第14話 ドラゴンを呼び出した
ラキにありがとうと言って離す。エリの疲れが取れてよかったわって体を伸ばして言われた。なんだか、比喩じゃなくて本当に疲れが消えた気がする。体も軽い。
「それじゃあ、からあげ食べよっか」
『わかったわ。準備お願いするわね』
「任せて! 今すぐ終わらせるから」
『やる気が出るのはいいのだけど、怪我しないようにね』
ラキの忠告を聞きつつ意気込んだ。でも、盛り付けはもう終わらせてあるから、ラキのところに持ってくるだけなんだけどね。
「はい、どうぞ」
『今日のからあげも美味しそうね。いただきます』
美味しい、美味しいと言いながら食べているのを見て、作ったかいがあったと思うね。
ラキは俺に見られていることも気にせずに食べている。これはこれで見ていられるな。もちもち食べているってかわいい。
ラキが食べ終わるまで見続けた。ラキがこっちに気付いたみたいだ。
『そんなに私を見てどうしたの? 何かついているかしら?』
「いや、何もついていないよ。ただ、ラキがかわいいなって見ていただけで」
少し恥ずかしそうにしつつ、そう、ありがとう……。と答える姿にそれはかわい過ぎて反則だよと言いたくなった。
さて、ラキが食べ終わったことだし皿を洗う。
ついでにお米を食べられるようにしたいけど、やり方どうするんだろう? わからないな。あの板で説明とかしてくれないのかな。
米を食べられるように加工します。ここに袋ごと入れてください。
おっ! 説明するんじゃなくて、やってくれるんだ。楽でいいね。じゃあお願いしますっと。表示されている四角い枠に、お米の入った袋を突っ込む。
加工中、しばらくお待ちください。残り時間は十分です。
十分で終わるんだ。もっと時間がかかると思ったけど、こんなものなのかな。いや、スキルが凄いのかもしれない。
ただ待っているのも時間がもったいないし、加工が終わるまで料理の下ごしらえでもしてようかな。
えっと、何を作ろうか?そうだ、油淋鶏やろう。
まず、冷蔵庫から肉を出して一口大に切っていく。そして酒と砂糖、塩、マヨネーズの実を割って加えて揉み込みしばらく置いてっと。
ピピピ……という音が聞こえてくる。なんの音だ、これ? 例の板から聞こえているみたいだ。音が鳴る機能もあるのか。
米の加工が終わりました。ここから取り出せます。
ああ、加工が終わったんだ。手を洗ってから、板に手を突っ込む。何かが当たっている感覚がある。これかな? それを掴んで持ってきた。
だけど、中身はどうなっているのかが気になるので、袋を開いてみる。中は見慣れた白いお米が入っていた。あとはお米をといで炊けば食べられるね。
じゃあ早速、お米やっていこう!
白っぽい水にならないくらいまでといだ。こんな感じでいいか。あとは鍋に入れてふたをして火にかける。火加減に気を付けつつ、炊いていく。
油淋鶏のタレも作っていこう。醤油と砂糖、酢の実を割って水と入れて混ぜていく。火にかけて丁度いい感じになったら、タレの完成。
お米の方から良いにおいがしてきた。上手く炊けているみたいだ。良かった。もうそろそろ火を消して蒸らす。
蒸らしている間に、油の実を割って鍋に入れてと。油を火にかける。ついでに片栗粉で肉に衣をつけていく。
油の温度が良い感じになったら、肉を揚げる。火が通ったら、皿に移動させてタレを絡ませて冷ますことを繰り返す。
なかなかこの作業が大変なんだよね。肉を入れすぎると油の温度が下がっちゃう。しかも熱いうちにタレを絡ませないと、味がつきにくくなるし。
十分くらい経ったので、お米の方を開けてみる。おお、いい感じに炊き上がってた。美味しそう。お米の方はこれでいいね。夕食の時に食べるから、おいておこう。
水分が抜けないように、お米の鍋のふたをする。ついでに余った油淋鶏のタレを肉にかける。混ぜ合わせて、味見をする。なかなか美味しい。上手くできたね。
さて、夕食の準備はできた。だけど、さっき昼食を食べたばっかりだ。まだ夕食を食べる時間じゃない。余った時間どうしようかな?
そういえば前にドラゴンに乗せてと頼んだけど、どうやって呼べばいいんだろう?
魔法みたいなもので察知しているのか? それとも尾行でもして呼ばれそうな時に出てくるとか? どうしているんだろう? ラキに聞いたらわかるかな。
チラッとラキの方を見ると、油淋鶏をジッと見て尻尾が左右にゆっくり揺れている。さっきあんなに食べていたけど、まだ足りなかったのかな。
「ねえ、ラキ。油淋鶏に夢中になっているところ悪いんだけどね。前にドラゴンに会った時、呼べばくるってドラゴンが言っていたけど、どうやって呼べばいいの?」
『え、エリ、別に食べたいとかそんなんじゃないのよ。ただあまりにも美味しそうだったから、見ていただけなんだから』
ラキが口元を拭ってから、何事もなかったかのように言う。
『……それでドラゴンを呼ぶ方法だったわね。簡単よ。空に向かってドラゴンと叫べばそいつに聞こえるわ。エリの行動が気になるのか、しょっちゅう上空を行ったり来たりしているから。目ざわりから止めてほしいけど』
「そうなんだ。思っていたのより、原始的なことをしているな」
今度空を見上げてみよう。ドラゴンがいるなんて想像できなかった。でもそんなに動き回ったら、変に思われるんじゃないのかな?
気になった人が調査しに来そう。普通に自分で追い払うことはできそうだよね。
でもそういえば前に会った時、人間に襲われて酷い怪我していた。やっぱり危ないから止めさせた方がいいかな。
『それでなんで急にドラゴンの話をしたの? 今からどこかに行きたいのかしら?』
「今日はもう出かけるつもりはないよ。今の話を聞くと、ちょっとドラゴンが危なっかしい行動しているから、止めさせようかなって思ってさ。ラキ、呼んできて」
『ドラゴンのためにそこまでする必要はないと思うけど、仕方ないわね。わかったわ』
ラキと一緒に外に出て、呼びかけをした。ドラゴンが下りてくるのを待つ。
時間かかるかなと思ったけど、すぐに羽ばたいている音が聞こえてきた。本当にこの方法で来たね。正直、びっくりした。だって魔法でなんとかしているって信じてたし。
あと、結構風が強い。気を抜いたら飛ばされそう。それに目が風で乾いて割と大変なことになってるよ。そんなこんなでドラゴンが着地した。
『呼ばれてやってきたが、どこかに移動するのか?』
「今回は移動のために呼んだわけじゃないんだ。ちょっと相談があってね」
『エリがあんたのために気を遣ったのだから、感謝しなさい!』
「話が分かりづらくなるから、ラキは少し静かにしてて」
ラキがそっぽを向いてしまった。つい、言い方がきつくなってた。機嫌を直してもらわないと。ドラゴンに申し訳ないけど、待っててもらおう。
「ドラゴン、ごめんね。ちょっと待っててくれると助かる」
『承知した。では、待っていよう』
「ありがとう」
『我を優先させて仲たがいを起こされても、困るだけだからな。仲直りするが良い』
我を優先させろと言われなくて良かった。本当に前に会った時だと考えられないな。ラキが何かしてくれたからだ。改めて感謝しないと。
ラキの方を向いて話しかける。
「ラキ、ごめん。言い方が強かったよね。傷つけるつもりはなかったんだ」
『何よ、ドラゴンに説明するために呼んだのでしょ。早く言えばいいじゃない』
「それはそうだけど、俺とラキは家族なんだ。家族を優先するに決まってるよ。ラキが嫌だと思ったところを直したい」
耳がこっちを向いているから、聞いてはいるけど反応がない。どうしたんだろう? もしかして俺のこと嫌いになっちゃったのかな。
もし、そうならどこかに行っちゃうよね。わざわざ嫌いな奴と一緒に住みたくないだろうし。これから独りになるのか。寂しくなるね。
『……、…………。エリ、聞いているの? エリってば!』
はっ! 考えるのに夢中で、ラキの声が聞こえていなかったみたいだ。最悪の場合を想定しながら、ラキに返事をする。
「ごめん。聞いてなかった。それで、なんだって?」
『恥ずかしいから、一回しか言わないって言ったじゃない。全く、仕方ないわね。もう一度言うから、ちゃんと聞いておきなさいよ。私のことを一番に考えてくれればそれでいいわ。許してあげる』
「えっ。それだけ? それならいつもやっているけど。もっとこう、嫌になったから二度と会わないって言われるかと思った。良かった」
ラキがピタッと固まった。それはどういう反応なの? 許してくれたのか、そうじゃないのかはっきり言ってよ。
ツンツンとつついてみたら、はっとしてこっちを見た。
『冗談でも嫌になったとか二度と会わないとか言わないで! なんのために家族になったと思っているのよ。それこそ、許せないわ』
「そう、だよね。ごめんなさい。次からは言わないので、許してください。お願いします」
『…………仕方ないわね。今回だけよ』
ありがとうと言ってラキを抱きしめた。その言葉を言わないように肝に銘じながら。
しばらくの間抱きしめて続けていて、疑問に思った。なんでこうなったんだっけ? 確かラキがドラゴンの行動を教えてくれて……あっ、ドラゴンのこと忘れてた。
ただラキを離して、ドラゴンに伝えるのはちょっと嫌だな。そうだ、こうしよう。ラキを回して俺と同じ方向にする。これなら、離す必要はないね。
「ごめんね、ドラゴン。時間かかっちゃって」
『別に問題はない。それで、伝えたいこととはなんだ?』
「そのことなんだけど」
ドラゴンにしょっちゅう上空を行ったり来たりしていることを止めるように伝えた。
『むっ、そうなのか。いい方法だと思ったんだが、わかった。代わりの方法があるのならそっちにしよう』
「代わりの奴か。いい方法……、そうだ。一緒に住めばいいよ!」
『待ちなさい! そんな奴と同じ家にいるのは却下よ。断じて認めないわ』
「えー、それなら他に何がいいか考えてよ」
俺がやっと思い付いたのがダメなら、ラキに考えてもらおう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます