第17話:新兵器

1576年、安土山にて城の建築が始まった。琵琶湖東岸の、近江国蒲生郡安土山(現在の滋賀県近江八幡市安土町下豊浦)にあった日本の山城。琵琶湖の水運も利用できるため利便性があり、加えて北陸街道から京への要衝に位置していた。各地で集めた巨大な石、砂利、木材が安土山に結集した。これらの物資は今井宗久が一手に引き受けていた


「足りない?」


「はい、まだ石材が足りません。」


「うーん、どうしたらよいか。」


今井宗久は考えたが結論が出ず、織田信長に石材が足りないことを報告すると、信長は・・・・


「だったら寺社仏閣の墓石と石仏を使えばよい。」


「何と!よろしいのですか!」


「構わん、天下人のための城の礎となるのだ、神仏もそこまで狭量ではなかろう。仮に反対があったとしても比叡山延暦寺の事を話せばよい。」


「ははっ。」


すぐさま兵士を派遣し、近くの寺社仏閣から墓石と仏石を安土山へ持ち去っていった。僧侶たちは、反対したが、叡山攻めの事を話すと、渋々受け入れる他がなかった。その墓石と石仏は石段と石垣に組み込まれる形で取り入れられた


「織田様は神仏をも従わせようとするのか。」


今井宗久は改めて織田信長の大胆不敵な行動力に肝を冷やした。そんなこんなで工事は着々と進む一方で、石山本願寺が挙兵したとの知らせが入った


「おのれ、石山の坊主どもが!」


信長の命を受けた荒木村重・明智光秀・塙直政が三方に分かれて攻めた。織田本軍を集結している間に、信長はわずかな兵だけで堺に立ち寄った。信長は新名内蔵助のいる物資場へ向かった


「利三、おるか!」


「上様!」


突然の信長の来訪に俺は驚いた。話を聞くと、石山本願寺攻めの際に、例のライフリング式のフランキ砲を持っていくとの事、まあ、フランキ砲は5門はできているし、車輪をつけていたので運搬は可能だが・・・・


「利三、例の国崩し、石山本願寺にて試し打ちするぞ!」


「分かりました、ついでに新兵器も共に御運びいたします。」


「ほお、新兵器とな。」


俺は奉公人に命じて、フランキ砲や焙烙火矢や投石器を持ってきた。それらを見た信長はニヤリと笑い・・・・


「気に入った。国崩しと共に使わせてもらうぞ。」


内蔵助たちは残りの投石機と焙烙火矢を運んでいる最中、信長は石山本願寺のある方向を向いて・・・・


「ワシを怒らせたツケはキッチリと払ってもらうぞ。」


信長はフランキ砲と投石器と焙烙火矢を持ちかえった。織田本軍が準備している最中に、塙直政の戦死と明智光秀と佐久間信栄のいる天王寺砦が本願寺勢1万5000人の攻撃を受けている知らせが入った。信長は急ぎ、100騎を率いて、天王寺砦へ救援に向かった。その途中で河内若江に逗留し、後に3千の兵が集まったが、信長は待ちきれずに天王寺砦に向かった。信長が到着した時、本願寺勢は天王寺砦を攻めている最中だった


「ちっと早いが、ここで試し打ちするか。」


信長は早速、新兵器であるフランキ砲と投石器と焙烙火矢を使用した。同行者から使い方を教わり、試し打ちを行った


「放てええええええ!」


合図を送ると、フランキ砲5門は轟音を放ち、砲弾は本願寺側に直撃した。更に焙烙火矢を投石器にセットし、火をつけたと同時に放った。焙烙火矢は敵陣に落ちて、爆発した


「ギャアアアアアアア!」


「ひいいいいいいいい!」


本願寺側から阿鼻叫喚の悲鳴が響き渡る、織田軍は構わずに発射し続けた。本願寺側は未だ、かつて経験のない敵の攻撃にどうすることもできず、右往左往していた


「おお、援軍だ!援軍が来たぞ!」


「あれは信長様だ!」


天王寺砦を守っていた明智光秀と佐久間信栄は、援軍が来たことで士気が上がり、反撃に転じた。本願寺側はどうすることもできずに石山本願寺へと退却した


「逃がすな!追ええええええ!」


織田軍は追撃を開始し、ついに石山本願寺に到着した。信長は陣を張り、フランキ砲と投石器と焙烙火矢の到着を待ち続けた。信長はイライラしながら待っていると、ようやくフランキ砲と投石器と焙烙火矢が到着すると同時に信長はすぐさま本願寺に向けて配置した


「放てええええええ!」


号令と同時にフランキ砲と投石器に乗せた焙烙火矢が発射され、石山本願寺に直撃した。石山本願寺は突然の敵側の攻撃に驚いていた。雑賀孫一率いる鉄砲衆は、織田のフランキ砲と焙烙火矢に翻弄され、まともに反撃できなかった。更に不運な事にフランキ砲の放った砲弾は、顕如のいる御座所に直撃したのである。顕如は突然の敵の砲撃に驚愕し、辺りを見渡すと部屋はぐちゃぐちゃになり、味方である僧侶が、目の前で血塗れで手足がバラバラになったり、脳味噌が飛び出ていたのである


「ひいいいいいいい!」


顕如は味方の無残な姿に恐れおののき、指揮できる状態ではなかった。このまま織田軍が勝利するのかと思いきや、朝廷から勅使が派遣され、停戦を求めたのである。信長は最初、反対したが、毛利が本願寺に援軍を派遣したという知らせが入ったのである。信長はやむを得ず、朝廷の停戦を受け入れ、毛利が撤退をする事や攻略した土地を織田家のものにする事を条件に、この戦いは幕切れとなったのである。史実とは違うが、織田軍の勝利に終わったのである


「くっ!もう少しだったのに!」


信長は攻略した土地に砦を築き、石山本願寺を包囲する戦法を取った。次こそは本願寺を落とすことを誓うのである

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る