4-4 開催!セルンド祭り

 2回戦であり、準決勝戦の相手覆面の剣士を倒し、ついに決勝戦の切符を手に入れた。


「準決勝二回戦、勝者は犬王女だー。」


 決勝戦の相手は誰もが予想出来た犬王女だ。犬王女の戦い方を見る限り、高速移動から繰り出される連続パンチ。しかしそれよりも厄介なのが一撃必殺に等しい「「鉄拳。」」一回戦で戦っていたタクヤ対犬王女戦では直撃した「「鉄拳。」」をモロに受けたタクヤは、結局のところ内臓破裂だったらしい。龍化したところで受けて無事でいられるだろうか。


((無理だな。魔族でもあそこまでの火力は出ないぞ。))


 と龍先生が仰っているので「「鉄拳。」」が飛んで来たら避ける方針で行きたいと思います。


「君。回復しないのかい?」


 さっきから運営の人が声をかけていたみたいだが集中して聞こえなかった。

 周りが聞こえなくなるほど集中するなんて今までで1回でもあっただろうか。

 それくらい俺にとっては珍しかった。





「それではただいまより決勝戦を行いたいと思います!まずは今大会初出場にて決勝戦にまで上り詰めた強者。ユウキ選手!対してこちらは前回、前々回の優勝者にして今大会の優勝候補。犬王女選手!」


 俺と犬王女はそれぞれの名前が呼ばれた後、ステージに登った。


「それでは…始め!」


 開始の声が会場全体に響いた瞬間、犬王女は一気に距離を縮め、大きい一打を当てに来た。


 俺はすかさず防御姿勢を取り、犬王女の拳を受けた。


((こんな序盤のパンチでここまでダメージを負わされるとなると躱すことに専念した方が良さそうだな。))


 俺は龍の意見を聞き、躱しながら攻撃をする戦法に切り替えた。


「「ゲイル。」」


 先程のパンチ一打で後ろに飛ばされていたので「「ゲイル。」」を打ち、相手がそれを反応しているうちに一気に距離を詰めに走った。


 が、犬王女は軽々しく「「ゲイル。」」を飛び越え、半回転させた体で俺の頭を掴み、投げ飛ばした。


 俺は空中でうまく体制を立て直すも犬王女は地面に足をつけた瞬間また地面を蹴り、追撃を仕掛ける。


(まず…い)


 俺は防御姿勢に入れぬまま犬王女のパンチをもらった。


(やばい、すっげークラクラする。)


 しかしそんなのは気持ちの問題だといい聞かせ、足に力を入れる。


 とりあえず今わかることはものすごい勢いで押され、相手の運動神経が良すぎる。

 「「ゲイル。」」を飛び越えたなんて簡単に言ったが「「ゲイル。」」は直径1メートルの風の球。

 それを簡単に飛び越え、そのまま人の頭を掴むのは流石に無理がある。


 犬王女はまさしく<天才>だ。


 とりあえず犬王女の動きを止めないことには話にならない。


((確かにな。だが今日はすでに龍化をしている時点でもう一度龍化するには時間がかかる。その上MAX50%が限界ってところだ。))


(それでも上出来。それでも良いから用意しといてくれ。)


「「コリエンテ。」」


 俺はすぐさま「「コリエンテ。」」で牽制をかける。

 犬王女は躱しながら距離を詰めてくる。

 俺はうまく距離を詰められないようにしながら時間を稼ぐ。


「!?これは…。」


 犬王女はいきなり足の動きをピタリと止めた。

 俺はただ逃げているだけではなく、地面に罠を仕掛けていた。


「「クエイク。」」


 初戦でケンジが使ってきた魔法。

 龍がちょくちょく解析してくれていたみたいで俺にも罠として使えるようにしといて貰った。


「いやーまさか初戦で君が引っかかってた魔法を今こうやって私が喰らうなんてね。」


 犬王女はそう言うと「「クエイク。」」を振り解き、スピードをさらに上げてきた。


((とりあえず10%だけ力を渡すからうまく時間を稼げ。))


 俺は龍化が10%の状態になったことで犬王女のパンチを少し余裕を持ちながら躱しつつ、距離をとっていく。

 しかし距離を取りすぎると犬王女の一気に距離を詰めて殴ってくる戦法の餌食になりかねない。


 犬王女の方が格上だが今は龍の力があるからなのか分からないが拳が全て見切れる。


 俺は一瞬の隙にすかさずカウンターを決めていく。

 が、犬王女はカウンターにもろともせず攻撃も手を引かない。


((よし、50%まで溜まったぞ。今日はもうこれ以上の龍化はできない。ここで仕留める気持ちで行け。))


 俺は龍から力を貰った瞬間犬王女の拳を完全に手で掴んだ。


 犬王女も見ていた観客もまさかの出来事で鎮まってしまった。

 犬王女はすぐさま脱出の動きを見せたが俺は逃さず、拳を構えた。


 「「((ドラゴンブレイカー。))」」


 俺と龍の渾身の「「ドラゴンブレイカー。」」は犬王女の腹部にクリティカルヒットし、場外ギリギリまで吹き飛ばした。


 「「ドラゴンブレイカー。」」は龍が作り出す〔気〕を拳に纏わせ殴る古典的なやり方だ。


 が流石は優勝候補なだけある。

 犬王女は気合で踏みとどまり、腕の色が薄っすら銀色になり始めた。

 おそらく…。


「「鉄拳。」」


 犬王女はそういうと走り出しながら「「鉄拳。」」の完全状態にしていく。


((さっきから見ていたがあの「「鉄拳。」」は確定一発だ。あれは龍化100%でも受け切れず骨が折れるぞ。))


 初戦のタクヤは「「鉄拳。」」をモロに受けて内臓破裂した。大会運営が雇った医療班の腕が良かったので一命は取り留めたと言っていた。

 それくらいの破壊力を持つパンチが今俺に向けられている。


 俺はゆっくり呼吸をし、犬王女に向かって走り出す。

 そして「「鉄拳。」」が当たる直前で俺は左足を軸に右回転し、犬王女の後頭部に踵がくるような回し蹴りをお見舞いした。


 犬王女は自身が加速していたのに合わせ俺の回し蹴りが当たったことでそのまま場外になった。


 会場はほんの一瞬の出来事で誰もが固まっていた。

 しかしある人の言葉でその空気は和んだ。


「勝ったよ、ねぇ、ヒカリ。ユウキが勝ったよ。」


「優勝はユウキ選手!!」


 アナウンサーの一声により会場は大きく盛り上がった。

 ここ何年も変わらなかったこの祭りの王はふらっと現れた参加者に取られてしまった。


「優勝したユウキ選手には賞金の3000万テルが渡されます!。」


 そうして俺は優勝賞金を貰い、セルンド祭りは終わりを迎えた。










 セルンド祭りが終わってから数日が経った。

 流石に日に2回も龍化をする事は無かったので大会が終わった日とその次の日は死んだように寝ていた。

 しかし大会が終わったことで俺の周りは少しずつ変わっていた。


「あらー。ユウキくんじゃない。ウチね、パン屋なんだけど今からお昼食べてって下さい。」


「おいおい、何言ってんだ。ユウキさんはウチのカフェでオムライスを食べてってもらうんだ。」


 そう。有名人になりました。


 嬉しいけどうざったい。そんな複雑な気持ちになりつつ2人にはやんわりと断らせて頂いた。


「それにしてもユウキはすごいな。今日だけで10回も声をかけられたな。」


「でも全部声かけた人が得することなのが面白いのよねー。」


 何故こうもインドラは余計な事を言うのが好きなんだろうか。


((でもインドラが言ってる通りなんだよな。ほとんどがウチの店で〜とかだもんな。いい商売道具になったかもしれねぇな。))


(龍にまで言われるとは思わなかったわ。)


 そんなちょいと目立ち始めている俺たちが向かっているのはとあるお店。

 そこで大きな買い物をするために今日はわざわざ大金を持ち歩いている。


 本当のところ優勝賞金はこの買い物に使う事を決めていた。


「いらっしゃいませー。セルンド不動産ですっ。ってユウキ選手じゃないですか!」


 そう、不動産屋で新しく家を買おうと言うことになったのだ。

 まぁいつまでもヒカリの実家にお世話になる訳にもいかないし大金が入ってきたこのタイミングで家を買ってしまおうという算段だ。


 店に入った俺たちはすぐさま奥の部屋に連れてかれた。


「なるほど、ですがこうも数多くの意見は当てはまるいい物件はないですね。」


 俺たち3人で家を買うならどんな家がいいか相談し、ピックアップした紙を見せたらお偉いさん含め3人から同じ返答を貰った。


「でしたらいっそのこと建ててしまうのはいかがですか?いい土地があるんですよ。」


 そう言われ奥から持ってきた紙を覗き込んだ。

 そして紙の内容を見た俺は何故奥の部屋に連れて来られたかが分かった。


「なるほどね。街の南側は設備がしっかりしていないにもかかわらずギルドや教会から支援も貰えず、そしてそもそもの土地代が高いと来たか。」


「そうなんです。設備がしっかりしていないのでモンスターや盗賊に家を荒らされるにも関わらずギルドも教会も支援を回せる余裕が無い状態です。」


 さてどうしたもんか。確かに土地は広い。動物も飼えそうな広さはしているしギルドからもそこまでの距離は無いから俺たち冒険者はそこそこいい条件ではある。が荒らされるのは嫌だなぁ。


「私結界張れるからここにしない?そういう悪い考えを持つ人だけ入れない結界なんかもあるのよ。」


 流石は神様。そこまで限定して結界が張れるならお客さんとかが家に来ても問題にはならないな。


 それでいて俺たちがピックアップした条件全てが反映できる構造にしてしまえばいい。


「ヒカリはここでいいのか?ヒカリがここでいいならここに決めちゃうが。」


 ヒカリも素早く頷き不動産屋からほっとした表情を見て思ったがここの土地は本当に売れなくて困ってたんだな。


「それではどのような感じでお作りすればよろしいですかね?」


 正直俺が作ると失敗する未来しか見えないのでヒカリとインドラに託した。


 特に今回家を作るにあたって一番ノリノリだったインドラが一番いいものを作りそうである。


 そして俺は武器屋に少し用があったので先に不動産屋を出た。










 武器屋でおっちゃんと話し合いをしていると2人も終わったのか武器屋にやってきた。


「ユウキ、それは…小手?」


 俺とおっちゃんにヒカリが割り込んできた。


「そうそう。本当は盾にしようかとも思ったんだけどさ、普段使わないからこそ盾を持つと機動力が下がる。って話をしながら何の素材を使うか話してたんだよ。」


「確かに盾は機動力が大幅に下がるけどその分守れる人が増えるのがいいんだけどね。」


「だからこそ人数分の小手を作ってもらう予定だよ。いざと言うときは自分で身を守ることになるしな。それはそうと家はどうなった?」


 ヒカリはそうだったそうだった。と言いながらポケットに手を突っ込みシワクチャになった契約書を見せてきた。


「なぁ、家って一から作るって話だよな?」


「そうだけど?」


(だよな。なのに4日後に買った場所集合ってどういうこと?)










  4日後


「なぁ、インドラ?」


「なーに?」


 俺たちは約束通り4日後に購入した土地まで来たのだが…。


「お前アホだろ。」


「なんでよ。天才インドラ様が作った家になんか文句でも?」


 なんでこいつは逆ギレしてくんだよ。


「何で上から見て四角形なんだよ。しかも真ん中開けてんじゃん。」


 現地に着いた途端嫌な予感はしていた。だが不動産屋から建てた構図を見せて貰ってびっくりした。


 上から見ると完全に四角形。しかも真ん中が空いているのでそこには芝が敷かれていた。

 確かに庭にいるときに人目を気にしなくてもいいのは助かるかも知れないが、しかしこうじゃ無い感がすごい。


((まぁ一応希望は全部通ってるんだしいいいじゃねぇか。ちゃんと露天風呂もあるんだろ?))


(あるけどさぁ、形不細工すぎだろ。)


「つうかヒカリも同じ所にいたのに何で止めなかった。」

 

「いや、だって、ほら。防犯はしっかりしてるから。」


 俺は視線を構図に目をやる。

 が、これといって防犯設備についての記載は無い。


「お前、この構造が防犯になるとでも思ってるんか?」


 するとヒカリは首が取れる勢いで頷いた。


「お前ら2人でアホなんだな。」


 俺は今後こういう大事な物事を進めるときはこの2人に任せることを辞めようと決めたのだった。


「前回お金は頂いてますのでこちら鍵と、その他諸々の資料ですね。」


 ルームツアーを済ませた俺たちは不動産屋から家の鍵と国語辞典3冊分の資料を受け取った。


「ありがとうございました。あとは何かしなくちゃいけない流れとかありますか?」


「あっギルドに住居登録をお願いします。出来るだけ当日の方がいいですね。」


 不動産屋の方が帰った後、俺たちは早速ギルドに向かい、住居登録を済ませた。そしてその帰りに必要最低限の物だけ買って帰った。







ステータス


浮島うきじま 優樹ゆうき Lv.1

 能力《アビリティ》 ??

 技能スキル 無し

 剣技 肩並行斬 進化 肩斬

ビクトリースラッシュ

 魔法【初級】

    ファイヤー

    ウォーター

    アース

【中級】

ゲイル

ライジング

コリエンテ

ゲイル

【準中級】

フリーズ


龍化 ドラゴンブラスト

ドラゴンブレイカー

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