幸せの条件

「加瀬さん…あのさ、この後打ち上げやんだけどどう?」


 文化祭後、解散になったのだけど、なんとなく皆残って駄弁っている時間だった。


 演技終了後雨で慌てて撤収になったけれど皆興奮冷めやらぬ。って感じでクラスの男子中心に打ち上げが企画された。


 私を誘ってきたのは企画した男子の中でも中心になっている人物だった。


 私と目を合わせたと思ったらすぐに逸らしたり。しきりに鼻をかいたり。挙動不審だった。


 あんまり話したこともなかったんだけどな。意外。


 彼の挙動もそうだし、彼と少し離れたところから彼の友達がにやにやこっちみているし。十中八九、私に気があるんだろう。


 その時の私は半分投げやりになっていたと思うし、なんだか自分を見ているようで可愛く見えたのもあるんだろう。


 今まで振り回されてきた分、振り回す側もいいかもしれないと思っていた。


「打ち上げ?いいよ。誰が来るの」


「え!いいの!?あっえと。ほらそこにいる俺の友達3人と、あと女子も何人か誘うよ!」


 女は愛されている方が幸せってよく聞くし。


「やったぁ!うわっ超楽しみ!あ、お金は男が出すからね!」


 こんなに喜んでくれているし。


 きっとこの人を好きになれば私は幸せになれる。


 ポケットでスマホが揺れる。画面を見ると圭吾からLINEだった。


 ──遅いよ。


 私は内容は見ないでスマホの電源を落とした。

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