文化祭─大田圭吾視点─
おさげで眼鏡のオタク女子
俺は久しぶりに入る学校を走り回り、夏海を探していた。もう文化祭は終わっているが、アパートに帰ってきてないので会いにきたのだ。
俺は夏海に伝えたいことがある。
しかし、俺は夏海のクラスを知らない。1年生の各教室に入っては夏海を探して、いなかったら近くの生徒に加瀬夏海を知らないか聞く。その繰り返しだ。
その繰り返しで、1-3を訪ねた時だ。
見渡しても夏海は居ない。
ちょうど扉の前に立っていたおさげでメガネのオタクっぽい女子に話しかける。
「ごめん!加瀬夏海ってしってる!?」
オタク女子はぽかんと口をあけている。もうこの反応にも慣れた。心当たりはないのだろう、と判断し踵を返そうとした時だった。
「あっ!まって、しってる…夏海ちゃんでしょ?」
「ほんとう!?今どこにいるかとか──」
俺の質問は遮られた。
「あんた!!さては夏海の王子様?」
「は?…って!まさか噂のおさげでメガネのオタク女子!?」
──夏海の話によく出てくるクラスメイトの。
「私のこと知ってるの?…でも、やっぱりそうか!もう遅いよ!!夏海ちゃん行っちゃったわよ!早く追いかけなさい!」
「ど、どこに!?」
「駅前の焼肉屋よっ!歩いて行ってるはずだから走れば到着前に間に合うと思うわ」
「ありがとう!」
そう言うと同時に教室を飛び出した。背後から「幸せにしろよー!」と叫び声が聞こえる。
─―言われなくても、分かってるよっ!
校門まで走り、止まっている車の助手席に乗り込む。
スズキワゴンRだ。車体は新品同様ピカピカで深みのあるワインレッドの輝きを放っている。
運転席にいるのはバイト先の五十嵐先輩だ。
「見つかったか?」
「今すぐ駅前の焼肉屋まで行ってください!」
焼肉屋という目的地がわかっているなら下手に探し回らずそこで待っていた方が確実だと考えた。
「了解!俺の取りたて免許が火を吹くぜぇ!」
先輩が何を言っているのかはまったく分からなかったが、車で移動できるのはとても助かった。
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