外伝11:新名屋
どうもお久しぶりです、伝兵衛です。元は忍びでとある失敗を犯し、堺にて奴隷として売られていたところ、新名屋の主人である新名内蔵助様に買われ、今は新名屋の番頭を務めています。私は商売柄、任務のために商人の仕事の心得があり、番頭に任命されました。旦那様が編み出した商品は次々と売れて、やがて焼き物や鍛冶製品、そして新兵器の着手へと商いの幅を広げていった。織田信長公を始め、明智光秀・丹羽長秀・羽柴秀吉・滝川一益といった有力武将の贔屓を得る他に、旦那様はかつて奉公していた今井家の主である今井宗久から嫁、今の奥方である楓様を貰い、今井家という強力な後ろ盾を得ることができ、新名屋は大きくなっていった。歳月が経ち、織田信長の下で天下が統一した。私としてはようやく長く続いた戦が終わって一安心した
「旦那様、これで戦の世が終わりますな。」
「そうだな。」
旦那様の顔はあまり嬉しくなさそうでした。新兵器が売れなくなるからか、戦がなくても太平の世でも使える商品があるのに・・・・
そんなある日、旦那様は織田信長公の命で大坂に行く事になった。なぜ呼ばれたかは、分からないが、旦那様は大坂行きの準備をしていた
「伝兵衛、店の事を頼んだぞ。」
「お任せを。」
旦那様は大坂へ向かった。それから数日後、旦那様がお帰りになった。織田信長公から呼ばれた理由に私は驚愕した
「えっ!上様にお仕えする!」
「そうだ。」
我等が主人、新名内蔵助は織田信長公の命で御伽衆として仕えることになり、楓様を始め、家族と一緒に大坂に行くことになったのだ。その理由を問いただすと・・・・
「誰にも言うなよ。」
「はい!」
どうやら信長公は明を攻めようとしていたらしい。明は強大な軍事力と優れた文化を持ち、過去において、日ノ本は大陸で政治・文化等を学び、日本は繁栄したのである。その明を攻めようとした信長だったが、旦那様は別の方向で海の彼方で領地を広げる策を申し上げたところ、明攻略を中止し、旦那様の策を取り入れたという。そこで信長公に御伽衆として仕えることになったという
「旦那様、何をやっておられるのですか。」
「しかしな、あの場で言わねば、斬られていたもしれぬのだぞ。こちらとて命懸けだったんだ。」
「旦那様が大坂に行くとなると新名屋はどうなるのでしょうか?」
「伝兵衛、お前が堺の新名屋を任せる。」
「我等に!」
突然の主人から堺の新名屋を任されたあっし、いや、私は言葉が出なかった。突然の出来事に頭が追いつかなかったのだ
「伝兵衛、お前がうちに来て、十数年たつ、お前に店を持たせたいと思っていた。これを機に、堺の新名屋はお前に任せようと思うんだ。」
「で、ですが・・・・」
「それにな、大坂で新しい新名屋を出そうと思うんだ。」
「何と!」
「うん、新名屋はこれから大きくなる。新名屋の種を全国にばらまき、花を咲かせるんだ。」
何と旦那様は新名屋を日ノ本全国に新名屋の店を広めるおつもりらしい。夢のような話だが・・・・
「私に店の全てを任せることを皆は納得いたしましょうか?」
「心配するな。他の者はお前の事を信頼している。私が伝えれば、他の者たちも納得している。伝兵衛、この新名屋を任せられるのはお前しかおらん。」
「旦那様・・・・」
私は旦那様からの頼みを聴き入れ、堺の新名屋を任された。旦那様は他のみんなにこの事を伝えると、最初は皆、驚いたが、仕方がないと諦め、私たちは旦那様と家族、旦那様に従う奉公人を見送ることにした
「伝兵衛、新名屋を頼んだぞ。」
「旦那様、道中お気をつけて。」
「うむ、皆の者、さらばじゃ。」
旦那様一行はそのまま大坂へ向かった。旦那様が大阪へ向かった後、私は苦楽を共にした新名屋の面々の前で発表した
「ああ、本日より旦那様よりこの新名屋の一切を預かることになった。皆が一丸となって協力し、新名屋を盛り立ててほしい!」
私の目の前には同じ元奴隷かつ奉公人仲間のまつ、しの、みつ、もよ、幹太、利吉、小吉、とも、ゆうの他に鍛冶職人の棟梁の五助、焼き物職人のマオ・ジロウの他、多くの奉公人たちがいた
「番頭さん、そう緊張するんじゃないわよ。」
「そうよ、ここにいるみんなは昔からの仲間じゃない。」
「そうそう。」
「番頭に言われなくても、そのつもりよ。」
まつ、しの、みつ、もよは私を気遣い、励ましてくれた。付き合いが長いと分かり合えるものだ
「そうだよ、俺たちは旦那様に拾われた身、一緒に頑張ろうぜ!」
「「「「そうだよ!」」」」
最初、会った時は子供だった幹太、利吉、小吉、とも、ゆうも成長し、私を支えてくれる。今では商品開発に精を出していてくれるため助かっている
「ハハハハハハハ!伝兵衛さん、男ならドーンと胸張れや!」
「五助・・・・」
「俺は焼き物の仕事ができればそれでよろし。番頭さん、しっかりやれや。」
「ジロウ・・・・」
私は感極まった気持ちだった。これからも仲間たちと一緒にやっていける、自信が確信に変わり、私の心の炎がメラメラと燃えていた
「よし、今日頑張れば、明日が来る!頑張った分だけ明日が来る。良い明日が来るか、悪い明日が来るかは我等の働き次第だ。これからも頑張ってくれ!」
決まった。私は旦那様が最初に言ったあのセリフをそのまま伝えると・・・・
「番頭さん、その言葉、旦那様のセリフじゃない。」
「「「「「ハハハハハハハハハ!」」」」」
みんなも覚えていたらしく笑われた。やはり変わらないな(笑)
その後、堺に新名屋は私たちが盛り立てていき、そこから全国に新名屋の店が広まっていった。その後、旦那様や奥様、私の他に古くからの奉公人仲間は亡くなり、新名新兵衛様及び新名利次郎さま、幹太たち若い者が引き継いでいった。私たちが育て上げた新名屋はこれからも続いていくことをあの世にて見守ることにしよう
「全くいい人生だった!」
それからの新名屋は現代まで続き、明治時代に【新名財閥】と名を変え活動し、現代では【新名ホールディングス】と名を変えて現代にいたるのであった
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