に入れよう。あとはできることはもうないから、ラキとヴマスさんの様子でも見ていよう。






 あっ、ヴマスさんが帰っていく。今日の話は終わったのかな。早速ラキのところに行こう。ラキに言って卵がありそうな場所に連れていってほしいんだよね。


 勢い良く一階に下りて外に出る。飛び出して転びそうになるけど、立て直したから問題なし。ラキが不思議そうにしているけど、気にしない。



『いきなり出てきたけど、どうしたの? しかも転びそうになっていたわよね?』

「ラキが知っていたら連れて行ってほしいんだけど、卵が欲しいんだよ。それに転びそうになったのは気のせいだって」

『気のせいに見えなかったけど、まあいいわ。それで卵だったわね、いい場所知っているわ。それじゃあ行きましょ? ほら背中に乗って』

「ごめん。ちょっと待ってて、準備するから!」



卵をゲットできるとわかって今すぐ行きたかったけど、その準備をするのを忘れてた。


 家に戻り、適当な袋とクッションになりそうな物を入れて外に出る。ラキを見ると車並みに大きくなっていた。いつでも乗られる準備はできたみたいだ。



「お待たせ、準備終わったよ」

『そんなに待ってないわよ。じゃあ乗りなさい』

「よいしょっと。これでいいかな?」

『しっかり捕まってなさいよ? 落ちたら危ないから』

「わかってるよ。早速、出発進行! おー!」

『はいはい』



こうして、俺とラキの卵探しの旅が始まったのであった。って言いたくなっただけなんだけどね。待ってろよ、美味しい卵!


 道中でウサギさん(仮)に出会ったので、診療所の宣伝をしておく。まあ、診療所と言っても、ただ怪我を治すだけでお金を取ったりはしないんだけどね。


 そんなこんなで着きました。ぱっと見普通の草原に湖があるようにしか見えないけど、ラキが言うには卵がたくさんある場所らしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る