第19話:織田水軍
ついに、待ちに待ったガレオン船が完成した。全長55.35m、全幅11.25m、吃水約3.8mという大型のガレオン船である。俺たちは完成した事を喜び、日本人の物作りの技術の高さを改めて感じ取った。信長は国産のガレオン船を見て、狂喜していた
「乗りたい!早く乗せろ!」
信長に急かされ、早速、ガレオン船に乗り込み、出港した。風向きを操りながら、スイスイと進む。櫓がなくても、早く進むガレオン船に信長は大変満足した
「うむ、この船の名は【尾張丸】と名乗れ!」
織田信長の故郷である尾張国にもじって名付けたガレオン船【尾張丸】の採用が決まった。その後、ガレオン船が作られ、1578年のころには、計6隻【尾張丸・美濃丸・伊勢丸・近江丸・越前丸・飛騨丸】が完成した。史実とは違い、第1次木津川の戦いは起きておらず、本格的な木津川の戦いは1578年に起こることになった
「毛利め!性懲りもなく本願寺に味方しおって。」
朝廷との停戦後、1578年に石山本願寺は毛利と再び手を結び、挙兵した。信長はライフリング式のフランキ砲を搭載したガレオン船6隻を動員した。ガレオン船の指揮者は九鬼嘉隆、九鬼水軍を率いた水軍大将であり、此度のガレオン船を指揮する事に、九鬼自身は内心、奮い立っていた。まさか南蛮船を自分の手で指揮するとは思わなかった九鬼は、今回の戦いに並々ならぬ思いで望むのであった
九鬼嘉隆率いる九鬼水軍(ガレオン船6隻)は木津川へと向かっていた。そして毛利が誇る村上水軍を発見した
「来たか!国崩しを準備せよ!」
九鬼嘉隆の命で、砲門が開き、ライフリング式のフランキ砲が出てきた。村上水軍に狙いを定め・・・・
「放てえええええ!」
九鬼嘉隆の号令によってフランキ砲が火を吹いた
一方、村上水軍はというと、石山本願寺に兵糧を運ぶ途中で、遠くに南蛮船を発見した
「あれは、どこの南蛮船だ。」
村上水軍を率いていたのは村上元吉、1576年に毛利の援軍として駆けつけたが、朝廷の介入によって、停戦となり、帰還することになった。1578年に再び援軍として駆けつけたが、木津川で南蛮船を発見した。南蛮人が乗っているのかと思ったが、織田の家紋が入った旗を見つけ、織田水軍だと分かったのだ
「備えよ、織田水軍だ!」
村上水軍は焙烙火矢を準備し、織田水軍に近づこうとしたが・・・・
「ん、あれは何だ?」
すると南蛮船の横口が開き、何かが出てきた。目を凝らして見ると、武器らしきものだった。するとその武器が轟音を鳴らし、村上元吉が乗っている船の真横に着弾した
「うわあああああああああ!」
村上元吉は突然の織田の砲撃に、船が大きく揺れ動いた。元吉が乗っている船だけではなく、他の船も直撃はしなかったが、近くに着弾し、波によって舵が切れなかったり、小舟が転覆した。織田水軍は遠くから砲撃をし、村上水軍にとって悪い意味で衝撃を与えた
「な、何なんだ、あれは・・・・」
村上元吉は呆然と織田率いる南蛮船を見ていた。そして次の砲撃が始まり、砲弾は村上元吉の乗っている船に直撃した
「ウワアアアアア!」
村上元吉は砲弾の衝撃によって海に投げ出された。味方の船が何とか村上元吉を救出したが、織田水軍の砲撃の雨が止まず、1艘、また1艘と砲撃によって沈められた
「た、退却だ!」
村上水軍は小舟を操り、命からがら逃げ延びたのである。村上水軍が撤退するところを確認した九鬼嘉隆は勝鬨を上げた
「我等の勝利だああああああ!」
「「「「「「オオオオオオオオオ!」」」」」
「えい、えい!」
「「「「「「オオオオオオオオ!」」」」」」
織田水軍は誰1人死傷者を出さず、船も無傷のまま完全勝利を収めたのである。史実では鉄甲船が活躍したのだが、ガレオン船が出てきたことで鉄甲船が無くなったのである。新名内蔵助は知らず知らずに歴史を変えてしまったのである
一方、本願寺側は毛利率いる村上水軍が手も足も出ずに惨敗したところを見ており、著しく戦意が喪失した。顕如は完全に挫けており、息子の教如が代わりに本願寺勢を指揮していた
「我等には難攻不落の石山本願寺がある限り、けっして負けはせん!」
教如が叱咤激励をしたが、本願寺勢の士気は上がらず、中には降伏を考える者も多数現れた。中には石山本願寺から脱出しようとした者がいたが、陸と海から連なる織田軍の包囲網によって逃げることができず、石山本願寺に籠るしかなかった。本願寺勢は、兵糧のかわりに、松風という日本一薄い和菓子を焼いて、飢えを凌いでいたが、士気はダダ下がりであった
やあ、新名内蔵助だ。ガレオン船が毛利水軍を壊滅させ、陸と海で石山本願寺を包囲していた。まあ、俺にとってどうでもいいが、俺には良いニュースが入ってきた。何と我が愛妻、楓が2人目を妊娠し、現在は身重で、いつ生まれてもおかしくない状態である。幸松にとっては弟か妹である。幸松は今年で2歳になり、歩けるようになり、言葉も喋れるようになった
「ちちうえ。」
「おお、幸松!」
俺は幸松を可愛がっていた。楓は俺と幸松を見て、優しく微笑み、大きくなった御腹をさすっていた
「幸松、お前に弟か妹ができるぞ。」
「おとうと?いもうと?」
「ああ、お前もお兄ちゃんだ、兄弟仲良くするんだぞ。」
「うん。」
「おお、そうか、いい子だ。」
俺はこのささやかな幸せを噛み締めつつも、時の流れが刻々と進んでいくのであった
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