第4章 灼眼虎狼編
番外編 ここから作品をお楽しみいただく方へ
以下の文には「半身転生」の第236話までのネタバレを含みます、というかそれでしかないです。
この話はあくまでも、「そんなに読むのしんどい! ここからでいいか~」と言う人や、「なんかいろいろと忘れた」と言う人向けになっています。
作者的にはもちろん普通に読んでほしいですし、特に「第3章 大公選編 烏鷺相克~」はマジのガチでおすすめなので、そこからでもオネシャス。
知らん、あらすじだけでええんや、という人だけ、この先にお進みください。
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【あらすじ】
都内の大学に通う大学1年生の主人公、
気が付いた時、彼の目の前には神を自称するおかしな奴が、そして隣には、魂が分裂したもう一人の自分がいた。
「どちらが異世界に転生しますか?」
理不尽極まりない経緯で異世界転生を果たした彼は、偶然、出会った貴族のボンボン冒険者のノエル・クレスト、リーゼ・クラークと出会う。
初期からかなりハードモードな異世界で、彼は生き残り、生活することを最優先にしつつ、「元の世界に帰る」ことも忘れずに生きていくのだった。
【人物】
アラタ・チバ(千葉新)
→本作主人公。
高校生の時は野球で甲子園に2度出場、エースとして活躍し世代ナンバーワン投手の呼び声も高かった。
しかし、投手層の薄い世代で一人投げ抜いた代償は高く、彼は肘を壊し、手術を受けることとなった。
そして一連の騒動の中、無関係の人間による誹謗中傷に嫌気がさし、野球をやめて普通の大学生となり今に至る。
運動能力、観察力、人間性、基本的にハイスペックな人間であり、何でも高いレベルでこなすことが出来るが、学校の勉強は例外。
ノエル・クレスト
→クレスト公爵家の一人娘にして、Bランク冒険者。
Bランクは、舞台となるカナン公国では現役最高位の等級であり、クラスは剣聖を持つ。
高い戦闘能力を獲得した半面、クラスの呪いで家事能力が著しく低下した。
ただ、幼馴染のリーゼ曰く、「元々大してできないのだから、そこまで変わらない」らしい。
黒髪に赤い瞳を持ち、平時はポニーテールにまとめている。
リーゼ・クラーク
→クラーク伯爵家の長女、兄が二人いる。
クラスは聖騎士であり、高い戦闘能力と指揮能力に長ける。
公国内で確認されている治癒魔術師は3人しかおらず、その内の一人。
ノエルのお目付け役という名目だが、彼女自身かなり抜けているので、実際にはアラタが二人のおもりをする形になっている。
ウェーブのかかった金髪に、通りかかった男性が二度見するくらいのプロポーションを誇る。
クリス
→元奴隷の、クラス盗賊を持つ女性。
アラタとはレイフォード公爵家で面識を持つようになり、同家の物流事業部特殊配達課から彼と行動を共にし続けている。
奴隷から掬い上げてくれたエリザベス・フォン・レイフォードとは家族同然の繋がりであり、家族愛にも似た強い愛情を持っている。
彼女の職務経歴は、武装メイド→特殊配達課→黒装束(アラタと2人だけ)→八咫烏(第1小隊副隊長)
シル
→家事に関する妖精、シルキー。
ノエル、リーゼ両名のお世話に奔走し、疲弊していたアラタの負の感情が屋敷を依り代に顕現した形となる。
親であるアラタと知識や記憶の共有をすることが可能であり、急速な成長はそこから来ている。
魔力を媒体に生まれた存在だが、いつの間にか肉体を持つようになり、食事もとる。
見た目は金髪でアラタとは似ても似つかぬ容姿の幼女だが、性格は少し似ている。
エリザベス・フォン・レイフォード(清水遥香)
→レイフォード公爵家当主、クラスは商人。
次代の大公を決める選挙、大公選の最有力候補であり、アラタの想い人。
アラタの一つ上、つまり21歳にして大公になろうかというほど、急速に影響力を拡大してきた。
その正体は千葉新の元の世界の恋人である
美しい容姿を持ち、広い人脈と明晰な頭脳で大公選を有利に進めていた半面、裏では口に出すことも憚るような残虐な行為に加担、指示を下していた。
【とてもネタバレ(結構重要事項が飛び出します)】
ひょんなこと(実際には仕込みあり)でエリザベスと接点を持つようになったアラタは、元の世界の彼女と似ているエリザベスに惹かれていく。
とはいっても当時はまだ仲の良い友達程度で、特に恋愛感情はなかった。
しかし、同時期に剣聖の人格が不安定になったノエルが、クエスト中にアラタのことを傷つけてしまう。
背中をバッサリ斬られたアラタは、それでもノエルのことを気遣っていたものの、周囲の勧めもあって彼女とは距離を取ることになった。
賢者ドレイク、リーゼの叔父である聖騎士ハルツらは、大公選でノエルの父親であるシャノンが勝つために、アラタをスパイとしてレイフォード家に送る。
自分のせいでアラタが出て行ったと思い込んだノエルは、周囲の声に聞く耳を持たずに塞ぎ込み、立ち直るまでしばらく時間がかかった。
一方その頃アラタはスパイ活動をする気なんてさらさらなく、エリザベスとの楽しい仕事の毎日を過ごしていた。
そして元々エリザベスに気のあったアラタと彼女は惹かれ合い、恋に落ちた。
よかった、めでたしめでたしとならないのがこの世界、アラタはすぐにレイフォード物流事業部特殊配達課、通称ティンダロスの猟犬に異動と相成った。
くっそー筆頭執事の野郎、俺のことを飛ばしやがって、そう思い仕事の合間を縫って彼女の元へ通い詰めるアラタ。
そこで、彼は思い出す。
自分はスパイ活動をするためにここに放り込まれたのだと。
目の前には、ノエル暗殺を依頼する旨が記された暗号文書が。
特殊配達課での非合法な活動もあり、彼は様々なものを秤にかける。
エリザベスへの想い、仲間だったノエルの命、正義、悪、大公選の行方、良心、そして彼は特殊配達課を脱走、エリザベス殺人未遂という濡れ衣を着せられて逃走するに至った。
それから彼は、魔術の師である賢者アラン・ドレイクの庇護のもと、彼の手となり足となり東奔西走した。
その間にも、特殊配達課が口封じのために消され、クリスだけがアラタの介入で生き残り、黒装束としてドレイクの命令を実行した。
隣国ウル帝国からの工作員であるリャン・グエル、キィ両名も加え、黒装束は4人体制となり、引き続きクレスト家派閥の尖兵として暗躍する。
レイフォード家派閥の家を潰したり、剣聖の力をコントロールするために辺境を訪れたノエルを餌にして敵を殲滅したり、派閥の抗争を止めたり。
やがて、最後の任務を前にして、ドレイクはある組織を結成した。
その名も
34名からなる諜報機関は、北のタリキャス王国、南東のエリン共和国、そして東のウル帝国へと散り、レイフォード家不正の証拠を集めに動いた。
八咫烏総隊長兼、第1小隊長のアラタは、複数の小隊を率いてウル帝国に潜入、無事目的である同家不正の証拠をこれでもかというくらい掴んで帰還した。
そうして挑んだ大公選本番、紆余曲折あったものの、初めからクレスト家が勝つことは分かっていた。
大公選が終わり次第、内乱に突入する危険性はあったが、敗者のトップであるエリザベスが火消しを行い、これは回避される。
不正に加担したエリザベス初め貴族の面々は拘束され、ノエルの父親が大公となり、権力争いの終止符が打たれる。
そう、そのはずだった。
アラタやクリスの目的は一貫してエリザベスを助けること。
大公選で彼女が勝ち、ウル帝国の支配を許せば、いつか彼女は消される。
かといって大公選で大敗し、数多の不正の証拠がある以上、極刑は免れない。
八咫烏第1小隊は暴走し、エリザベスを留置場から連れ出して西の未開拓領域へと逃げて行った。
4月1日に大公選が行われて、逃走したのが2日。
それから4日までの実質たったの3日間。
逃走しながらも、アラタとエリザベスはお互いの愛を確かめ、再会を喜んだ。
クリスも彼女と共にありたいと申し出て、辺境で静かに暮らす夢は間近まで来ていた。
しかし、迫りくるのは希望だけではない。
4月5日、小隊はユウと名乗る白髪の男の襲撃を受ける。
彼は、以前アラタをダンジョン内部で斬り殺した人物だった。
その圧倒的な実力差から、当初は逃げの一択だと思われてきた。
しかし、彼の追跡を躱し切る方が無理があるということで、アラタとクリスが迎え撃つ。
(この辺り『烏鷺相克』)潜伏や戦闘中断も含めれば2日間に及ぶ激闘は、立ったまま気絶し、膝をついたアラタを確認したことで終了する。
表には出ていないが、公国内部でも指折りの強さを持つ彼が敗北したことで、ユウが勝者となり、敗者は全てを奪われる。
そう、最愛の人さえも。
最後の時間を過ごす許可を与えられ、アラタとクリスは檻の中にいるエリザベスと面会をする。
その最中、エリザベスから衝撃の告白が飛び出した。
実は、時折自分は元の世界に渡り、アラタともう一人の自分のことを見ていたと、突然そうカミングアウトした。
彼女が清水遥香の半身であることは逃走中に聞いていたが、アラタの中で全てのピースがそろう。
彼女は楽しい人生を送り、好きな人と付き合っていて、何不自由ないもう一人の自分を恨んでいたのだ。
あらん限りの嫉妬、羨望の言葉を吐き、彼女は別れを告げる。
だが、アラタもそれは何となく察していた。
彼女が善人ではないと、何かを隠していると、清い人間ではないと、知っていた。
それでも言い出せなかったのは、今の生活が幸せだったこと、そして何より、それでも彼女のことが好きだったから。
ずっと愛しているとアラタは言い、彼女もそれを受けて最後の愛を伝える。
そして、ユウによる最悪の仕掛けが動いた。
エリザベスは、人体改造により魔物となり果てた。
脳みそをカニみそよろしくシェイクされたような衝撃に、アラタの思考は停止する。
リャンは自分たちを神ではないと言い、キィと共に魔物化したエリザベスを殺そうとする。
当初反対し、動けずにいたアラタだが、彼は覚悟を決めた。
「君を、ずっと愛している。おやすみ、エリー」
そう言うと、動けなくなった魔物の首を刎ねたのだ。
最愛の人を手に掛け、アラタは生きている意味を見失う。
失意の内に亡骸を荼毘に伏し、彼はクリスと共に復讐に出た。
手始めにレイフォード家相談役を血祭りにあげようと首都アトラに帰還、不正事件でもぬけの殻となった本家屋敷を襲撃する。
そこで見たものは、拘束された相談役たち。
結局は彼女たちも、駒の一つに過ぎなかったということだ。
相談役が次々と爆死していくころ、レイフォード家とダークサイドで深い繋がりのあった人間たちが謎の不審死を遂げる。
そこでアラタ、クリスはエリザベスから特殊配達課の全員に宛てた手紙を見つけ、自分の分を読む。
そこで、彼は復讐を諦めた。
大公就任による恩赦は出ないが、エリザベスを仕留めたアラタやクリスは無罪放免となる。
そしてドレイクの家で抜け殻のようになっていた彼の元に、元仲間のノエルとリーゼが訪ねてきた。
ノエルの保護者的立場のリーゼと、アラタの保護者を気取っているクリスは真っ向から対立、取っ組み合いの喧嘩までしてリーゼは出禁になる。
剣聖の力の掌握に成功し、もう暴走の危険性はない彼女が、アラタにもう一度仲間として冒険者をしようと誘いかけた。
しかし、如何せんタイミングが悪すぎる。
しつこく勧誘するノエルに対し、アラタはついに近づくなと刀を向ける。
それでも、裏表のないノエルの言葉は、アラタの心を内側から溶かしていく。
「ごめん。今まで、ごめん」
エリザベスを殺し、自責、後悔の念に苛まれていたアラタは、ノエルの優しさに泣き崩れた。
結局は元のパーティー+クリスが収まる形となり、大公就任式を迎えた。
大歓声が上がる中、離れた場所でアラタは一人エリザベスの墓前で涙する。
「生きる理由はまだ分からないけど、俺がいないと寂しいって言ってくれる子がいるんだ。他にも俺のことを必要としてくれる、俺が必要としている仲間がいるんだ。だから、俺はもう少しだけ、この世界で生きてみることにする」
清水遥香を利用した、エリザベス・フォン・レイフォードという物語の舞台装置として、アラタは異世界転生した可能性が高い。
その役目を終えた今、彼には本当にやることも、求められていることも無い。
だが、だからこそ、彼がここから何をするのか、何を為すのか、それが楽しみでならない存在が、少なくともここに一人。
もう一つの物語が、今始まった。
【話のまとまり】
第1章 黎明編
1~9話:転生直後から巻き込まれた事件が完了するまで
第2章 冒険者アラタ編
10~55話:冒険者として生きていく主人公、その苦難の記録
56~67話:命を懸けた死闘と、その果てに得たもの
第2.5章 過去編 case Arata:
68~70話:高校生の新が、野球をやめるまで
第2.5章 過去編 case Noel and Liese:
71~83話:ノエルがクラスに目覚めた直後
番外編:ここまでのまとめ
第3章 大公選編
84~93話:アラタがノエル、リーゼの元を去るまで
94~114話:特殊配達課に配属、後に出奔するまで
115~126話:クリスと2人で活動中、影武者が処刑されるまで
127~135話:敵派閥に属する敵を壊滅
136~145話:派閥内の抗争を鎮圧
146~161話:秘密裏にノエル護衛、敵勢力の撃滅
162~164話:清水遥香転生の真実にほぼ辿り着く
165~187話:八咫烏発足、ウル帝国潜入終了まで
188~196話:大公選開始から終了まで
197~205話:首都からの脱出に成功、転生の真実を知る
206~218話(烏鷺相克):作中一番の激闘。アラタvsユウ決着
219~222話:エリザベス死亡まで
223~229話:ノエルに再開するまで
230~236話:仲直りし、大公就任式中に墓参り。墓前で愛を誓う
【作者から】
ここまで読んでいただきありがとうございます。
長かった~と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、内容にしたら1,035,160文字らしいです、大目に見てください。
1,035,160が6,000文字に、実に1/172.53!
これもう奇跡としか言えないでしょ。
作者的には、アラタ・チバという主人公は今までただの舞台装置にすぎませんでした。
多分書くことは無いんですけど、清水遥香の人生があって、その脇役として彼が出てきたイメージです。
だから異世界の彼女が死亡した時点で彼のロールはおしまい、クランクアップとなったわけです。
じゃあその後どうするの? っていうのがこれからの話になるわけですが、ある程度構想も書き溜めもしてあります(およそ20話)。
ここからは本当に彼の人生がメインになって来るので、何を目指して、何がしたくて、誰としたくて、みたいなことを見つけられたらいいな、と思っています。
長くなりましたが、まだまだ作品は続きます。
ここまで読んでくれた方には感謝の気持ちしかないです。
だってなっげーし。
200話以上も読むの大変なので、気になった方は第4章からでもぜひお読みいただければ幸いです。
では。
片山瑛二朗
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