第4話  新しい友との出会い、そして家族との別れ

 崋山は案内ロボットのTY21番さんに案内されて、今回雇われた地球人の傭兵グループのところに行く事になった。

 集まりが少ないと言ううわさどおり、まだ二人しか居ないそうだ。崋山を入れて三人になるが、案内係のTY21さんの言う事によると、戦闘機は二人一組で乗ることになるので、訓練の時一人あぶれるから、どうするか検討中だそうだ。もうひとり入ると良いな、とロボット仲間も言っているそうだ。入隊が三人ならロボットが代わりに入ることになるかもしれないと噂していると話してくれた。

「ロボットさん達は訓練に付き合いたくないの」

 崋山が聞くと、

「そりゃあ、自分の仕事していた方が楽ですよ」

 ロボットさん達は明らかに生命体では無い造りなのだが、言っていることはやけに人間くさいので、ズーム社はアンドロイドに、人間くささをなぜプラスしないのか不思議に思った。そして、そうか、そういう技術が無いんだ。と、思い至った。崋山はズーム社の未熟さを垣間見た気がして、嬉しかった。

「ここが地球人の新人さんたちが待機している部屋です。軍の迎えが来るまではここで皆さん、ホログラムでオリエンテーションを受ける事になっています。依田さんは来られたばかりなので彼らのホログラムとは別物になります。用意してきますので、それまで皆さんと自己紹介などなさっていて下さい。では」

 と言ってTY21はドアの前まで案内して去って行った。

[では]だって、ロボットは連れて入って取り成したりしないんだな、人間とは違ったなと感心したものの、崋山はこういうのは苦手で気まずい気がしながら、ドアを開けた。

「ちわ」

 部屋に入って見渡すと、ホログラムで二人とも敵らしいやつと取っ組み合っていた。ここのホログラムは、実態感もあるらしい。面白そうだなと思った。

「やっと三人目が来たんだな」

 二人ともホログラムのスイッチを切って出ると、笑顔で自己紹介してきた。神埼双市朗、ルーク・メイソンと名乗った。崋山も自己紹介した。

「もう直ぐ、迎えが来るらしいけど、戦闘機訓練どうなるのかな」

 とメイソンが言う。ここでもその話題だ。神埼が、

「なんかコンビ組むのには相性とか有るらしいけど、三人じゃ合うも合わないも無いよな。もしかしたら、実戦になったら、先輩と組むのかも知れないけど、それもなんだかいやだな。威張られそうで」

「ふうん」

 崋山はそういうものなのかなと二人の話を聞いていた。

 すると、ドアが開いて、21番とは違うロボットさんが、

「依田さんに面会です。どーぞ」

 と、やけににやついて後ろに下がった」

「かーざーんっ、あたしたちやって来たわよっ。お誕生日まだ一週間あるけど、おめでとー」

 なんと、マナミとシオンの登場である。なにやらプレゼントらしきものを持って来ていた。

「えっ。来ていいの。ここに」

「パパか一緒に居たいから、来てって」

「ママもここで落ち合うことになったの。そして一緒に帰るんだって。どうしてかしら。あんた事情知ってる?知ってるような感じするのよねえ」

「何でさ。知らないよ」

 そう言うしかない。しかし彼女らは感が良いので、なおも追求しようとマナミが口を開けたところで、後ろに控えていた女性の格好のロボットが声をかけた。

「マナミさん。もう直ぐ出航になりますので私は仕事に尽きますから、お早くお願いします」

 何をお願いするわけ、とほっとしながら崋山はマナミたちを見た。

「あ、そうなの。じゃあシオン始めちゃう?」

「そうね、あら、なんだか見物人が来たわよ。TY35さん、だれかにしゃべったの」

「いえ誰にも話していません、ですが、私たちシステムで繋がっていますから」

「あらら」

 といいながら、シオンはバックから猫じゃらしを取り出した。

 ???崋山がぽかんと見ているとマナミが説明した。

「このTY35さんは、私たちの護衛に崋山が居なくなってから来たのよ。それでね、ロボットさん達はねえ、本物の歌手の歌声で歌えるのよ。伴奏も出してね。そこで私たちは思いついたの、ユニットを三人で組んだのよ。S&M&TYよ。音楽スタート」

 崋山は噴出しそうになったが、三人は真剣だ。見物人が増えてきたせいかな。

 音楽が鳴り出すと、マナミは妙なしなを作り出し、シオンは猫じゃらしをきつい顔をして振り出す。鞭のつもりかな、猫じゃらしって知っているのかなあ。丁度二人の名の頭文字はSとMだからこれは前から考えていたネタと思うけど、見物人は想定外だろうと思って笑わずに見ていようと思った。

 二人ともロボットさんと一緒に歌いながら妙な踊りを踊り、興に乗ってTY35さんは2番を歌いだした。この歌は何番まであったっけ、長丁場である。あきれて見ている崋山の後ろに、いつの間にか伯父さんや伯母さんが来ていた。伯母さんは娘たちの踊りにはかまわず、

「崋山、とんだ事になったわねえ。伯母さんが居て用意してやらなかったばっかりに、Tシャツを忘れていたんでしょう。あのシャツさえ着ていればと思ったら、伯母さん情け無くて仕方ないわ。あなたにもしものことがあったら、あなたの事を思いながら殺されてしまったペネロペさんに申し訳なくて、ホントにホントにどうしたものかと思っているのよ」

「伯母さん心配しないで。まるで僕が死んじまうって決まったような言い方だね。死ぬつもりはないよ。あいつらに仕返しするまではね」

「そうよね、ごめんなさい縁起でもないこと言って。それからね、言っておきたいことがあったの。連合軍に入ったらもしかしたら、あなたと血のつながりのある人達に会う可能性があるのよ。もしかしたら、疎外感なんか感じて、つらい思いをするかもしれないと思って、それも気がかりなの。それでね、何があっても私たちや、無くなったペネロペさんがあなたの家族よ。そこのところを、つらい事があった時は、思い出してほしいの。きっとよ。私の姉の事知っているでしょう。考え違いをして自分から不幸になった人よ。あなたは利口だから、大丈夫と思うけど、当分会えないから心配になるの。みんなあなたのこと、愛しているから、信じて待っているからね、頑張って、帰って来てちょうだい」

 伯母さんは感極まって、泣き出したが、横ではその娘たちがちんみょうな踊りを続けていて、なんだか混沌としてきた。

 そしてやっと終って見物人達から拍手をもらい、シオンなどは真っ赤になって、恥ずかしがっているとマナミが、崋山に向かって、

「何だか大恥かいたような気分ね」

 いや。気分じゃなくて、事実なんだけどと崋山は言いかけがマナミは続けて言い募った。

「崋山も責任とって何か歌いなさいよ。これじゃあ割が合わないわ」

 なんとも勝手な言い分である。

「あんたらのユニットに俺の責任は無いと思うけど」

 と、拒否するが、シオンも、

「次は崋山が入って、T無しのユニット、つまり35番さんのトークなしで、KYSMよ。わかる?空気読めないサドとマゾ。行くわよっ」

「俺、行きたくない」

「やれ、やれ、崋山」

 同室になったばかりの、二人が勝手な野次を飛ばし出すし、見物人は拍手し出すし。マナミに引きずられて前に出された。

「やめようよ。歌とかずっと歌ってないし」

「じゃあ、踊る?」

「歌います」

「でしょ、前に良く歌ってたやつがあるでしょ。あの曲の踊りも、考えて練習したの。35番さん『紫』音楽スタート」

 卒業の時、謝恩会で歌った事があった。崋山はあきらめて歌った。音楽の先生に唯一ほめられた思い出の曲だ。二人はよく覚えているなと思った。

 それなりに歌い終わると二人はプレゼントを持ってきて、崋山に飛びついて、

「お誕生日おめでとう。次の誕生日も祝えるよね。次もずっと」

「ありがとう。そのつもりだよ」

「これは例のTシャツ、これからは、いるでしょ」

 出かける時心配していた、マナミらしいプレゼントだ。

「これは『共通言語、あなたもきっと一週間でマスター』のテキストセットよ」

 シオンも気の効いたプレゼントをくれた。

「それ本当」

「注意書きに『個人差があります』って書いてあるけどね」

「さあさあ、お開きだ。皆仕事に戻れ」

 誰か知らないけどありがたいお言葉を叫んでいる。もう少し早く言って欲しかった。

「ありがとう、心配しないで良いよ。僕、死なないから。伯母さんも心配していたけど、死ぬ気がしないんだ」

「そうよねえ、あたしたちも崋山がしくじる気がしないのよ」

 マナミが言った。

「ははは、そんなに買いかぶらないでよ」

 どうせ帰りのシャトルで、予想に反したしくじりを耳にするはずだ。

「まもなく、本部行きのシャトルが出発します。乗られる方がおられましたら1番ゲートへお越しください」

 ロボットさんが知らせに来て、いよいよお別れだ。

 TY21番さんが、ホログラムの用意をしていたので、

「僕は送れないから。今からオリエンテーションが始まるんだ。ここでさよならだよ、みんな元気でいてね」

 そう言って崋山は4人に別れを告げた。

「そうか、じゃあ皆、もう行こう。頑張れよ、崋山」

 みんな目に涙を浮かべて、姉妹は手を振りながら口々に別れを告げて、出て行った。

 見物人も居なくなると、メイソンが

「いい家族だねえ、崋山。うらやましいな」

 どうも訳有りな様子だ。

「うん。だけど、あの人達は伯父さんたちで、あの子達は従姉妹なんだ」

「血の繋がりなんて問題じゃ無いよ。家族って、心の繋がりだと思うよ」

 神埼も、

「そうだな、俺もメイソンも、あまり家族には恵まれていないよな」

「そうなの、何だか二人とも訳有りの身の上みたいだけど。俺も実の親については訳ありなんだ」

 へえっと、三人が顔を突き合わせて話が盛り上がりそうになったところで、まだそこに居たTY21番さんが

 咳払いをしながら、

「皆さん、まだ勤務時間が終っていません。先ほどのお嬢さん方のセッションが30分ほどありましたので、今日は30分長くなりますから。お二人は途中までの訓練を終えてください。依田さんはこのホログラムを始めてください。お二人はご存知かも知れませんが、依田さん、勤務時間中はあちらの監視カメラが作動しています。サボらないで下さいね。それから先ほどのお嬢さん方の記録をコピーしましたから、ディスクを持ってきましょう。では、始めていて下さい」

「うわーい、気が利くねえ」

 神埼が喜ぶので、21番さんは、

「依田さんのディスクです」

 と言い添えて、出て行った。

 崋山はオリエンテーションのホログラムをセットし、共通言語で説明してあるので、シオンからもらった中に有った翻訳機を片手に取り掛かった。このホログラムには、連合軍の組織の説明、歴史、戦争の始まりと経過、連合軍の規模と配置、敵の規模や判っていること。そんな内容が、次々に現実の世界を覗くように映し出された、そして以外だったのは、地球人の中でとある新人類の立ち位置。彼らはこっちの味方と言うわけでもなく、この辺りに居る訳ではないから良い様なものの、連合軍と一戦を交えている。ショックだったのは彼らの中に父親の名があった事だ。宇宙船に必要な金属を巡って三つ巴の戦いらしい。崋山はあきれたが、どうもかなりレアな金属で、それを使った燃料がないと他の銀河系までのワープが出来ないらしい。戦争の原因はこのレアな金属の取り合いって事で、バカらしくて気分が悪くなった。話し合って分け合えよっ。だがこの意見が通用する相手ではないのだろう。

 そんな翻訳機片手に、ホログラムを見ている崋山の悩める様子を見た、神埼とメイソンは噴出し、

「なんだ、おまえ共通言語が判らないのに、よく連合軍に入る気になったな。あはは、どうするんだ。一週間もかからず、迎えは来るらしいぞ」

 と神埼が言うと、メイソンも、

「それにマスターには個人差があるって書いてあるし。どうなんだ?自分では利口だと思ってる?」

 崋山は涙目で、

「仕方なかったんだよ。連合軍に入るしかなかったんだ、敵のアンドロイドと会って、アンドロイドだって分かったことを、知られて命を狙われているんだ。それに副司令官を狙い撃ちして敵の手に渡す手助けまでして、とても、地球の軍には居られない」

 神埼曰く

「そりゃまた、やっちまったなあ、俺より上手は居るもんだな。おれは、同期のやつを、ヤッタんだけど、正当防衛なのに、なぜかその時、監視カメラが壊れて写ってないんだ。そんな調子のいいことあるかな」

「それは何処であったこと?」

「地球だけど」

 崋山はふんっと言い、

「そりゃ、たぶんズーム社のシステムだろ。お前、やつらの気に障ることしてないか」

「気に障るというか、俺、父親がシステム会社をこじんまりやってたんだけど、脳卒中で急死して急きょ退役してそこの社長になる予定だった」

「ふん、予定は未定になったな」

「うん、今は親父の弟が社長になっている。殺人者は社長にはなれないって規則だそうな。正当防衛なのに。その時、証言してくれるはずの目撃者もいたけど、なぜかそいつは頭に上から鉄パイプが落ちてきて、今も意識が戻っていない。で、俺もまた狙われそうで、ここに逃げてきた」

「ふむふむ、で、メイソンは何したの?」

「俺は何かしたわけじゃ無くて、いかれた弟に命を狙われているんだ。弟を兄殺しにさせたくないから、ここに入ったんだ」

「ほう、違うパターンだな。くわしく聞きたいな」

 神埼も、

「何だか聞きにくかったけど、崋山がはっきり聞いてくれたんで良かった。燻っていることは言っちまった方が良い」

 そこへどこからかブザーが鳴りだし、

 神崎は、

「しまった、まだ12分残ってら」

 で、おしゃべりはやめるしかない。

 すんでから話そうぜとなったものの、きっかけもなくそのまま数日が過ぎた。

 ホログラムの戦闘機訓練が始まり、三人は交代でコンビを組む事になった。しばらくするとどうやら崋山が主で神崎が副の組み方が一番成績が良いことが分かってきた。そうなると、メイソンは妙にくさってくる。

「やりにくくなってきたな。なんだよメイソン。三人しかいないんだから、仕方ないじゃないか。変だぞお前」

 神崎も不機嫌になってきた。崋山はまずいなと思い、この前中途半端に終わっていた話を蒸し返すことにした。

「そういえば、メイソンは何か訳ありなんじゃなかったかな。何か思うところがあるなら言ってみろよ。コンビのこととは別物の原因があるんじゃないのか」

 神崎もそうだったと思い出し、

「そうだったよな。話せよ、なんか有りそうだとは思っていたんだ」

「そうだな。俺、別に能力無いけど、本当は新人類の親から生まれたんだ、だけど普通の人間だった。そういうこともあるんだそうだ。俺の親たちはテレパシー能力があって、他の新人類達とは一線を引いていた。テレパシーで会話し合うだけじゃなくて、他のやつが考えていることが分かるんだ。テレパシー能力の無いやつが、考えていることもね。それで疎まれていて、ほかの新人類達とは、別行動することになったんだ。連合軍の、コロニーの一画にテレパシー能力者だけで集まって、暮らすことになった。俺の一家もそこに居たんだけど、テレパシー能力の無い俺が生まれたんだ。長男でね」

 メイソンの幼い頃の回想が始まる。

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