第20話:自業自得
1578年、有岡城にて荒木村重が突然、謀反を起こした。荒木村重の謀反に驚愕した織田信長は、糾弾の使者に明智光秀、松井友閑、万見重元を派遣した。荒木村重の与力だった高山右近も村重を説得し、安土城へ行くことを決意した。安土城へ向かう途中、突然、有岡城へ引き返したのである。噂では中川清秀の反対か、重臣たちの反対か、村重の出世を妬み信長に讒言したとからしいが、真偽は不明である。荒木村重は息子、村次の嫁である明智光秀の娘を返し、有岡城にて挙兵したのである
「おのれ、村重、罪を帳消しにしてやろうとしたのに・・・・許せん!」
織田信長は軍を集結させた後に、有岡城へと派遣した。荒木村重は与力の高山友照・右近親子と中川清秀等を味方につけようとしたが、高山親子と中川清秀等は既に織田信長に降伏し、所領を安堵されていた。荒木村重は毛利と石山本願寺に援軍を要請したが、先の木津川の戦いで村上水軍の立て直しをせねばならず、更に毛利家は村重に勝ち目なしと決め、援軍を送るのを辞めた。石山本願寺も包囲網によって援軍は出せずじまいであった。荒木村重は完全に孤立無援になってしまった
「ワシはどこで間違えてしまったんだ。」
一方、羽柴軍では黒田官兵衛が荒木村重を説得するべく有岡城へ向かおうとしたが、羽柴秀吉と竹中半兵衛に説得され、断念した。史実では有岡城に向かった黒田官兵衛は岩牢に閉じ込められ、衛生管理の悪さから半身不随になったが、説得を断念したことで五体満足の状態であった。史実と違うのは播磨の大半は毛利方についたが、今回は織田方、毛利方の真っ二つに分かれた状態である。黒田官兵衛の主君である小寺政職は、毛利贔屓の家臣に押され、毛利方に付いたが、織田軍のライフリング式のフランキ砲と焙烙火矢の前に降伏し、泣く泣く嫡男の小寺氏職を織田の人質として差し出し、黒田官兵衛の息子、松寿丸(後の黒田長政)は黒田官兵衛の下にいたのである
有岡城は平城ながらも総構えと呼ばれるほど周囲には堀と土塁を巡らしていたが、織田は何重にもわたる包囲網を敷き、更に高台からのフランキ砲と焙烙火矢による攻撃で、有岡城は風前之灯だった
「こうなれば逃げるしかない。」
荒木村重は秘蔵の茶器を風呂敷に包み、城の秘密通路から逃亡を図ったが、運悪く、家臣たちが戦況を知らせるべく、部屋に入った事で、逃亡を図ったことがばれてしまい、憤激した家臣たちによって村重は捕らえられた
そして有岡城は降伏したのである。織田軍は有岡城に入り、荒木村重とその家族、村重を唆した重臣とその家族を捕らえた。明智光秀は荒木村重と対面をした
「申し訳ありません!決して信長様に謀反をする気はなかったのです!全て中川清秀や重臣たちが反対したからです!」
「村重、見苦しいにも程があるぞ!」
「光秀殿、せめて、せめて又兵衛だけでも助けて貰えませんか!」
明智光秀は呆れながら、信長からの命を伝えた
「荒木村重、貴様の謀反は断じて赦しがたし、よって荒木村重及びその一族、村重を唆した重臣及びその家族は晒し首と致す!」
「ヒイイイイイイ!イヤダ!イヤダアアアアア!アアアアアアアア!!!」
荒木村重は発狂し、そのまま兵士たちに連れていかれ、首を切り落とされた。村重とその一族、重臣とその一族は、女子供であっても容赦はせず切り落とし、落城した有岡城の近くに晒されたのである。史実では2年にわたった有岡城の戦いはわずか半年で終わったのである
「荒木村重が死んだか、まあ自業自得だけど。」
俺は堺にて荒木村重が晒し首になった事を忍びによって知った。余計な事を考えずに安土に向かっていれば、まだ勝機はあったのにな、愚かな奴だと思いつつ、そこへ伝兵衛が慌てた様子で入ってきた
「旦那様!楓様が産気づきました!」
「そうか!」
伝兵衛から楓が産気づいたことを聞いた俺は、すぐに義兄、兼久に伝えた。俺は自分の部屋で息子の幸松と一緒に楓と、これから生まれる2人目の我が子の無事を祈った
「ちちうえ、ははうえは?」
「ああ、母上は今、お前の弟か妹を生まれるんだ、だからお前も母上の無事を祈るんだ。」
「うん。」
俺は幸松を抱きしめ、己の不安と戦い続けた。幸松もぎゅっと俺の腕を握った。俺と幸松は待ち続けると、そこへまつがやってきた
「旦那様、姫様が生まれました!楓様も御無事です!」
「そうか!幸松、お前に妹ができたぞ!」
「うん!」
俺は幸松と一緒に楓の下へ向かった。楓のいる部屋に入ると、布団に寝ている楓と、横にいる娘がすうすうと寝ていた
「楓、ご苦労だったな。」
「旦那様、ありがとうございます。」
「ははうえ。」
「ふふ、幸松、妹よ。顔を見てあげて。」
「うん。」
幸松は生まれたばかりの妹を眺めていた
「ちちうえ、なまえは?」
「名前か、ああ決めてるぞ。名前はお香だ。」
「おこう、うん、おこうだ。」
「ふふふ、良かったわね、お香。」
家族団らんの一時を浸っていると途中で義兄の兼久がやってきた。相変わらず、強引に部屋に入り、生まれたばかりの姪を発見した
「おお、生まれたか、で、どっちだ。」
「女子ですよ。名前はお香です。」
「そうか、良かったな幸松。お前も今日からお兄ちゃんだぞ。」
「うん。」
そのころ、安土にいた宗久は、楓が2人目を出産したことや、名前がお香と決めたことを息子の兼久によって知らされた
「くそおおおおお、ワシが堺におったら、今すぐにも会えたのに!おのれ~~~~!兼久!自慢げに書きおって!」
宗久はまだ見ぬ孫娘に会えなかったことに憤慨した。大事な役目じゃなければ、今すぐにでも堺に戻っていたのだが、安土城天守閣は順調に作られていったのである
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