第16話『無為』

また俺は 

この場所に立ち尽くしているんだ…


君がいた 

あの夜と同じビルの駐車場 

駅までの雑踏…


変わらない風景を

移り行く季節がくれた

止められなかった想いへの決別…


夢想と現実は同じで在るべきだと気づいたんだ


幻覚も幻聴も 

もう二度と俺を

迷わせやしないだろうよ


流した涙の数だけの代償を

この夜に沈めてしまおう…


紛れ込む街の明かりが 

きっと優しく包んでくれるから…

きっと…


いくつもの

身代わりの夜をくれた人達へ


ありがとう 


俺はもう大丈夫だから…


俺は 

俺のいるべき場所へ帰るからね




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