第7話 迷い人

この世の中には 歳をとって作業を続けられなくなった元農家さんとか

ガーデニング大好き小母さんとか

爬虫類を飼いたいお兄さんとか

植物や動物を育てたいという夢を持つ人達がわりといる。


若い頃に自分が育てた作物のことを夢みて 日中もボーっとしているご老人

園芸手帳なんて雑誌を買い込んでは ぼーと夢見る若い女性

こういう人達を勧誘してみた。


その人達が育ててみたいと思う種や球根や 畑や田んぼやガーデニング用品をそろえて 夢の中からうちのダンジョンに引っ張り込む。


そこで いそいそと作業を始める人には、しばらくリアルとダンジョンとを行き来してもらう。


中にはリアルにもどろうともせず うちのダンジョンで仕事をしては はらへった~のどかわいた~ と言う人もいる。

 そこで その人達が望む飲食物をダンジョンから提供する。


 そこで はっと正気に返ってリアルにもどり それから 今度は積極的にうちのダンジョンに来たいと眠りにつく人に対しては お引越しの提案をしてみる。


 うちは基本的に 夢路をたどってダンジョンに来た人には 初回は必ずリアル世界にお返しすることにしている。

 だって 怖いじゃない、寝ている間に異世界へ誘い込まれて死の罠に陥るなんて。

 だから 初回アウトの時は 必ず 眠る前の状態でリアルに返して目覚めさせている。

 そして 初回で死にかけた人が 今度は自分から夢路をたどってうちのダンジョンに入ろうとしたら、危険であることを告げたうえ「夢の中で死んでもかまいません。」と同意書にサインをさせる。

 ダンジョンをなめていて 適当にサインして危ない目にあったら文句を言いそうなやつを追い返すこともしている。

 だって 変な噂をたてられたり 逆恨みで妨害工作されたくないからね。


連れ合いを亡くしたお年寄りは 比較的高い確率で うちのダンジョンへの移住を決めてくれた。


配偶者のいるご老人は わんこと同じで 昼はリアルで活動 夜は夢路をたどってうちのダンジョンへという人が多かった。


こういう人は すぐに農業以外の欲望を発揮しだす。


やれ温泉がにつかりたい

漁に出たい

連れ合いと一緒に もう一度新婚旅行をしたい フルムーンに出かけたい。


老人ホームに住んでいる仲間をさそって ゴルフだ なんだ・・・・


はっきり言って 欲深な人間の願望を満たすフィールドづくりなんかしていた日にはうちのダンジョンが破産してしまう。


だから うちのダンジョンの中でも 気持ちよーく眠ってもらって その願望パワーだけを頂くことにした。

 夢の中で夢を見てエネルギーを発散するお年寄りたち。



一方若き趣味人たちは 飼育や園芸の趣味をきわめられるならと 積極的に僕のダンジョンのシステムメンテナンスに協力したいと言ってくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る