第16話:日常

やあ、新名内蔵助だ。我ながら罪悪感に芽生えていた。昨日はハッスルして、済んだ後は罪悪感でいっぱいですよ。楓は気にしなくていいと言ってくれたが、俺は、まさに猿だよ・・・・


「いやいや旦那様の下の御刀はお元気ですね(笑)」


奉公人の女のリーダー的存在であるまつと出くわし、まつはニヤニヤしながら下ネタを吐きやがった。一寸の恥じらいもなく、遠慮なく言いやがったぞ。楓を見習えや!


「あら、これは失礼、フフフ。」


そういうとまつは、ニヤニヤしながら去っていった。その次に伝兵衛がやって来た


「旦那様、昨日はお楽しみだったようで(笑)」


この野郎、お前を人買いから救い出してやったのは誰だ!俺だぞ!そんなに主を弄るのが楽しいか!


「今すぐ抱きたいと仰っしゃる旦那様には言われたくありません。」


くっ、こいつ正論吐きやがって!


「では私はこれにて。」


そういうと伝兵衛はそそくさと消えていった


「ちっ、逃げ足の速い奴め。」


その次に幹太、利吉、小吉、とも、ゆうの5人と会った


「「「「「旦那様、おはようございます!」」」」」


「あぁ、おはよう!」


子供たちの元気のよい挨拶に俺も挨拶をした。あいつらと違って子供たちはそっちの話とは無縁だ


「ねぇ、旦那様に聞きたいことがあるの!」


「どうした、とも?」


「子供はどうやって生まれるの?」


ん、子供はどうやって生まれるかって・・・・


「何でそれを聞こうと思ったんだ?」


「うん、楓様が赤ちゃんを生んだときに、どうやって作ったんだろうって。」


「そうなのか。」


「伝兵衛様やまつお姉ちゃんが旦那様に聞いた方がいいよって言ってくれたの。」


あの野郎共、子供に何、拭き込みやがった!自分達が言いにくい事を俺にやんじゃねえよ!


「う~ん、まぁ、楓とは愛し合って生まれたんだよ。」


俺は無難に答えを出した


「それじゃ、分かんねえよ、もっと具体的に!」


「そうだそうだ!」


「僕も興味ある。」


「教えて。」


利吉、小吉、幹太、ゆう、人には言いたくないことがあるんだぞ!


「まだお前たちには早い、ほら朝食が待ってるぞ。」


「「「「「ええええええ。教えてよ!」」」」」


俺は子供たちの質問攻めに悪戦苦闘していると・・・・


「ほら、旦那様が困ってるでしょ。」


「ほら朝食が出来たわよ!」


「早くしなさい!」


そこへ、しの、みつ、もよが駆けつけてくれた。子供たちは3人に連れていられた


「はあ~、助かった。」


俺は楓と一緒に朝食を取った。昨日の事もあり、互いに少々気恥ずかしい思いをしたが、それ以上に楓が2人目の子供が欲しいと言っていたので、俺も悪い気がしなかった。そんなこんなで朝食を済ませた後、俺は造船所へと向かった


「どうだ、調子の方だ。」


「ああ、旦那、問題なくやれてますわ。原物さえあれば、後は組み立てるだけですわ。」


「そうか、それは良かった。後で酒を届けよう。」


「ありがとうごぜいます。」


造船所を後にした俺は鍛冶屋へ向かった。ライフリング式のフランキ砲、火打石式の鉄砲の他に、投石機、焙烙火矢等の製造を始めた。フランキ砲や鉄砲だけでは心許ないと思い、作っておいたのだ。焙烙火矢は主に、投石器にセットし、焙烙火矢の導火線に火をつけて、発射する。野戦でも攻城戦でも活用できるだろう


「よお、五助、調子はどうだ。」


「ああ、旦那、投石器も焙烙火矢も量産できてるぜ。」


「そうかそうか、織田様もきっと気に入るだろう。」


「ありがとうございやす。」


俺は鍛冶屋を後にし、窯工房へ向かう途中、血相を変えて、俺に向かってくる舅の今井宗久と出くわした


「おお、ここにいたか!」


「舅殿、どうしたんですか?」


「どうしたんですか?ではない!織田様より仕事の依頼だ!」


「はあ~(今度は何だ。)」


俺は宗久に連れられ、今井屋敷へと向かった。ああ、懐かしいね


「お帰りなさいませ、旦那様と新名様。」


「内蔵助、茶室へ行くぞ。」


「あ、はい。」


俺は宗久とともに今井家の茶室へ向かった。茶室に入った瞬間、誰も入れず、完全な密室状態で宗久は信長の仕事の依頼を話した


「おほん、此度、織田様より城の建築を依頼された。」


「城の建築?」


「うむ、織田様は近江国の安土山に巨大な城を建てるそうだ。」


安土山といったら、幻の名城「安土城」か!もうそんな時期に差し掛かっていたか


「で、我等の仕事とは?」


「うむ、城を建築する際の物資の運搬だ、特に内蔵助、お前が作った瑠璃色の瓦を織田様が御所望だ。」


「瓦を?」


「うむ、堺に訪れた時に、バテレンの教会の屋根瓦を目にしてな、是非、城の天守閣の瓦をあの瑠璃色の瓦にしたいと仰せだ。」


「て、天守閣にですか!」


「そうだ、お前が雇った唐人の瓦をだよ。」


俺は生唾を飲み、安土城を思い出した。確かに青色の瓦があり、もしかしたら俺の雇った焼き物職人の瓦かもしれんと思った


「それでお前はこの堺にて物資の供給と管理をしてもらいたい。ワシは安土に赴き、建築に携わる。」


俺の役目は後方支援か、まあ堺に離れずに済むからいいけど・・・・


「分かりました、その役目、お引き受けしましょう。」


「おお、引き受けてくれるか!」


「はい、これより窯工房へ瓦の生産の準備をいたします。」


「うむ、頼んだぞ。」


俺は今井屋敷を出た後、窯工房へ向かった。窯工房に到着すると、焼き物を飾っているマオ・ジロウを見つけた


「おい、ジロウ!」


「ん、旦那さん、どうした?」


俺は織田信長からの依頼をジロウに伝えた


「へ、私の作った瓦が、城の天守閣に!」


「ああ、そうだ。お前の作った瓦が天守閣に飾られるんだよ。」


ジロウはまさか自分の作った瓦が日本の偉い人物の目に留まり、天守閣に飾られることに驚いた。同時に自分の焼き物が有名になったことに感激した


「俺の焼き物が・・・・この国に通じたのか・・・・」


「ああ、ジロウ、お前の焼き物の腕前を披露する大舞台が来たんだ!」


「大舞台・・・・よっしゃああああああ!」


ジロウは雄たけびをあげ、早速、依頼していた仕事をキャンセルした


「いいのか、他の依頼を断って。」


「何言ってるんだ、日本で偉い人の依頼なんだ!断るわけにはいかねえ!」


ジロウの目の光が一段と輝き、瓦造りの材料を集め始めた


「旦那、早速だが瓦造りの材料を追加してくれ!これだけじゃ足りねえよ!」


「ああ、分かったよ。」


俺も内心、興奮していた。俺の雇った焼き物職人の瓦が天守閣に飾られる。つまり俺自身も天下に最も近い男に評価されたのだ。俺自身、安土城の建設には直接参加できなかったが、縁の下の力持ちとして安土城を完成させようじゃねえかと決意し、仕事に取り掛かるのであった




「五郎左、準備の方は大丈夫か?」


「はい、大工、職人、労働者等を雇い、準備に取り掛かっております。」


岐阜城の密室にて、織田信長と丹羽長秀が安土城建設の段取りをしていた


「上様が瑠璃色の瓦をお求めとの事ですが・・・・」


「ああ、利三のところで作っているものだ。あやつも良き焼き物職人を雇ったのう♪」


「内蔵助殿ですか。」


「天守閣こそ織田家の権威の象徴、必ずや完成させるぞ!」









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