人の暮らし

比夜しらす

第1話27歳会社員女性の日常

「お疲れさまでした。」


パソコンの電源が切れたのを確認し、身の回りのものを手提げに仕舞い込んで席を立つ。

ロッカールームまでの間、すれ違う人たちに会釈をしながら頭の中ではこの後の予定を組み立てていく。


時刻は20時の少し手前。帰りに駅ナカの惣菜店に寄れば値切られたお惣菜が手に入りそうかな。冷蔵庫に週末飲みそびれたクラフトビールがあった気がするから、それと合うものを買いたいところだ。とはいえ、今日も蒸し暑から揚げ物は嫌だな。


ロッカーから通勤用の鞄を取り出し、備え付けの鏡で身なりをチェックしてから会社を出る。エントランスから一歩外に踏み出して、私の仕事モードは終了だ。


周りにはスーツ姿の男女がちらほらと駅に向かって歩いている。帰宅ラッシュ帯は少し過ぎているようだ。駅に着く頃には20時を少し過ぎていて、駅ナカはそれほど混雑していなかった。


ぐるりとフロアを一周して今晩のご飯を品定めする。

あそこの稲荷寿司、好きなんだけどわさびは売り切れか。…お、大ぶりのシュウマイ美味しそう。


「シュウマイ、3つください」


手にした袋はほんのり温かくて思わず頬が緩む。その他に湯葉と水菜の和風サラダと枝豆が入ったさつま揚げを購入して帰宅した。


時刻は21時12分。買ったものをキッチンに一旦置き、手早く入浴の準備をする。

ご飯を食べた後、「動きたくない…お風呂めんどくさ…」な現象を避けるために私はご飯の前にお風呂に入る派だ。面倒ごとはなるべく先に済ませたいのである。


入浴後に冷えた水を飲みながた惣菜を温め直し、買った容器のまま机に並べる。昨日少しだけ残ったほうれん草の胡麻和えも冷蔵庫から取り出し、食卓は出揃った。


「いただきます」


手を合わせてからクラフトビールの栓を抜く。グイッと一口、強過ぎない刺激とビール独特の苦味。ああ、生きてるな。

ベジファーストを意識して、サラダに手を伸ばす。さっぱりとした柚子がきいたドレッシングにカリカリのジャコがアクセントになっている。温め直したシュウマイにからしを少しのせて一口。うわ、肉厚で美味しい…。お腹が温まるのを感じる。さつま揚げも優しい甘さでホッとする味がした。合間に流し込むビールにどれも合っている。


「今日も一日、お疲れ様でした。」


ご馳走様、また明日も頑張りましょう。

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