第10話  肉親との再会

 崋山達が喜んで第7銀河の母船を待っていると、何と逃げていた母船も戻って来た。嬉しいようながっかりなような、複雑な気分である。こうなると元の船に乗らなければならない。班長は、

「おやおや、よくまあ頻繁にワープ出来るものだな」

 と、意味ありげに言った。仕方なく皆、じわじわと母船に向かっていると、今度は別の母船が来た。

 第7銀河の母船かな、第7銀河の人達はどうするのかなと、崋山がきょろきょろしていると、見知らぬ母船は、崋山達の母船を、攻撃し出した。皆慌てて射程内から出ると、班長が、

「龍昂の船だ。カイに何とかしろ。と崋山、言え」

『と、言っているよ。カイ』

『こっちからは、コンタクト出来ないですよ。いつも向こうから言ってくるし、第一どう言えば良いのですか』

「俺らの荷物が中にあるし。とでも言ってみれば?ほら、例の技の証拠の記録とかさ」

 崋山が、思い付いて言った。

『あ、そうだね。でも僕からコンタクトしたことは無いんだってば』

「何でも最初ってのはあるもんだ」

 崋山はじれったくなった。そこで、

『えー、爺さん爺さん、応答願います。あの母船には俺らの荷物有。破壊しないで、ほどほどにお願いします』

『ははは、了解』

「ほら、出来たじゃないか」

 後ろから双市朗が、

「崋山、凄い」

 とほめてくれた。

 班長も、

「取りなしてくれたんだな。でもまだ攻撃しているけど」

 崋山も了解って言ったけど、と思いながら見ていると、操縦室を壊して攻撃は終わった。そして龍昂の船から戦闘機が十数機出て来て、やられた母船の方へ行き、中へ入って行った。

「あれ、キースさんが開けたのかな」

 崋山は思わず言うと、

「かもな」

 と、双市朗が相槌を打った。

 皆は、班長に俺らはどうするか聞くけど、班長も思案しているようで、

「できれば、第7銀河の船に乗りたいものだな」

 と、希望を言っている。崋山も自分もそっちに乗りたいし、そろそろ来ても良いころじゃないかなとは思ったが、こうなると例の証拠の記録とかを取りに行きたいし、Tシャツも欲しい。

「僕らは中には入れないんですかね」

 と言ってみた。班長は、

「お前、あの中に入りたいのか。俺は出来ればこのまま第7銀河の船を待ちたい。そしてあいつらが中にいる間に第7銀河の船に速やかに乗り、この場から立ち去りたい」

 すると、ゲーリー達が、

「第7銀河の船が来たら、このまま立ち去ることは無いでしょ。戦闘が始まりますよ」

 と言い出し、班長は、

「分かっている。俺らは今は奴らに置き去りにされたから戦わなかったが、母船同士が戦闘になったら、龍昂の船と戦う。そして負ける。運よくやられなければ、捕虜になる。そしてあの船に乗ることになる」

「と言うことは、どっち道、龍昂の船に乗ることになるんですね」

「崋山は身内だから気楽だな」

 先輩達が言うので、

「だけどみんな人間でしょ」

 不思議に思うと、

「いやいや、今は結構色んな奴が中に居るらしい。連合軍的になっているし。レベルも高い」

 へえと崋山は思ったが、やはりTシャツは必要だ。

「僕、荷物取りに行って良いですか」

 後ろから、

「やめとこうよ、崋山」

 双市朗が嫌がる。しかし、崋山は説得した。

「それにそろそろカイをまともな戦闘機に乗せとかないと」

「そうだな。・・・行くか」

「うん」

 班長は、

「俺の意見は聞かないんだろうな。一応言っておく。やめておけ」

「聞かないです」

 崋山はTシャツを取りにどうしても行きたかった。で、気持ちだけそおっと入口に行ってみると、開いている。多分もう開閉出来なくなっているのだろう。入ってみた。

「誰もいないのかな」

 戦闘機からみんなでそろそろ出てみたが、敵機は出口に移動していた。崋山達のはかなり燃料が無くなっていたので、入れたいが燃料注入装置も動かなくなっている。双市朗が、

「この船多分危ないぞ。別の俺らの戦闘機にしよう。先にセットしておこう」

 と言うので、急いで格納庫へ行き予備のをスタンバイさせていると、キースさんが現れた。

「戻って来たんですか。それ、私も乗せてもらえますか」

 乗せたいのはやまやまだが、三人乗りだ。するとカイが、

「2機出そうよ。俺操縦するから」

 そう言って崋山の手を握った。崋山があれっと思ってカイを見ると。

「ほら、やっぱりムチ打ちが治った」

 と言ってにっこりし、首をぐるりと回して見せた。崋山の自覚のない能力だった。

「じゃあ、キースさん。ここで待っていてください。僕ら取りに行きたい物があるからちょっと行ってきます」

「彼らは今、ワープの燃料を探ししているようですよ。どうやらこの船に船長が隠し持っていたらしいです。だから何度もワープ出来たんですね。皆、倉庫に居ると思いますが、大勢見たことも無いような奴らがいましたよ。鉢合わせしないように気を付けて下さい」

「へえー」

 崋山達はこの船を襲ってきた訳が分かって納得した。それから、他の乗組員がどうなったか聞きたかったが、とりあえず自分たちの部屋へ走って行った。倉庫に皆居るんだったら、音を立てても大丈夫かもしれない。早く取りに行きたかった。

 しかしそう都合良くはならず、通路の交差地点に急に異形の人たちが現れた。苦し紛れに、

「ちわっ」

 と挨拶して通り過ぎてみた。

 黙って見ていたので、少なくとも戦意は無いのが分かったかもしれない。部屋に着いたらロックが外れていて、物色した様だった。目指すものがどうなっているかと、一瞬心配したが、彼らは燃料を探しているのであって、隊員の私物に興味は無いようで荒らされてはいなかった。Tシャツとディスクを手に入れ、この際だから皆も私物をバックに詰め込んで、急いで通路を戻っていると、今まで崋山が見て見ぬふりをしていた、亡くなった人達の遺影が目に入って来た。その中に見覚えのある奴がいた。

「あれっ、こいつアンドロイドじゃないか」

 崋山は思わず立ち止まった。

「何だよ崋山、今頃になって」

 急ぎたいのに立ち止まった崋山を見て、二人は口々に不平を言った。

「今まで気が付かなかったけど、こいつは地球軍の副司令官を狙ったアンドロイドと同じ顔だ。ここに人間として混じっていたんだ。何かたくらみがあった筈だ。こいつは敵のアンドロイドだ」

「何だって、と言うことはこいつが敵にこの船の位置とか連絡していたんじゃないか」

 双市朗が叫んだ。崋山も

「そうだったんだ。これで辻褄が合うね」

 カイが

「そんなに大声出したら、あいつらに聞こえるよ」

 と心配したが、

「さっきもう会ったじゃないか」

 と双市朗に言い返され、

「と言うことは、どうして追いかけて来なかったのかな」

 と言う事になった。崋山は、

「きっと燃料探しで忙しいんじゃないかな。あっ、急がないともしかしたらこの船危ないんだった」

 と言って、慌ててキースの所へ戻ろうとすると、双市朗が、

「こんなのここに貼れるもんか」

 と、アンドロイドの写真を剥いだ。

 するとその下にカード状のどこかの部屋の鍵が貼ってあった。

「あれ、何の鍵かな」

 剥いで双市朗は首を傾げた。崋山も考えながらあたりを見回すと、今まで騒いで迂闊にも気づかなかったのだが、敵と言えるのか分からないが、大勢異形の人たちが集まって来ているのに気づいた。カイは少し前から気づいていたらしく、

「どっち道あっちの船に乗るんだったね」

 としょんぼりしている。

「その鍵下さい」

 最初に崋山達の所に来た人が言うので、双市朗はハイっとばかりに渡した。崋山達は燃料を隠していた所の鍵なんだなと分かった。

「見つけてくれてありがとう」

 と言われて、

「いえ、どういたしまして、敵のアンドロイドの写真を剥いだら、下にありました。崋山が知った顔だったもので」

 と、双市朗はたどたどしく答えた。崋山も少し怖かった。彼らも第16銀河の人達のように宇宙服は必要ないらしく、でも彼らと違って共通言語は聞き取れた。

 後ろの方に宇宙服を着た人たちがいるのに気付いた。その中の一人が、

「崋山?カサンドラじゃあないのか」

 と言った。崋山はその人をじっと見ると、なんだか自分の顔に少し似ている。依田家の一連の顔立ちとは違うタイプだから、日向レインらしい。

「カサンドラはズーム社に卵巣を取られて、崋山に改名しました。ペネロペも依田の祖父もズーム社の奴らに殺されました」

 ここで言う話でもなかったが、思わず親に会ったら言おうと思っていた事をぶちまけた。

「何だって、そんな事があったのか。だがどうして連合軍なんかに居る。この船に乗って良く無事だったな。さっきは外に居たから良かったが」

「色々あって」

 日向レインは、崋山を引っ張って抱き寄せた。

「連れて行かなくて悪かった。もう離さないからな。ママも後悔していて具合が悪くなっている。あの船に居るんだ。会ってやってくれ」

「あのう、せっかくですけど、傭兵契約が終わったら、地球に帰ってズーム社をやっつける予定なんで」

「それはパパ達がやる。あの会社は敵の奴らが入っている。敵を倒せばあの会社は元に戻る。もう良いんだ。さあママの所へ行こう。そこの二人も一緒に来なさい。

 それから、君たち。その鍵が見つかったのだから、燃料を運んで急いでここを離れるぞ。そろそろ敵機も来る頃だが、今回は退散だ」

「はい。了解」

 彼の子分は倉庫へ走って行った。

 崋山は父親に引っ張られて、彼の戦闘機に乗せられるらしい。双市朗達を振り返って見ると、それぞれ乗るらしい戦闘機の人に連れられて、後を付いて来ていた。

 崋山の奮闘はもう終わって良いのだろうか。そこで思い出した。

「ルークはどうしているかな」

 思わず口走ると、

「ああ、もう私たちの母船に乗っている頃だ。第7銀河の戦闘員も乗せたよ。彼らとは今後共同戦線を張る事になった。第16銀河の奴は最近敵に寝返った。逆に敵の中にも連合軍に寝返った銀河系もある。状況が変わってきている。敵が悪戸過ぎて自滅しかかっているよ。これから第7銀河の連合軍の基地に行って、今後の事を話し合うよ。そうそう、双市朗君。君は地球に帰ってもらうことになりそうだよ。噂では君の会社に連合軍が発注していた筈の物が出来上がらなくなっているそうだ。連合軍の基地に着いたらすぐお別れだね」

「わあい、やったぜ」

「ええっ、一人だけ辞めて帰るのか、ずるい。きっと双市朗が奴らとやり合うんだ。俺もズーム社とやり合いたいな。俺も帰って手伝った方が良くないかな」

「カサンドラ、さっきも言っただろう。お前はもうそういう事はしなくていいんだ。ママと暮らして欲しいんだよ」

「せっかくだけれど、その役は誘拐された子を見つけて、彼に任せる」

「何だって、当てでもあるのか。あ、もうこの話は船でしよう」

 そういう話になったが、父親の母船に向かいながら、崋山の心中は穏やかではなかった。どうすれば双市朗と一緒に地球に帰れるだろうか。カイにコンタクトしてみた。

『カイ、ひょっとして何か隠し持っている情報とかないかな』

『勘が鋭くなっているね。根拠がないから黙っていたけれど、崋山が困っているみたいだから言うけど、イメージがずっとあるんだ。12、3才くらいの男の子が宇宙服を着たまま、棺桶みたいなものの中に居て、宇宙船の外に放り出されるんだ。多分生きている時の事だろうが、棺桶じゃあ逃げたにしてはどうにもならない。じきに死んでしまうだろう。だから繰り返しイメージがわいていたけれど黙っていた』

『そうだったのか。話してくれてありがとう。と言うことは、もうがっかりだな』

 日向レインが本当のママは具合が悪いと言っていたから、本当の所は分かっているけれど、内密にしているのかもしれないと、崋山は考えた。カイやルークを敵が襲ったのも、もう一度人質が必要だったからかな。交渉の駒が無いのだから、奴らに有利な条件の提案はしてこれないだろう。そんな時に停戦したがるかな。向うにどれだけダメージが出ているかだな。そんな事を考えていると龍昂の母船に着き、本人が出迎えていた。

「あ、狐哲の爺さんだ」

 崋山は何だか胸がいっぱいになった。

 戦闘機を降りると、崋山は狐哲爺さんに飛びついた。

「会いたかったよ。狐哲のモデル爺さん」

「おお、そうかそうか、よく来たな。レインがお前の態度の違いにくさっとるぞ。仕方ないさ自業自得ってもんだ。名前を変えたんだったな。崋山だって。苦労したようだな」

「そうでもない。伯父さんたちの所に居たから」

「なるほど、レイン、崋山はもうお前たちの子ではないぞ。アンにもそう言い聞かせておかなければ。会わせる前にはっきりさせておかないと、この子が困る。これ以上困らせるなよ」

「そうですか。分かりました。崋山、無理を言ってすまなかったな」

「ううん。良いんだ。ただ、僕はペニーママの仇を打ちに帰りたいだけ」

 しかし、これには龍昂も。

「それは他の奴に任せた方が良いと思うよ。お前に敵討ちは合わない」

 と、止められてしまった。

「それなら、何が合う訳」

「お前のお婆さんはね、酷い大怪我や病気の人を直すことができたんだよ。お前にも出来るんだ。そういう方面の事をしてほしいな。私としてはね。殺戮とは縁を切って欲しい」

 そう来たか、と崋山は思った。だがズーム社に誓った復讐を諦めることが出来るだろうか。龍昂は悩んでいる崋山の事は置いておき、他の孫たちの相手をすることにしたらしく、カイ達の方へ寄った。ルークもいた。もう元気そうに見えた。弟はああいう風になって気を失い死んでしまったのだろうか。だがなぜ、みすみす死んでしまうような事をしたのだろう。それとも誰かに棺桶に閉じ込められ、外に捨てられたのだろうか。ズーム社をやっつける前に、やることが出来てしまった。このことを調べない訳にはいかない。ふと見まわすと、先輩たちも船に乗っていた。第7銀河の人たちも皆無事に乗っていた。忘れていたけれど、キースさんも誰かに乗せてもらっていたらしい。

 双市朗が班長に例の事を話している。

「そうか、それは良かったな。お前も不本意に傭兵になっていたのだから。第7銀河の基地は座標が決まっているからワープに時間はかからない。ひょっとすると、直ぐ帰ることになるかもしれないぞ」

 班長が言うので、崋山は、

「直ぐって、どのくらい直ぐなんですか」

「帰りの船の事は知らないが、ワープは数分のはずだ。皆ここに留まっているのはそのせいさ。どうせ直ぐに降りるからな。どうも、ここは居こごちが悪くてね。向こうには地球から行っている傭兵が結構居るから、俺らは心強いな。そのグループに入れてもらえる。今までに比べれば、楽勝だな」

「良かったですね。僕も入れてもらえますよね」

「なんだ。身内と一緒に暮らす訳じゃあないのか」

「僕の身内は他にも居るので。こっちの人たちとは、一線を引きたい事情があって、一緒には暮らせません」

「ふうん、訳ありなのか」

「そうなのです。ところで、日向さん。例の僕の弟を誘拐した船が、あの時どう動いたか調べたいのですけれど、第35銀河の船の名前とか知っていますか」

「ああ、それな。俺は覚えていないけど基地に着けば調べられると思うよ。ああいう事故は、後々停戦になれば保障問題があるから、ちゃんと記録されているはずだ」

「そうでしたか。良かった」

 双市朗は、言った。

「弟には線を引かないんだな」

「カイがイメージを教えてくれたんだ。弟がどうなったか調べる」

 日向は、

「だけど、お前の親父さん達がすでに調べているのではないかな。聞いてみたら」

「自分で確かめたいんです」

 また双市朗が、

「線の引き具合を感じるな。あまり意固地になるなよ。ママに会ってやって、優しくしてやれよ。一緒に暮らさなくてもな」

「分かっている。あの人が説明して、その後会うつもり。そのうち呼びに来るさ」

 ところがレインは直ぐにやって来ると、

「考えたのだが、崋山がママと暮らす気が無いのなら、ママにはカサンドラかと思ったが、人違いだったと言いたい。お前を見て、また自責の念に駆られて具合が悪くなりそうだ。すまないが、もしママを一目みたかったら、爺さんと基地を見物する事にしているようだから、着いたら遠くから見ていてくれ。すまなかったな。今、少し忙しくてね」

 そう言って、さっさと立ち去った。

「なるほど、一緒に暮らすと言わなくて良かったな。多分誘拐された子の代わりでしかなかったようだな」

 双市朗が言うので、

「お前ってホント、ぐさぐさ言うよな。でももうすぐ居なくなるんだった、あはは」

 崋山がくさっていると、

「でも崋山は癒しの能力があるのに会ったら、治るんじゃないかな」

 横からルークが言い出した。カイも、

「そうだよね、何だか変じゃないか」

 そうこうしているうちに、第7銀河の基地に着いた。班長や先輩たちは喜んで降りる準備に取り掛かっている。

「そういや、俺たちの戦闘機、置いて来てしまったよな。また支給してくれるよね。班長」

 崋山が訊ねると、

「そうだなあ、知らね。第一お前の相方は退役だし、ルークやカイはお前の爺さんにもう懐いているぞ。多分傭兵を辞めるんじゃないか。大体入る必要が無かっただろう。お前、急に孤独になったようだな」

「わあ、そんな感じだね」

 崋山は愕然としていると、ルークがそばに寄って来て、

「崋山のパパやママは、予知能力者のルイ・マーカスって人に傾倒していて、彼に言われた通りにするんだそうだよ。それで爺さんも困ることがあるって言っている。ママに崋山を会わせない方が良いというのも、彼の意見だそうだよ。なんだか変だな。僕らこの船に居ようかと思っている。カイもここで様子を見るって言っているから。それと、崋山の相方、居るみたいだから心配ないってさ。うふふ。」

「何だよ、分かっているなら教えろよ」

 崋山が問い詰めようとしていると、双市朗が血相を変えて言った。

「おい、崋山。俺の叔父貴がいる。どういう事だ」

「えっ、どいつだ」

「ほら、あ、今向こうに行った。見えなくなった」

 連合軍の皆は、降り始めていたが、崋山達は、

「追いかけよう」

 逆方向に走って行った。後ろから皆が、

「おーい、どうした」

 と、呼んでいるが、それどころでは無くなった。四人でドタバタ走っていくのをあきれて見送っている。

「ここを曲がって居なくなった」

 双市朗は追いかけながら説明した。

「お前が言っていたように、叔父貴であって、叔父貴じゃあないの意味が分かった。でも地球のやつはだんだん年を取っていたのに」

「どこかで入れ替わったんだろう。カイ、何処に行ったか分からないかな。アンドロイドじゃダメかな」

「いや、多分このドアだと思う」

 カイが立ち止まった。

「開くかな」

 自動ドアだった。中でこっちを見ながら銃の要なものを構えていた。崋山は思わず反射的に、素早い速さでビーム銃を撃った。

「やっちまった。命中しすぎか」

 双市朗が近づいて見て、

「うん、心臓命中。だけどほら、これが信号でこいつを動かしていたやつじゃないかな」

 指さすところに、ペースメーカー状の物が埋め込まれている。

「ふむふむ」

 皆でそれを眺めていると、龍昂の子分たちが、追いかけて来ていて、

「何をしている、あ、マーカスさんが殺された」

 と言うので、驚きだ。

「こいつは、敵のアンドロイドですよ」

 と皆で言うと、驚いて。

「龍昂さーん、お孫さんがアンドロイド壊しました。マーカスさんです」

 と、マイクがあるらしく、報告している。

 爺さんがやって来て、アンドロイドと崋山達を見比べながら、

「お前たちの知った奴と同じだったのか、やれやれ、あいつらもする事が大雑把だからな。こいつは泳がせていたんだよ。さっきルークやカイに話したときに、マーカスはアンドロイドだけど泳がせていると、言っておけば良かったな。これはお爺ちゃんのミスだった。今度からは隠さず全部話そう。まあ、私のミスだから気にするな。あ、別に気にしていない様だな、私が困った事になっただけか」

 龍昂はやけにしょげている。崋山は思い至った。

「分かった、爺さんはパパやママが騙されていると知っていて泳がせていたんだね。嘘の情報とか流すのに皆同じ情報レベルにして置いたんだ。そういう事前もやって気まずくなっていない?」

「孫っていうのは、遠慮なしにグサグサ来るねえ、良いんだよ。言いたいこと言えば」

 ドアの外から話し声がした。ルルだ。

「マーカスさん、敵のアンドロイドだったのですか。じゃあ神崎双市朗さんが知っていた顔だったのですね。彼は連合軍に、盛んにズーム社が[神崎部品]を乗っ取ろうとしていると情報をリークしていたそうです。それで急遽双市朗さんは退役で、迎えのシャトルが来ていると言う連絡が来ました。でも見つかったから、画策は無駄でしたね。帰るでしょう、双市朗さん、後30分後出発だそうです」

「あったりまえです。マーカス、恩を仇で返しちまったな。残念だったなあ」

 双市朗は、そう言いながらアンドロイドの頭を足で小突いた。そして、

「それじゃあ、俺は急がなきゃ。皆さようなら。崋山、世話になったな。ルルさん何処へ行けばいいのですか」

「案内します」

 双市朗は別れを告げ、あっけなく崋山の元から立ち去ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る