裏話(期間限定) 七話

【付録:裏話は年内中には削除します】

 西家の寄宿舎、会議室。

「では、初戦と準決勝では女王を変更するということでいいですね」

「はい、初戦は五年一組の女性に女王となっていただきます。相手は東家ですが問題ありませんね」

 クロエの言葉には威が備わっている。

「一年一組の生徒が全員で百人分四百の魔石を一気に充填できることが分かったのが大きいです」

「初戦の東家戦では二五〇人対一七〇人前後。攻撃に一五〇人、防御に一〇〇人で手堅く勝ちを収めることが可能でしょう」

「準決勝、多分相手は王家領。例年からの推測ですと二五〇人対四〇〇人です」

「王家領戦はクロエ様が女王役ということでよろしいですね」

 クロエが頷いた。

「正攻法で戦ったのでは二〇〇人を倒し、当家の犠牲が五〇まで。この数字は正直無理だ。いくらリットン生徒会長が欠場して今年の王家領の力が弱いと言っても数の差は大きい」

「最初の二十五分は全員で守りに徹します。多分王家領の攻撃陣は二〇〇人なので優位に立てると思います。ここでは犠牲者なしで済ますことが重要です」

 クロエが冷静に答える。

「最後の十五分が勝負ですね」

「捨て身の作戦を行います。タイラー、フィンリーよろしいですね」

「はい」

「承知しました」

 クロエの確認にタイラーと三年一組のフィンリーが応じた。

「私とタイラーとフィンリー三人で終了十五分前に自陣を抜け炎の化身となって女王役のアナベル王女を襲います」

 炎の化身の威力を振るえるのは十五分が限界だと、模擬戦を通して分かったことだった。

「赤い炎を纏えば女王が身に着けるピンクのビブスをしているのが目立ちません」

 クロエの言葉にタイラーが頷きながら重い口を動かす。

「そうですね、敵はピンクのビブスを探して攻撃の手を緩めず、私たちを追わないはずです。三人が抜けても今年の王家領相手なら十二分に戦えると思います」

「これ以外の方法で王家領に勝つすべはありません。そして今年が最大のチャンスです」

「炎の化身三柱が姫様の王都の方への西家次期当主として盛大なお披露目になります」

「王家領に勝って決勝でサンダー領と戦うのです。そしてナナさんと相まみえることが最大の恩返しになります」

 クロエが誓った。

 王家領に補強の助っ人としてサンダー領の五人が加わり、かつ王女役がナナになっていることの秘密は対抗戦当日まで保持されているようだ。

                        「裏話完」


【備考】

守備側、土壁の上の迎撃隊の役割の割り振り

東側

A:一年一組10名=魔力壁要員

B:二年10名=破壊の土魔法/水魔法要員

C:二年15名=魔力壁要員

D:二年15名=水魔法要員

西側

A:二年10名=魔力壁要員

B:二年10名=破壊の土魔法/水魔法要員

C:二年15名=魔力壁要員

D:二年15名=水魔法要員

合計

魔力壁要員=東西で50名

水魔法要員=東西で50名、内破壊の土魔法兼任20名

役割

A=通常は敵が壁下で魔力壁を作っていたらCと一緒に魔力壁をナナ式で覆う役割。但し、階段が作成されたらBの破壊の土魔法要員が活動しAが魔力壁をBに対して行う役割。

B=通常はDと一緒に敵を水魔法で攻撃する役割。但し階段が作成されたら破壊の土魔法を行う役割。

Cは常時敵の魔力壁をナナ式で覆う役割。

Dは常時敵を水魔法で攻撃する役割。

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