第11話 街で買い物4
ラキが魚を食べていく。嬉しいのか尻尾を左右にゆっくり振っている。かわいい。ずっと見ていられるけど、ジッと見ていたら気になるだろうからほどほどにしておく。
そういえば、この魚って名前なんだろう。気になってきた。メートさんに聞いてみよう。
「メートさん、さっき食べた魚って名前わかる?」
「あの魚はフェレーヌという種族ですよ。生で食べても、火を通しても美味しいので私もよく食べています」
……そうだよ。連れてきてもらっているんだから、ちゃんとお礼も兼ねてメートさんの分も買っておけばよかったな。さっき串焼きをあげたけど、まだ足りないよね。
まあ、あげると言ってもほぼメートさんからもらったお金だけど。
「あっ、なんかごめんなさい」
「いいえ。気にしなくて大丈夫です。自分で食べたいなら、買えばいいので平気ですよ」
「それならよかった」
今度から気を付けておかないと。メートさんは気にしていないけど、人として俺が気になる。
さて、ラキが食べ終わるまでに次に食べるものを決めようかな。と思っていたんだけど、流石にラキはもう食べ終わっているんだよね。
えっと肉を食べて魚を食べたから、ご飯かパンでも食べよう。あとメートさん用のものがあればいいな。魚だと気を使っているのが、バレバレだからね。
メートさんに言ってから、出店を見て回る。おっパンを売っている出店があるな。行ってみよう。
パンの上に黒糖がどっさり乗っている。パンの上がこげ茶色だ。それを見た俺は衝撃を受けた。なんじゃこりゃー! と言いたくなったのを抑える。
いや、よく見れば他に工夫がされているんだ。きっと。えっと銅貨2枚か、そのくらいならいいかな。何かがある信じて買ってみることにした。
店の人に銀貨一枚を渡して、砂糖だらけのパンと銅貨八枚を受け取る。
出店から少し離れてドキドキしながら、一口食べる。甘い。ただ甘い。パンの味が黒糖でほぼ消されてる。上にしかないと思っていた黒糖が、下にも付いていた。
黒糖尽くしのパンだった。パン自体は美味しいけど、どんな理由であれを作ろうと思ったんだろうか。俺はもう食べなくていいかな。
気を取り直して、他の出店に行こう。
しばらく歩いていると、何か焼いている匂いがする。なんだろうと匂いがする方に向かっていくと、そこには焼きそばみたいなものが。色が白っぽいけど。
近付いてみても焼きそばに似ている。茶色じゃないから、ソースで味付けされてないんだろうけど何味なのかわからないな。値段は銅貨一枚か、頼んでみよう。
銅貨一枚を支払って焼きそばを買った。早速食べてみよう。
もらったフォークで巻き取って食べる。美味しい。塩味でサッパリしていていいね。次もあったら食べたい。
食べ終わって空になった箱をゴミ袋に入れる。よし、俺はお腹いっぱいになったから出店は回らなくていっか。
そうだ。ラキとメートさんにもあげよう。銅貨二枚を支払って焼きそばを二つ買った。メートさんとラキのところに向かっていく。
メートさんたちのところに着くと、ラキが寄ってきた。焼きそばの匂いを感知したのか、目を輝かせている。
『あっエリじゃない。戻ってきたのね。その美味しそうな匂いは何?私の分もあるのよね』
「もちろんだよ、ラキ。こっちはメートさんの分で、こっちはラキの分だよ」
「ありがとうございます。ではいただきますね」
『ありがとう』
ラキに一口食べさせると、美味しいみたいで食べるスピードが速くなる。一口ずつ食べさせている俺は目を白黒させながらも、なんとか食べさせ終わった。
これ以上はないってことをラキに伝えるために、空になった焼きそばが入っていた箱をみせる。すると、残念そうにしていた。
そんなラキが視線をスッとメートさんの方に向く。なんだか嫌な予感がするけど、気のせいだよね?
『ねぇメート。今残っているそれ、頂戴?』
「いえ、あげません。これはエリさんから、私に買って下さったのです。あげるわけにはいきませんよ」
やっぱりそうなるのか。でもメートさんがラキにあげると思っていたけど意外だな。ラキの食べかけをもらおうとするのはびっくりするけど。
そういえば、ラキの元のサイズってトラとかライオンとかよりも大きいから、この量じゃ足りないのか。そう考えればメートさんのを食べたがるのもおかしくはない?
いや、ひとの食いかけをもらおうとするのはダメだと思う。ラキを止めないといけないね。
「ラキ、それが食べたいなら一緒に買いに行こう?」
『エリがそういうなら仕方ないわね。行きましょ』
「待って下さい。エリさんのお金が少ないでしょう?私が出すので、私も行きますよ」
そんなわけでさっきの焼きそば屋のところに行き、ラキの気が済むまで買った。その結果はラキ一匹で焼きそば二十箱分を食べたのだった。これは凄い。
途中から大食い見ている気分だった。まあ食べさせるのも大変だったけど。おかげで人だかりができて、焼きそば屋は儲かっているみたいだけどね。
ラキが客を集めたことで、焼きそば屋の店主とも仲良くなった。今度来たら割引してくれるらしい。ラキは幸運の猫みたいだ。
店主がラキを触ろうとしたら、ラキが俺の後ろに隠れて拒否したのは思わず笑ってしまったけどね。
私を触って良いのはエリだけよって言って、威嚇もしてた。その言葉に嬉しくてラキをなでまわして、もう止めなさいって優しく猫パンチして止めさせられたのも良い。
ちなみに言ってくれた通り、焼きそば代はメートさんが出してくれて、俺の財布はダメージはなかった。
メートさんは気にするなって言ってたけど、申し訳なくなったね。だって銀貨二枚は二千円だよ? メートさんに借りが増えたな。何で返せるかわからないのに。
そんなことがありつつも、無事に買い物を済ませた俺たちは家に帰ることにした。昼を過ぎると門が閉まって帰れなくなってしまうから。
門を出て森の中に入って周りに人がいないのを確認してから、ラキが普通車サイズになった。メートさんに持ってもらっていた荷物をラキに移動して紐で固定する。
メートさんに別れを告げて、ラキと俺で家に帰る。前に山盛りの木の実をどかしたところから家に入った。ラキも出入りできるみたいで良かった。
二階の台所に行って、小さくなったラキに来てもらう。荷物をラキの背中から降ろす。買ったものを冷蔵庫にしまっていく。
お肉は夕食用に調理するものは出したままにする。残りは入る分だけ冷蔵庫と冷凍庫へ。それでも量が量だから、結構入らなかった。
でもさっきのでラキが大食いなのはわかったから、料理にすればその分は食べてくれそう。だけど無理やり食べさせるのは良くないから、ラキに確認する。
「ラキ、夕食今から作るんだけど、いっぱい食べる?」
『そうね、食べたいわ。エリが作るんでしょ、楽しみにしてるわね!』
この様子だとかなり食いそうだ。ん-、そうだなぁ。野菜も食べたいから、肉多めの肉野菜炒めを俺用に作って、からあげを大量に作るか。
片栗粉と小麦粉ってあったっけ?よし、あった。両方とも一キロだな。
とりあえず、肉を一口大に切らないと。まな板と包丁を取り出す。切ったやつはボウル入れて。
ふぅ、ようやく切り終わった。あとは下味付けるために醤油とマヨネーズを入れる。もしかして調味料の実の方が足りなくなるかも。
あとはニンニクとショウガをすりおろしたやつが、あればいいんだけどあるかな?おっあったね。調味料の実万能過ぎだな。それを入れて混ぜる。
つけている内にまな板と包丁を洗って、綺麗にしたまな板を裏返す。こっちで野菜を切っていこう。
ニンジンとタマネギ、ネギを切ってフライパンを出し炒める。火が通ったら一旦取り出して、さっき切った肉を焼く。
肉に火が通ったら、醤油を入れて軽く味付けをして、炒めた野菜を投入。もう一回醤油を入れ、野菜にも味が付いたら肉野菜炒めの完成。
イイ感じにつかっている肉を、小麦粉と片栗粉を混ぜた粉で衣をつける。これで揚げる準備は整った。
油が入っている調味料の実を割って、鍋に注いで火にかける。
適切な温度になったらひたすら肉を入れて、時々ひっくり返しながら揚がるのを待つ。揚がったからあげを取って油切りをしながら、次の肉を揚げていく。
それを繰り返し繰り返して、やっと最後のからあげが揚げ終わった。そこにはからあげの山盛りができていた。二キロ位かな?
アツアツの内に一個味見をする。うん、ウマい。
さて、皿に移動させたことだし、外を見れば暗くなってきている。ちゃんとフライパンも鍋も綺麗に洗った。
もう食べるか。ラキを呼ぼうとしたけど、からあげの匂いに誘われたのかもういた。興味津々なのか尻尾をピーンと上にして目がキラキラしている。
『美味しそうなにおいね、早く食べたいわ!』
「もう食べていいよ。ほらこれ、ラキのお皿。これなら食べやすいよね。足りなくなったら言ってね。おかわりもあるから」
『ありがとう、エリ。早速いただくわ』
「どうぞ」
ラキが食べ始めたのを確認してから、俺も食べる。うん、美味しい。このジューシーさがたまらないよね。
ああ、ご飯がほしい。アツアツのからあげにホッカホカのご飯と一緒に食べるのが最高なのに。今度森に生えてないか見てみよう。
肉野菜炒めも美味しいね。ますますご飯がほしくなっちゃうよ。なんでご飯のことまで気が回らなかったんだ俺?
話は変わって母さんの手伝いで料理はしていたけど、この量を作ることになるのは予想していなかったな。
まるで少人数の教室の給食を作っている気分だった。キロ単位で作る、給食のおばちゃんは大変なんだなと身に染みてわかった。
『エリ、おかわりいいかしら?もうなくなってしまったのよ』
「えっホント? あっマジだ。わかった、盛り付けするね。 ……こんなもんかな、はいどうぞ」
『まだ食べられるから、またお願いするわね』
「うん。いいよ。むしろここにあるからあげを全部食べても問題ないから、どんどん食べてね」
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