第30話:新時代
新名内蔵助だ。どうやら無事のようだ。忍びの報告を受け、信長・信忠は生存しており、光秀は坂本城で爆死したのである。本能寺の変は実際に起こったが、既に信長は安土へ逃亡しており、後を追いかけたが、後から明智討伐軍が挙兵しており、光秀は都を占拠しようとしたが、盟友の細川藤孝に抑えられ、最後は坂本城で籠城し、爆死したのである
「まぁ、何はともあれ、信長は気付いて良かったよ。」
結果として信長・信忠は生存した。もしもの場合は強引の手を使っても救出しようとしたが杞憂に終わった。その後、軍を編成し毛利を征伐した。毛利家は安国寺恵瓊を派遣し、降伏した。秀吉の仲立ちもあって所領は【安芸国・周防国】の2ヶ国のみとなった。足利義昭は織田信長の下に預けられた
「いやあ、まさか上様が生きておられたとは・・・・」
「それで殿はどうなさる?」
「ああ、最早、事が露見した以上、上様に従う他ないわ。」
信長生存の報告を受けた羽柴秀吉と黒田官兵衛は、改めて織田信長の悪運の強さにほとほと参っていた。実は明智光秀の謀反の計画は秀吉側に知られており、光秀が信長・信忠親子を討ったと同時に信長の敵討ちを名目に光秀を討ち、織田家の実権を握ろうとしたが、どうやら信長に光秀謀反が露見した。秀吉は、あっさりと天下取りを諦め、今まで通り信長の忠実な家臣として活動するのであった
そのころ堺にいた徳川家康は明智光秀の謀反と織田信長・織田信忠の生存と明智討伐を知ったが、実際、兵を持たずにいたので、黙って戦況を伺うと同時に家康はある決意をした
「こうなれば信長殿・・・・上様に従う他ない。」
「殿・・・・」
徳川家康の決心が固く、家臣たちは黙って従うのであった
四国では長曾我部元親以外の大名は信長に降伏、長曾我部は抵抗したが、圧倒的武力を前に長曾我部元親は降伏し、【土佐国】のみを安堵された
その後、九州に攻めいった。島津義久は近衛前久を通じて織田信長と交流があり【薩摩国・大隅国・日向国】の安堵と大友との和睦を条件に織田家に降伏した
大友宗麟は織田家に降伏し【豊後国】のみを安堵された
龍造寺隆信は降伏論を唱える鍋島直茂を幽閉し、信長に敵対したが、圧倒的武力を誇る織田家に惨敗し、一族郎党に至るまで滅亡した。その後、鍋島直茂は信長に降伏し、その手腕の良さから直臣として召し抱え【肥前国】を与えられた
秋月種実も信長に降伏し【筑前国】を安堵され、他の国人衆も信長に降伏し、九州は織田信長の手によって掌握された
対馬の宗将盛は信長に臣従したが、天下統一後、対馬を直轄地にしようとした織田幕府の方策により、宗氏は蝦夷地の函館という地へ移封となった
関東の方も北条氏政は【伊豆国・相模国・武蔵国】の3ヶ国を安堵され、織田家に臣従した
常陸の佐竹義重は【常陸国】の安堵を条件に織田家に臣従した
他の関東の大名も北条や佐竹に習い、織田家に臣従するのであった
最後に奥羽の大名については蘆名盛氏は1584年に死去し、その跡を継いだ蘆名盛隆は織田と敵対し、圧倒的な武力を持つ織田家に惨敗し、降伏しようとしたが許されず、最期は家臣たちの裏切りに遭い、死去した。蘆名家は当主不在ということで、滅亡した
次に伊達輝宗は以前から交流を深めており、【置賜郡・信夫郡・伊達郡】の安堵を条件に織田家に臣従した
次に最上義光は信長に謁見し【最上出羽守】に任命されるよう働きかけていたが、結局は認められず【最上郡・村山郡】の安堵を条件に臣従した
次に大崎義隆は、最初は信長に臣従しようとしたが家臣たちの統率が取れず、身動きが取れなかったところを攻撃され、義隆は自害し、滅亡した
次に葛西晴信は信長に謁見しており、【江刺郡・気仙郡・胆沢郡・磐井郡・牡鹿郡・興田保・黄海保】の安堵を条件に、織田家に臣従した
次に南部信直は、先代の南部春政の養継嗣となった。織田家に臣従しようとしたが、安東愛季・九戸政実・津軽為信等が反乱を起こし、信直はそれを抑えることができず、織田家から安東家・九戸家・津軽家の独立を容認及び臣従を認めたため、信直は泣く泣く織田家に臣従したのである。他の東北の大名も次々と織田家に臣従した
そして蝦夷地を収める蠣崎季広・慶広親子は、当初、織田家に臣従しようとしたが、アイヌの反乱により失敗し、結局は織田の圧倒的武力を前に滅亡した。アイヌたちは織田の圧倒的武力を前に降伏し、以後、蝦夷地は織田家の支配下に入る
最期に盟友の徳川家康は【三河国・遠江国・駿河国】の安堵を条件に、織田家に臣従した。結果的に信長が生きていれば、そうなるでしょうね
これにより織田家の天下は盤石となり、1585年に天下統一を果たしたのである。朝廷より従一位・征夷大将軍・太政大臣に任じられ、幕府を開かれた。俺としては、歴史ファンとして織田信長による天下布武がなったことで内心、喜びに満ちていた
「うん、織田家の天下を見れて良かったよ。」
俺自身も堺で納屋衆の1人として認められ、堺の町政に参加している。ある日、高山右近や小西行長が俺の下を訪ねた。どうやら九州での宣教師による人身売買に落胆し、改宗しようか悩んでいたが・・・・
「だったら日ノ本独自の伴天連教を作ればいいんじゃないですか。仏教も多くの流派があるし。」
「「それだ!」」
それを聞いた2人は目を輝かせ、俺に御礼を述べた後に、二人は去っていった。後に本当に日本独自のキリスト教【日ノ本伴天連教】を起ち上げるとは夢にも思わなかったが・・・・
そんなある日の事、織田信長より大坂への招集がかかった。なぜか俺1人だけである
「何だろう?」
俺は楓たちに留守を任せ、大坂へ向かっていた。俺は大坂に入ると、そこは別天地である。堺や京に負けず劣らずの繁栄ぶりを見せ、諸国から様々な品々が飛び交っている。俺は大坂城を見ると、安土城に負けず劣らずの巨大な城が聳え立った。豊臣秀吉が建てた大坂城(絵画)に負けず劣らずの存在感を放ち、特に三重の水堀が大坂城を囲っていた。更に南側には豊臣秀吉が建てた大坂城にはなかった出城が建てられており、完全なる難攻不落の要塞と化していた。俺は信長の側近の森成利を通じて、御殿にいる信長と謁見した
「御拝顔を栄によくし恐悦至極にござります。」
「うむ、待っておったぞ、利三。」
「ははっ!」
信長は上機嫌で、俺を出迎えた。一体何の用事で俺を呼んだんだろうと考えつつ、信長は用向きを話した
「今日、そちを呼んだのは他でもない。そちの思う事を申せ。」
「思う事とは?」
「うむ、ワシは明国を攻める。」
やはり明国を征服する事を考えていたか。かつて秀吉が明国を征服しようとしたのも、信長の遺志を果たすために行っており、その元祖ともいえる織田信長の明国攻略は現実になりつつある
「上様のお決めになられた以上、私ごとき商人が意見等とは・・・・」
「利三、ワシはそちに意見を聞きたいのだ。商人となったそちの視点でな。答えなければどうなるか分かっているだろうな?」
おいおい、完全に脅迫じゃないですか!って、意見を言ったとしても斬られる可能性があるじゃないか!つか何でそんな重要な事を俺に言う!
「はっ!分かりました。命を懸けて申し上げます。畏れながら私が上様の御立場であれば、明国を攻めようとは思いません。」
言っちゃた!我ながら無謀な事をしたよ!信長はというと真顔で俺を見てるよ・・・・
「理由を聞かせろ。」
「はっ!我ら商人は多くの利を得るために、損をすることは致しません。明国を攻めるは百害あって一利なしだからです。それに我が国と明国が争って喜ぶ者がいるからです。」
「ほう、それは?」
「南蛮人です。我が国が明国と戦っている間、次々と領地を広げるでしょう。もし我が国が弱体化したところを攻め入れば、確実に日ノ本は南蛮の領地になります。」
信長は俺の意見を聞き、考えるそぶりを見せた。そして信長は次のような質問をした
「では尋ねる、そちならどうする?」
「はい、私たちは南蛮人と同じやり方で領地を広げます。何も明国にこだわる必要がありません。我が国は蝦夷地・琉球・高山国・ルソン、また我らが知らない土地を領地として支配します。明国を攻めるよりも、そちらの方が旨味があり、損も少ないでしょう!」
「では明と南蛮が戦を仕掛けてきたらどうする?」
それを聞いた信長は、もし明国や南蛮が攻めてきた場合がどうするかと聞かれたら・・・・
「はい、明国には海上封鎖いたします。明国の軍船・商船を襲い、明国の船舶の航行を阻止し、明国に対し経済制裁を行い、向こうが根を上げるまで続けます。我が国が誇る南蛮船の力を見せつけましょう!次に南蛮ですが、領地争いで戦争にはなりますが、こちらにはフランキ砲・焙烙火矢・火打石式の鉄砲等がございます、また南蛮の本国は遥か遠くにあり、こちらに援軍を送るのに時がかかります。こちらは大軍を送り込み、数の暴力で制圧いたします!」
それを聞いた信長の目がピカッと光り、ついに決断したのである
「うむ、利三、そちの弁舌、見事なり。商人となって戦略眼も備わったか。よし、そちの方策に従おう。」
「ははっ!ありがたき幸せ!」
「ただし、そちはこれより、この信長の御伽衆として仕えよ。知行は1万石だ。」
「御伽衆!1万石!」
「ああ、言ったからには最後まで付き合ってもらうぞ。」
何と信長から御伽衆への誘いがあった。言い出した以上、これは断り切れないだろう、俺は御伽衆の申し出を受け入れ、新名屋が大坂に本拠を移したのであった
「ははっ!この新名内蔵助、上様にお仕えいたします。」
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