第2話:茶の湯
俺は商人になるべく粉骨砕身で商いを学んでいる。史実の斎藤利三は智勇に優れ、文武両道、教養が高く、明智家の家老を務めるほどの人物だったので、その影響か、物覚えが早く、算術を覚え、今井宗久から勘定係を任せられるほどに出世した。また荷の護衛を務め、武士・山賊・海賊・同業者相手に戦い、難なく熟してきた。そのおかげか主人である今井宗久だけではなく、息子の今井兼久(後の今井宗薫)や店の人々たちから厚い信頼を得ることができた
「内蔵助、荷の護衛、ご苦労であった。」
「ありがとうございます、旦那様。」
「これより田中与四郎殿の屋敷にて茶の湯を行う。ワシの供をせい。」
「ははっ、承知しました。」
田中与四郎、後に千利休と歴史に名を遺す人物と会えるのは、俺は期待を膨らませつつ、今井宗久の供をした。到着した田中与四郎の屋敷は今井宗久にも負けず劣らずの立派な屋敷であった。するとそこへ180㎝あろうほどの大男が出迎えた
「ようこそお越し下された、今井さん。」
「こちらこそお招きいただき感謝いたします、田中さん。」
俺の目の前にいるのはあの千利休、歴史的な有名人に会えるのはやっぱりウキウキする。俺は内心、狂喜に満ちつつ、ポーカーフェイスで臨むと・・・・
「おや、見慣れぬ御仁ですな。」
「ああ、紹介します。私の下で奉公する内蔵助という男です。元は織田家の侍だったのですが、商人になるべく私の下で商いを学んでおります。」
「今井宗久様にお仕えする内蔵助と申します。田中与四郎様にお会いできて光栄に存じます。」
「ほお、元織田家の・・・・」
田中与四郎は俺をまじまじとみつつ・・・・
「今井さんも面白いことをなさるのう、ところで内蔵助、そなたは茶の湯を存じておるか?」
「はい、嗜む程度には・・・・」
「ほお、茶の湯を学んでおったのか。」
それを聞いた田中与四郎は目を見開いた。実は元舅である稲葉一鉄は茶の湯に造詣があり、俺も茶の湯を学んだ。まあ、いつか役に立つと思って学んでいた。そばで聞いていた今井宗久は驚き、すぐさま問いだたした
「内蔵助、お前、茶の湯に造詣があったのか、なぜ教えてくれなかったのだ!」
「はい、聞かれなかったので黙っておりました・・・・」
「はあ~、そうと分かっていたら、お前を連れ出していたのに・・・・」
「まあまあ、今井さん、その辺で許してあげてください。さて内蔵助、そなたも茶の湯に参加してみぬか?」
田中与四郎から茶の湯の誘いがきたが生憎、俺は新参の身であり、そうそう大それたことができない
「いいえ、私はまだまだ新参の身でございます、茶の湯に参加すること自体、畏れ多いです。」
「内蔵助、茶の湯の前では新参も古参もない。茶の湯を通じて人との繋がりを持つことが大事なのだぞ。」
「そうだぞ内蔵助、茶の湯は我ら商人の商売にとって必要不可欠なものだ、商人を目指すなら茶の湯に参加し繋がりを持つ事も大事だぞ!」
田中与四郎と今井宗久に説得され、俺は観念して茶の湯に参加した。田中与四郎に案内され、茶室へと赴いた。茶室は狭く、数人入るか入らないかのギリギリな空間だった
「少し手狭だが我慢しておくれ。」
そういうと田中与四郎は、白い茶碗を用意し、そこへ抹茶の入った茶入から粉末の抹茶を茶杓で取り出し、数杯、白い茶碗に入れた。そして沸かしていた茶釜からお湯を柄杓で取り出し、抹茶の入った白い茶碗に入れ、茶筅でかき混ぜた。出来上がった抹茶入りの茶碗を今井宗久に渡した。今井宗久は2回、少しずつ回し、一口飲んだ。飲み終わったら、口を着けた所を指で拭き取り、懐紙で拭き取った。そして俺の番になった。俺も飲み方の作法を行い、茶を飲んだ。うん、美味い、これほど美味しいお茶は飲んだことがない!俺は本物の茶人の作ったお茶に舌鼓を打ちつつ、口を着けた所を拭き取り、拭いた指を懐紙で拭き取った
「与四郎様のお茶、大変美味しゅうございました。」
「そう言っていただけるとは私も嬉しい限りだ。」
そう言うと田中与四郎からある提案をされた
「内蔵助、私の茶の弟子にならないか?」
はい、今何といった?俺を茶の弟子だと!
「田中さん、残念ですが内蔵助は私の奉公人です。茶の湯は私が教えますので御遠慮頂きたい。」
そこへ今井宗久が牽制を仕掛けた。俺が茶の湯を学んでいた事を知って、
「あら、それは残念、まぁいいか。内蔵助、いずれ茶の湯の席を設けるゆえ是非、参加してくれ。」
「はい、分かりました。」
その後、お開きとなり、田中与四郎との繋がりができた
「内蔵助、お前には茶の湯の事を一から教える。どこへ行っても恥ずかしくないように、鍛え上げねばな!これからは私がお前の茶の湯の師匠だ、分かったな!」
「はい、旦那様。宜しく御指南のほどをお願いいたします!」
宗久は気合いが入ったノリで俺は正式に今井宗久の茶の湯の弟子にした。そこから俺は本格的に茶の湯を教わることになった
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