裏話(期間限定) 四話
【付録:裏話は年内中には削除します】
試験終了後の翌日、アナベル王女様と学友のアンナは集会室に向かった。時間は午後一時。
集会室の扉を開ける。
既に王家領全学年各十クラスの代表者五十名が席に着いていた。
「ごきげんよう。今日はお集まりいただきありがとう。対抗戦について重要な連絡と言ってある通り、お願いと了解していただいて、かつ協力してもらいたいことがあります」
アンナが口火を切った。
「アナベル様ご説明を」
王女様が続きを話す。
「第一点は、毎年補強で各領地へ出向く方がいらっしゃいますが今年は禁止して頂きます」
ここにいる五十人は各クラスの代表者。補強でスカウトされても行くような者はいない。金銭的に恵まれている者がほとんどだ。
「みなさんがクラスメイトに周知徹底してください。理由は今年の対抗戦にリットン君が間に合わないことが確定したからです」
ざわつく室内。
「しようがないのよ。狂犬病は治ったけど、まだ本調子じゃないの。足手まといになるだけだからと本人からも辞退の申し出があったのよ」
「敗けるかも」
男子生徒がポツリと言った。やけに室内に響く。
「そうならない為にも補強で外部へ行くことは今回遠慮してほしいの」
何人もが頷いている。
「さらに、今回私たちが補強をお願いしたの。リットン君の代わりになるほどの人材をスカウトできたの」
「誰だ、リットン会長と競えるほどの相手はそうそういないぞ」
「サンダー領のナナリーナ嬢とそのお仲間の五人よ」
「一年生じゃないのか」
あちこちで私語が飛び交いだした。
「彼女たちは一年一組の生徒よ。リットン君も彼女たちを信頼しているの」王女様が言う。
「彼が狂犬病の犬に噛まれたとき治療所に運んでくれたのが彼女たち五人よ」アンナが続く。
「北の森で聖女の手助けをして僕たちを助けてくれたのも彼女たちだ」五年一組の代表者も続く。
「そう五年一組の生徒と一緒に北の森へ入ったのは彼女たちよ。新聞には載らなかったけれど、最後まで闘ったのは彼女たちよ」アンナが声を大にする。
「私たちも助けてもらいました」
五年生の女子が立ち上がって話し出した。
「調理クラブの部長です。調理実習をしている時に部員が大火傷をしたのです。顧問の先生がすぐに運んでくれた先が医療クラブでした。そこにいたのが今話題のベケット先生、サンダー領から若くして男爵位を与えられた先生、王家からも爵位をとの話がでた先生のいるところです。そこにいたのが彼女たち五人です。ベケット先生が彼女たちの作ったポーションで大やけどを負った調理クラブの生徒をあっという間に治したくれたのです。ベケット先生の腕もさることながら、ポーションを作った彼女たちも相当優秀だと、先生が太鼓判を押してくれました」
さらに女生徒が立ち上がる。
「私が火傷を負った本人です。私のこの左手、本当ならケロイド状の火傷痕になっていたはずです。でもこの通りきれいです」
火傷をした左手を上げる。
「サポート役としては優秀なようだな」
「そう言えば少し前にひどい火傷をした女生徒がナナリーナ領とかいうありもしないところで治ったという都市伝説を聞いたが、そのナナリーナ領と今度来るナナリーナさんとは関係あるのか」
「それは私の口からは申し上げられません」
王女様が答えた。
「「「……」」」
集会室は思案にくれる沈黙がしばらく続いた。
参加している生徒のうち半分が納得、半分が半信半疑といった雰囲気が流れている。
「提案があります」
金髪が目立つ女性、
「カラの魔石を二十個持ってきました。私たちとフル充填する時間の勝負をしてもらって、その結果で判断すればよいのではないでしょうか。それが一番科学的です」
半信半疑だった半分の生徒が肯いている。
集会室での決定が出た。
アナベル王女様は戸惑っている表情。
一方エレノアは自信満々な顔付きだった。
「裏話完」
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