1-2 天界にて
「「アース。」」
手には水分をこれでもかと含んだ土が出てきた。
シーン…。
「・・おい、なぜ濡れた土が出てくる。」
「ごめん、全く分からない。」
とりあえず俺はもう一度手を伸ばす。
「「アース。」
また濡れた土。乾いてないと姿を消す魔法や目眩しの魔法が使えないとのこと。
濡れた土しか出てこないというのはあれか? 農家になれ!ってか?ふざけんな。
「「アース。」」
また濡れた土。え、なんで?意外にも簡単に習得出来ちゃった「「ゲイル。」」とは違ってなんでこんなに苦戦してるの?
「お前ふざけているのか?」
「いやいやいや、見れば分かるでしょ。この必死さ。」
死んだはずの体なのにしっかり汗をかく程には必死なのだ。霊体なのに。不思議なもんだ。
「いいや、今回のアースはお前に教える価値がない。努力が見えない。」
「なんでだよ。必死にやってるじゃねぇか。というか日本には魔法なんて無いのに何に努力すればいいんだよ。っておい!」
ゼウスは最後まで聞かずに粒子状になって消えてしまった。
いつも俺が出会う年配の方は地軸のように自分が中心だ。魔法など今までの一般常識を大いに覆す。魔法の常識など一から十まで教えてもらわずに誰ができると言うんだ。
しかしここに無いものについてブーブー言ってもしょうがない。
今回は自力でやりきってやる。
「「アース。」」
まだ手に重たい、水分を含んだ砂が出てきた。
考えろ。どうやったら濡れた砂が出ないようにするには。
イメージ力がモノを言う。さっきまで砂場にある砂をイメージしている。
なら次は…。
「「アース。」」
やはりダメか。海岸の砂は。
砂場でダメ。 砂浜でダメ。 あと砂がある場所。もしくは砂が使われている道具。
道具…どうぐ…ドウグ…dougu…。
「「アース。」」
来た!そうか。水分に触れないようにするには出来るだけ外気に触れなければ良かったんだ。
そうとなれば次だ。さっきのゼウスの魔法を見た感じだと「「ボルト。」」は静電気って感じか。
「「ボルト。」」
「っつ。」
今の感じは体内に生成されたって感じだな。こうなると死んでいなければ死んでたな。しかもこれが初級魔法とすると中級、上級って上がるに連れて体の負担が大きすぎる。
「「ボルト。」」
「っつ。まじか。」
体内で電気が発生してるとすると魔法構造そのものが違う気もする。
なんとなくプライド的にゼウスに謝るのは癪だが仕方ない。
何もかもをプライドいう名の意地を張るのはやめよう。それが一番ダサくて惨めだからだ。
まぁ疑問なのは俺に悪い要素がどこにあったんだか。
「ゼウス。俺が悪かったよ。もうアースは習得したからまた教えてくれよ。」
俺は適当な空間目掛けて謝った。
すると目の前の空間が歪み始めた。
「全く。お前さんは赤ん坊か。」
それは一体どっちだろうな。
俺はゼウスに向かって右手を出す。
「「アース。」」
サラサラな砂。やはり俺は一度出来れば大丈夫な男だ。
「ほう。ここまでサラサラな砂を再現するとはな。 これはベテランの魔法使いでも出来ないぞ。」
やっぱり日本にある物は異世界より技術が発達していると見た。そしてそれが魔法を使う上で良いイメージ材料になるということ。
というか魔法がある世界に砂時計なんて必要無いのか。
「んで「「ボルト。」」に躓いているということか。」
流石ゼウス。話が早い。
「まず前提条件として魔法の組み立て方が違うんじゃ。普通の魔法は魔力分子を組み替えてその属性に合わせて発動させている。 しかし雷系統の魔法は魔力を体に通して外にある魔力分子を集め、無理矢理魔力分子どうしをぶつけ合うことで静電気を作るんじゃ。」
「要するに雷系統の魔法を使うのに魔法分子を組み替えると体内に魔法が発動する。ってことか。」
ゼウスは俺の回答に対しうんうん。と頷いている。
(やり方は理解した。あとは反復練習するのみか。)
まず最初は魔力を体に流す。心臓から首、脳、首、右手、右足、左足、左手、首、脳、首、そして心臓に帰ってくる。
「おっ。魔力が全身に流れたのぉ。じゃあ魔力分子を集めてみろ。」
おそらく魔力分子っていうくらいだから小さいとみた。
イメージは魔力が糸。指先から糸くらい細くさせて出していく。魔力分子がビーズ見たいかな。そんでもって糸でビーズの穴を通して行き集めたビーズ達を横に振る。
するとカチャカチャと音を立てながらぶつかり合う。
バチ。
来た。ビーズを糸いっぱいに通すと隙間が無くてぶつからない。少し余裕を持たせてあげて…。
バチバチ。
「いいぞ。その調子だ。」
糸を縦や横に揺らしてもっと大きな静電気を作る。
その静電気をまた魔力で集めて手に留めれば。
「「ボルト。」」
バチチチチチチチ。
青白い光が手に集まっていく。
でもまだ集められる。
バリバリバリ。
魔力を制御できず魔法が解けた。
手は血が止まって痺れている感じに近い。ずーっとビリビリしている。
「お、お前。はぁ。もう何も言うまい。でもなぁ。中級2個持ちで転生させるのは……。いや、仕方ない。諦めよう。」
ゼウスの心の声が普通に声に出している。
「よし、転生するのにまだ準備があるから他のことも教えるぞ。」
なんだかんだそんなこんながあり俺が死んでから一年が経った。
修行という名の雑用を繰り返した俺は今日、この天界から旅立ち、異世界に転生する。
「お前が長居したせいで居なくなるって思うとちょっと寂しいな。」
「そんなこと言ったって心変わりなんてしねぇからな。」
一回だけだがゼウスに天界で住むのもありだ。と言われたが速攻断った。
一応中退したと言えど17歳。異世界に興味無いわけがない。
「まぁいいや。お前コイツを連れてかないか?」
ステータスは1項目100が最大値らしい。
(インドラ。魔73。力55。知48。)
ふむふむ。この感じとしては神見習いみたいなので一緒に旅して立派な神になる。みたいな物だろう。
「要ります。」
腐っても神だからな。
ゼウスはそうかそうかと言いながら近づいてきた。
「??」
「セイ!」
何も言わずシンプルな腹パンを貰った。普通にいてぇ。
(なんか体が熱くなったような……。)
「じゃあな、あっち着いてもちょこちょこ連絡くれよ。」
そういうとゼウスがどんどん小さくなっていく。
あ、違う。俺が落ちて言ってるのか。
そう理解した時はもうすでに遅かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます