裏話(期間限定) 二話
【付録:裏話は年内中には削除します】
一日前の三年一組。
学科試験の終わった後のノアの教室にもホッとした雰囲気が流れている。
ノアはまだ席に着いたまま充実感を漂わせていた。その前に一人の女生徒が立った。金色の髪、回復魔法に適性がある。
「ノア君、妹さんのことを聞きたいの」
「エレノアどうしたの、唐突に」
「先日アナベル姉さんから言われたのよ」
王女様のアナベルを姉さん呼ばわりできるのは、学院では彼女だけ。
「何て言われたのだい」
「リットン生徒会長が対抗戦に間に合わないから、代わりにサンダー領の一年一組の女子五人を補強したいって。その
「そうだけど、いったい何を言うのだか。格下のサンダー領から、王者が補強を求めるなんておかしいじゃないか」
「知らないわ、私だって。どうしてそんな
ノアがほぉーといった口をして見せる。
「だから、お宅の妹さんってどんなものかを教えてよ。それによっては認めないでもないわ。でもたいしたことがないようだったら私は無視するわ」
「自分の目で判断すれば」
「何よ、いいわ、じゃ好きにする。科学的に判断するから」
やや怒り気味にエレノアはノアの前を去った。
「ナナも妙な人間に目を付けられたな。補強にと言われても兄貴は許すのかな」
呟くノアだった。
その夜のノアの部屋。
ノアは魔石の変化に興奮していた。
机の上には『魔法の基本』の銅のページが開かれ、その隣に水色の魔石がある。そしてノートにマトリックスが描かれ×が沢山つけられていた。
「今確かに僕は、銅の魔石をカラにした。それは確かだ。そして銅の魔法は、水と土の派生ではないかとの仮説から水と土の魔力とを分離できないかと考えた。呪文『スリープ』でそれができた」
フーと一息つく。
「呪文の欄、アース・スリープ、土の魔力欄が×、そして遂に水の魔力欄が〇、銅の魔力欄が×」
声に出して一つ一つ確かめる。
「遂に分かったぞ。銅の魔石から土を休眠させれば、水だけになるんだ。これを応用すれば金や銀も可能なはず」
頷くノア。水色に染まった魔石をカラにする。
「よし、次は元に戻す方法は」
しばらく熱中するノア。マトリックスの銅の欄に×が続く。
「戻らない」
銅の魔石を一旦水と土にスリープで分離後に呪文『アクティブ』で確かに有効になるはずだが、魔石に銅の魔力を込めても反応せず、土を込めれば茶色、水を込めれば水色のいずれかに染まるのだ。
「呪文の欄、アース・アクティブで土だけ有効、土の魔力欄が〇、水の魔力欄が×、銅の魔力欄が×。
ウォーター・アクティブで水だけ有効、土の魔力欄が×、水の魔力欄が〇、銅の魔力欄が×。
両方がアクティブだと土の魔力欄が〇、水の魔力欄が〇、銅の魔力欄が×。
銅の魔力欄が〇にできれば銅の魔石、ひいては銅の魔法が水と土が混ざってできていることが証明できるのに……何故だ」
銅の魔石を手に取り、悔しげな顔をする。
「次は金、銀の解析だと意気込んだけれど、銅への復元すら無理だとはなあ……いや、待てよ。ナナたちならできるかも。エレノアがやる科学的な判断って多分魔石の充填検査、あいつなら希少な金や銅の魔石を持ち込んで、ナナたちを認めないつもりだよな。僕が、銅の魔石が水と土に分離できることをナナたちに見せれば、銅も元に戻せるかも、ひいては金と銀の解析もあいつらならやりそうだな」
ノアは知らずに黒い笑みを浮かべていた。
翌日、魔法実技試験も終わりノアは部屋にいた。
「入るぞ」
兄貴がやってきた。
「アナベルがやって来て、ナナたち五人を補強に欲しいと言ってきた」
「許可したのですか」
「ああ、しかし金の回復魔法は禁止だとナナたちに言った」
「分かりました」
ハリーが部屋を出て行った後、ノアは銅の魔石を持って、ナナの部屋へと向かった。
「裏話完」
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