第9話『風景』

俺が捕われたままの海辺の風景…


黒いうねりは

慟哭の様にふたりを包み

撒き散らす白い風と

わずかな時間が

俺達を追い立てている…


闇に溶け込み

取り残された車の中ふたりは

とりとめのない会話にさえ

悲愁を纏い

互いの温もりを貪る様な

抱擁に溺れて行くんだ…


仮想現実だったものが

そこにある歓喜…


そしてそれが

ふたりの混乱の始まり…


君が呼んだ僕じゃない名前

彼の胸で呟いた俺の名前…


不確かに…

けれどもささやかに


そこに存在する


ふたりきりの風景…





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