【其の5】餌の効能

「はい、あーん。」


「えっ、何なに⁈」


「味見!」


そう言って和えたばかりの青菜を菜箸で彼の口元に運ぶ。


一瞬、照れた彼の表情がパッと晴れた。


「あっ!美味しい。」


「そう、良かった。」


私は、出来上がった料理を手早くお皿に盛り付けると彼の前に次々と並べる。


「凄いね!」


彼は笑顔を見せると、いただきますと挨拶をして上品な仕草で食べ始めた。



その日のメニューは、


●トマトとニンニクのスープ

●白菜と塩麹漬ささ身のクリーム煮

●ほうれん草と塩昆布のナムル


ここのところ疲れ気味で食欲が無いとメッセージがあったため、体に優しいメニューにした。


彼は、お皿の料理をペロリと平らげると、「もう少しだけ食べようかな…。」そう言って、そっとお皿を差し出した。



別の日に燕が飛んで来た時には、


●茄子と蜂蜜梅の和物

●蓮根と豚バラの炒め物

●キャベツと湯むきトマトの溶き卵スープ

●モズクと枝豆のひらやーち(沖縄のお焼き)


を作った。



普段、食べつけているものと目先が変わったからであろうか。


食欲が無いと聞いていたが、これも良く食べた。



玄関を入って来た時とは別人のような顔艶になった彼が洗い物をしている私の身体をまさぐる。



「もう!ダメ…。手に泡がついてるから…ダメだってばぁ…んんっ。」身をよじる私の首筋に彼が唇を這わせる。



「ダメ…ん…あ、あん。」私の膝が軽く痙攣した。





「ダメ、もうお仕舞い!」笑顔でそう告げると、「お風呂溜めてくる。」と言いながら、

彼は上機嫌で靴下を脱ぎバスルームに姿を消した。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る