第9話 街で買い物2

 野菜か、でも俺の知っている野菜があるかどうかも怪しいんだよな。ここで怖気づいていたら、ここに来た意味が無くなる!とりあえず、見るだけ見てみよう。


 人混みになっているところをかき分けて、置いてある野菜を見る。良かった、知っている見た目があった。見た目がニンジンみたいな物を一つとって近くで見る。


ニンジン:食べられる。日本に置いてある物と同じ。


 日本の奴と同じなんだ。見た目は同じだけど、中身が違うパターンがあるから、そのままで本当に良かった。二本で銅貨一枚か、四本袋に入れておこう。


 じゃあ、このジャガイモはどうなんだ?


ジャガイモ:食べられる。日本に置いてある物と同じ。芽が生えていたら、注意。


 三個で銅貨一枚、だから六個袋に入れる。ニンジン、ジャガイモときたら、タマネギじゃないか。タマネギはどこだろう。あっあそこだ。よし、取ってこれたぞ。


タマネギ:食べられる。日本に置いてある物と同じ。


 玉ねぎも、そのまんまだな。三個で銅貨一枚か六個入れとこ。後はカレーのルーがあればカレーが作れるけど、ルーは売ってなさそうだ。そもそもあるかどうかも怪しい。


 どこかの木の実の中身がルーだったりしないかな。ルーの事は置いといて、野菜を買わないと。何買おうかな。


 なんとなくネギを買いたくなったので、値段を見ると一本で銅貨一枚だった。一本袋に入れよう。


 あとは何が良いかな。考えるために一旦、人混みの中から離れる。ん?あれはなんだろう。同じ店のはずなのにあそこだけやけに、人が居ない。


 気になって行ってみると、そこにはいろんな木の実が置いてある。木の実は人気が無いのかなと思ったけど、他の場所に置かれている木の実は売れているみたいだ。


 じゃあなんでここだけ人が来ないんだろ?首を傾げていると、後ろから声をかけられる。



「お嬢ちゃん、そこの木の実に興味があるのかね?」



後ろを振り返ると、筋肉を鍛えてそうな男が居る。この店の店長なのかな?



「はい。この木の実がどんな物か気になって見ていました。もう少し見ていても大丈夫ですか?」

「ああ。見るのは自由だ。だが、全然売れもしない。とんだ物を卸してしまった」



そんなにヤバい物だろうか?と気になりピンポン玉サイズ黒くて丸い木の実を一つ、見てみる。


ショユの実:食べられる。単体で食べるには向かない。調味料として使う事を勧める。


 ショユの実? ……もしかして醤油かもしれない。



「あの、この実味見させてもらっても良いですか?」

「一個ぐらい構わねえ。ただし、それは味が大分濃いからな、気を付けろ」

「はい」



でもこれどうやって開けるんだろう。固そうな殻があるから、卵みたいにすればいけるかな。


 適当なところでショユの実をぶつける。ヒビが入ったところに親指を押し込んだ。卵と同じように開けてみると、ポタポタと液体が垂れてくる。


 液体を指に付けて舐めてみると、醬油の味がした。この世界だと醤油は木の実なんだ。不思議だな。



「この黒い木の実を買いたいんですけど、いくらですか?」

「気に入ってくれたなら、やるよ。あまりに売れないものだから、この袋ごとタダでな。ついでに他の売れない奴も欲しかったらあげるよ」

「ありがとうございます。他の木の実も味見しても良いですか?」

「勝手にしな。納得して買ってもらうのが、一番良い」



店員さんに許可もらったから、次々に味見していこう。


 まずはピンポン玉サイズの白に近い黄色の丸い木の実を取る。色と中身が一致していれば、マヨネーズのはずだけどどうだ。


マヨの実:食べられる。何かに付けて食べた方が良いと思う。調味料として使う事を勧める。


 マヨの実って言う名前なんだ。さて、これも味見しておこう。卵と同じように割ってと。中を見てみると、やっぱりマヨネーズが入ってる。


 指に付けて食べると、予想通りの味。これも買いだな。


 次はピンポン玉サイズの真っ白な丸い木の実。これは砂糖なのか、塩なのかどっちなんだ。ドキドキしながら割ってみても見た目じゃ分からない。


サトの実:食べられる。そのまま食べてもよし、何かに入れてもよし。調味料としても使える。


 舐めるしかないんだ。って解説みたらどっちかなんとなく分かっちゃうじゃん。自動で表示されるから、これは避けられない。楽しみを奪われた気がする。


 ネタバレを受けても、一応味見します。白い粉を指に付けて舐める。うん、甘い。砂糖だね。


 砂糖だけだったら売れそうな気がするけど、それは俺の考える事じゃないね。


 えっと次は、ピンポン玉サイズの真っ白い角張った木の実。これは塩だよね。さっきは砂糖だったから、きっとそうだ。


シオの実:食べられる。単体で食べるには向かない。調味料として使う事を勧める。


 塩だけそのまんまの名前だね。他に何か無かったのかな。名前の事は置いといて、割って中身を確認。白い粉というか粒だ。舐めてみるとしょっぱいね。


 やっぱり塩味。そういえば、売れ残っているという事は、塩と砂糖も使わないんだよね。この世界の料理はどうなっているんだろうか。


 味付け無しでみんな食っている事になるかも。いや、流石にそれはないか。木の実から取っていないだけで、海があれば塩はあるんじゃないかな。


 他の調味料も使っていると思うし、この事は考えないようにしよう。


 他にも味見していない木の実があるけど、調味料が入っているみたい。だから味見はこの辺にして、買おう。



「気に入ったので、ここの木の実買います。全部は持っていけないので、この袋に入る分だけでお願いします」

「はいよ。袋に入れてやるから、出しな」

「ありがとうございます。お願いします」



近くで様子を見ていたラキが来る。どうしたんだろうと首をかしげた。



『ちょっと、エリ。気に入ったなら全部買っていけば良いじゃない。運ぶのなら私に任せてくれれば、問題ないでしょ?なんなら、メートに持ってもらえば楽も出来るわ』



それはそうなんだけど。うーん。ラキもこう言っているし、メートさんに言ってみて駄目だったら、ラキに頼もう。



「……じゃあ頼むね」

『任せなさい』

「すみません。やっぱり全部ください」

「分かった。この袋ごとで良いか?それとも何かに入れ直すか?」



この量が入る物は持っていないからな。袋ごともらおう。



「袋ごとでお願いします」

「はいよ。さっきの袋は返しておくからな。これでよし。気を付けて持って帰れよ」

「はい。ありがとうございました」



店員さんが袋を縛ってくれたみたいで、これなら中身が出てくる事はないだろう。


 あっ野菜を会計してない!やべえ、このまま店を出たら泥棒になるところだった。犯罪者にはなりたくない。野菜が入っている袋を店員さんに渡す。


「あの、この野菜も会計お願いします」

「ああ、分かった。タマネギとジャガイモとニンジンとネギだな、銅貨七枚だ」

「これで大丈夫ですか?」

「足りてるよ。木の実もらってくれてありがとな。また、来てくれよ」



こくりと頷いて、野菜の入っている袋を受け取った。次に来るのはいつになるのか分からないけど、この店は良い店な気がする。次もここに来よう。


 野菜の袋をラキに運んでもらい、木の実が入っている袋を背負ってメートさんのところに行く。


 今更だけど、この荷物じゃ凄く目立つよね。あまり気にしないようにしよう。それでも多分気になるとは思うんだけど。


メートさんが大荷物な俺を見てフフッと笑った。やっぱりそういう反応になるよね。



「エリさん、大分買いましたね。お金は足りましたか?」

「この大きい袋は貰い物です。なのでお金はあまり使ってないです」

「そうだったんですね。さて、次はどこに行きましょうか?」



野菜は買ったから、次は肉かな。でもその前にメートさんに荷物の事を頼んでみよう。



「メートさん、申し訳ないんですけど、この袋を門に着くまで持っててくれませんか?」

「良いですよ。では貸してください」

「ありがとうございます。次は肉を売っている店に行きたいです」

「分かりました。お肉屋さんはこっちです。人が多いので、気を付けてくださいね」



メートさんは俺から荷物を受け取って、背負った。割とずっしりしているはずの袋を軽々と持っている。力持ちだな。


 市場全体が人が多いから、肉屋に行く最中もメートさんを見失わないようにするのが、大変だった。


 肉屋も広い。並べてあるのは、切り身じゃなくて生きた動物。角や牙が生えていて厳つい見た目をしているのが多い。


 肉だから腐るのも早いし、なるべく鮮度の良い状態で提供する。だから生きた動物を並べているのも分かるんだけど。言葉が分かるって辛いな。


 肉というものは他の動物を食べること。軽い気持ちできたけど、なかなかキツイ。覚悟が足りなかった。


 だからといって食べないのは、栄養の偏りが出てきて大変になる。それをなんとかできるほどの術を俺は持っていない。できるのは感謝をしてきちんと食べる事だけ。


 ……よし、肉を食べるぞ!


 覚悟を決めた俺は、どんな肉があるのかを見ていく。他の人の話を聞き取り、なんとなく把握していった。


 鶏をデカくてゴツくした動物がヒンフト。豚というか猪に近い額に大きな角が生えている動物がピルグ。巻き角が特徴の見た目が牛のブホル。


 比較的使いそうな肉だと思うので、覚えておこう。味はどうなのか分からないけど、見た目が似ているから近いと思いたい。


 動物に対してはあの板が出てこないから、調べようがないな。


 値段はヒンフトが金貨七枚と銀貨二枚。えーっと今持っているお金は金貨六枚と銀貨五枚と銅貨四枚。うん、足りないね。


 もう少し安くないと買えない。さて、どうしよう。……小さいサイズなら安くなっていると思うんだけど、どうかな?


 辺りを見ていくと、金貨四枚と銀貨八枚の値札があった。やっぱり小さいものだと安くはなっている。


 でも、ヒンフトを買ったら今度は魚が買えなくなるよね。仕方ないか、魚は諦めよう。次来た時に買おうかな。



「すみません。あのヒンフトください」

「あいよ! 金貨四枚と銀貨八枚だ。解体もするかい?」

「お願いします。お金は金貨五枚で」

「じゃ釣りは銀貨二枚だ。今から解体するから待ってくれよ」

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