外伝14:失墜
朕は翊鈞(よくきん)「日本では万暦帝(ばんれきてい)」である。明朝第14代皇帝である。そんな朕にある問題が起きた
「何、倭(日本)が琉球と高山国を占領したじゃと?」
「ははっ!畏れながら、倭の蛮族は琉球と高山国を占領しただけではなく、商船を襲い、積荷を強奪するなど好き勝手、やっておりまする。」
「ふん、東方の蛮族の分際で朕に喧嘩を売るか。何をしておる。すぐに兵を集めよ。」
「ははっ!」
万暦帝の勅命で軍議を整え、大多数の軍船を揃え、倭に向けて発進したが、その道中、倭の軍船に遭遇し、明と倭の船戦が始まったが、勝敗は目に見えていた
「何なんだ!あの船は!」
「ええい!怯むな!撃てええええええ!」
明国の将兵たちは初めて見るガレオン船に驚きつつも、火砲を放ったが届かず、今度はガレオン船の砲撃が始まり、明国の軍船に続々と命中するのである。明国の将兵たちは砲撃によって海に投げ出され、海の戦の経験のない者は、次々と溺れ死にする者が続出した
「ギャアアアアア!」
「撤退!撤退!」
「た、たすけてくれええええええ!」
明国の軍船は悉く倭の軍船に沈められ、命からがら逃げのびたのは、わずかな軍船のみが帰ってきたのみだった。自国の軍船が悉く沈められたと報告を受けた万暦帝は激怒した
「何!軍船を悉く沈められただと!」
「ははっ!どうやら倭の軍船の力が強く、我が水軍は惨敗いたしました。」
「おのれえええええ!蛮族共が!朝鮮にも船を出させよ!」
「ははっ!」
万暦帝の命を受けた朝鮮は水軍を整え、倭に向けて進軍した。しかし朝鮮の軍船も悉く沈められ、朝鮮水軍の指揮官である李舜臣は戦死したのである
「陛下!朝鮮の水軍も倭に敗れましてございます!」
「何をしておるのだ!早く水軍を整え、倭を滅ぼすのだ!」
「お、畏れながら水軍を整えるにも時がかかりまする。」
「くそがああああああ!」
万暦帝は激怒したが、事態は悪化する一方だった。倭は海上封鎖を行い、明国内の経済の締め上げを行った。明国内の物価が高騰し、民衆の間で争いが起きた
「おい、値上がりしているぞ!」
「そうだそうだ!」
「仕方ないだろ!値上げしなければ、こちらも商売ができないんだ!」
「それもこれも朝廷がしっかりしていないからこうなるんだ!」
「そうだそうだ!倭との戦に負け続けなのに、まだやるのか!」
民衆の不満は、やがて武官、文官へと不満が広がり、身分を問わず、人々は万暦帝の失政を怨んだ。とうの万暦帝はというと・・・・
「陛下、畏れながら朝議へ・・・・」
「朕は病じゃ。病故、出れぬ。」
「陛下、国内は不満に溢れかえっております、どうか朝議の場へ!」
「喧しい!朕は病と言ったら、病じゃ!去らぬなら死罪にするぞ!」
万暦帝は病と偽り、後宮に入り浸っていた。文武百官たちの心配をよそに万暦帝は倭による経済制裁による国内の不安定な様相に目を向けず、ひたすら快楽に溺れていったのである。決定打となったのは明や朝鮮に起こった飢饉と旱魃である
「陛下!一大事にございます!国内で飢饉と旱魃が起きておりまする!」
「な、何だと!」
後宮に入り浸っていた万暦帝は、飢饉と旱魃が起きたことを聞き、朝議の場に姿を現した。臣下たちの知らせから、各地で飢饉と旱魃が起き、それに乗じて北方の騎馬民族が侵入し、軍はすぐに鎮圧に向かわねばならないらしい
「陛下!いかがいたしましょうか!」
「中止だ・・・・」
「陛下?今、何と?」
「中止だ!倭との戦は中止だ!琉球と高山国は倭にくれてやる!」
万暦帝は停戦の使者を倭に送り、琉球と高山国を倭の領地にすることを条件に、停戦を申し込んだ。しかし倭からの要求は琉球と高山国だけではなく、賠償金を要求してきたのである
「くっ!こちらの弱みにつけこみおって!」
しかし、これといった方策もなく、泣く泣く琉球と高山国の割譲、多額の賠償金を支払う羽目になったのである。明国内は万暦帝の軟弱な姿勢に不満が頂点に達し、各地で反乱が多発したのである。これに追われる明朝はやがて衰退の一歩へと辿っていき、後にヌルハチ(清朝の初代皇帝)によって滅ぼされたのである
余はスペイン(イスパニア)の国王であるフェリペ二世である。余の君臨する間はスペイン帝国・スペイン黄金世紀の最盛期に君臨した偉大なる王であった。我が治世はスペイン帝国の絶頂期に当たり、ヨーロッパ、中南米、アジア(フィリピン)に及ぶ大帝国を支配したのであったが、途中で躓きをした
「何?ルソンを巡って、日本と戦だと?」
「ははっ!どうやら日本はルソンに兵を送り、我が軍と衝突したようです。」
「ふん、東洋の蛮族が!神に選ばれた我等に牙を剥くとは!我が国が誇る精鋭で蹴散らしてくれるわ!」
余はこの時、自国の勝利を疑わず、日本を完全に侮っていた。しかし現地であるルソンのスペイン軍は苦戦を強いられていた
「あの距離から、なぜ撃てるんだ!」
スペイン軍は日本の誇るライフリング式のフランキ砲の前に多くの軍船が沈められたのである。スペイン軍も大砲を撃って反撃したが、日本の軍船に届かず、逆に返り討ちに会う羽目になった。やがて船戦は日本側の勝利となり、小舟に乗った日本軍は上陸しようとしていた。スペイン軍は鉄砲と大砲で反撃したが、ライフリング式のフランキ砲による砲撃で、陸上にいたスペイン軍は反撃できずにいた。そして日本軍は上陸し、火打石式の鉄砲と焙烙火矢をスペイン軍に放った
「何なんだ!この軍は!」
「くっ!東洋の猿どもが!」
スペイン軍は剣や槍を持ち、奮戦したが多勢に無勢、圧倒的の日本の大軍を前に陸上のスペイン軍は撤退を余儀なくされた
「こうなったら雨だ、雨が降るのを待つんだ!」
雨が降れば火縄銃等が使えなくなる。こちらも鉄砲や大砲は使えないが、向こうも使えないと思っていた。念願の雨が降り、スペイン軍は反撃に転じた
「東洋の猿共に我が軍の力を見せつけろ!」
「「「「「オオオオオオオオオオ!」」」」」
スペイン軍は一斉に襲い掛かったが、日本軍は火打石式の鉄砲を構え、一斉に発射した
「な、何だと!」
「なぜだ、なぜ雨の中、撃てるんだ!」
スペイン軍は予想外の事態に呆気に取られていた。雨の中、撃てないと思っていたと思っていたが、日本軍は雨が降っていても、撃ってきたのである。スペイン軍は日本の火打石式の鉄砲と焙烙火矢と砲弾と矢の雨に次々と死傷者が続出した。実は焙烙火矢の導火線は防水加工がされており、雨の中でも使えるようにしていたのである。フランキ砲の方も防水加工され、火薬も湿らせないように工夫を重ねて、実戦に出していたのである
「ああ、神よ、どうか御助けを!」
スペイン軍は神に救いを求めたが、天は助けてくれず、ルソンにいたスペイン軍は壊滅したのである。ルソンのスペイン軍が壊滅したと知らせを聞いたフェリペ2世は激怒した
「おのれええええええ!東洋の蛮族共が!」
フェリペ2世はすぐに軍備を整え、日本に報復しようとしたが、途中でイギリスと小競り合いから、イギリスと戦をする羽目になり、フェリペ2世は日本遠征を中止し、イギリスと戦をしたが、スペインの誇る無敵艦隊は、アルマダの海戦にて海賊出身のフランシス・ドレイク率いるイギリス水軍に敗れ、国力が衰退したのである
「なぜだ、なぜ、我が軍が負けるんだ。」
その後、スペインは領土を巡って、日本とイギリスと戦い、敗戦ばかりが続き、スペインの国力は疲弊し、衰退したのである。一方、イギリスはスペインを破った日本を注視した
「日本とは戦をせず、友好を結ぼう。」
イギリスの女王エリザベス1世は日本との友好の道を選び、やがて日本とイギリスの長きに渡る友好が現代まで続くのであった
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