二十九話 セントラル大陸暦一五六五年 春 二/五

「狂犬病の死者が遂に三桁を超えた」

 ハリーお兄様が侯爵嫡男として学院上層部から知らされた情報を応接室で話してくれる。ノアお兄様は外出しており、後で話すらしい。

「本来学院では狩りの授業が行われる季節だが、今年に限っては、中止となった。野犬狩りが世論により、学院生も行わざるを得ないということだ」

 そして「これを見ろ」と資料を私の前に広げた。

『世論曰く。学院生は授業料が無料である、給食費を払っていない、卒業後は王都に在住せず地方へ帰る生徒が大多数である。そんな学院生徒を王都民はどうして養わなくてはならないのか。全員が魔法を使える、特に今年の一年生は上級生の威圧をはね返したほど優秀だと聞いている、死の恐怖に怯えて暮らしている王都民の気持ちを、考えて欲しい、そして救って欲しいのだ』

 そう書かれた資料を読んで、ハリーお兄様の目を見た。

「王都の中枢は、世論の意をくんだのだろうな、四日間の集中的な野犬狩りを発表する。従来通り、警ら隊が王都市中、兵士が東西南北の森で行う。

 この決定に従い学院首脳は、王都市中は教師と研究科から選抜した百名、森は全学年から席次順位トップの各学年の一組の生徒を選抜クラスとして野犬討伐隊を組織すると決めた」

 何故、一年生の私たちまでもが、という気がした。森での野犬狩りが嫌なわけではない。やり方に怒りがふつふつと湧きはじめた。

「本来であるなら、上級生だけで行うべきだが、優秀な一年生と名指しされれば外す訳にはいかない。それで王都市中は世論の手前、教師と研究科から選抜したそれなりの態勢で臨み、森は世論の目が行き届かないから、一年生を含む全学年で臨むことになったと思われる。森へは学院の授業の一環として毎年狩りに行っているからな」

 ハリーお兄様に言わせるとそういう事情らしい。

「森が安全という保証はない。各学年一組の生徒、平均四十名が五学年、総勢およそ二百名の生徒を森の生贄にしやがった」

 ハリーお兄様の口調は激しい。

「今まで何もしていなかった為政者の尻拭いを私たちがするということなのですか」

 怒りを抑えて、何とか口調だけは冷静を保てた。

「そう言うことだ」

「一番重要な治療薬開発すら丸投げで、何ら援助も手助けもしていないのに、やり方がお粗末すぎます」

「将来を見通せず、今しか見えず、人に頼ることしかできない奴らなのだ」

 予防対策も治療薬も完成していない中、「丸腰」で狂犬病に向き合う私たち学徒動員生の危機。為政者の無策に腹が立ち、もって行き場のない気持ちが振り切れて、到って燃え盛っていた私の癇癪玉の火が、溜まっていた呼気と共に消え失せ、ただただ、呆れに似た感覚を抱く。


 一年生と五年生がペアになり各半数ずつで二つの隊、二年生と四年生も同様、三年生は一組四十三名の一隊で第一から第五の討伐隊が編成された。

 第一討伐隊は五年一組王家領、西家の十八名と一年一組のサンダー領、北家、教会の二十五名の計四十三名、私たちもその一員となり北の森で野犬を駆逐する。五年生は入学時各領家十名だったが共に一名欠けていた。

 五泊六日で行い、日程も決まっている。私たちは狩りの格好をして武器を持参すれば後は学院で用意してくれるとの事だった。もちろん魔道具の使用は許可された。

 学院での壮行会に参加する。

 私はいつも狩りで使っている止めを刺すための短剣を持参している。他の四人も同様の武器だ。基本は魔法で倒すが、狂犬病の犬の止めは飛沫を浴びないよう槍の方がよい。槍はかさばるので、先に預けた。

 狩りの格好は、どういうわけか女性はスカート厳守となっていた。

「意味が分からない」

 マイアのセリフだった。

 仕方がないのでベージュの革の丈夫なパンツにロングブーツを履き、動きやすいように焦げ茶色の短いスカートを腰に巻くことに五人で決めた。上着も目立たないように茶色。この衣装をクラスで話したら、王家領の伯爵令嬢赤毛のクララと西家のクロエも私たちもと言うので、一年一組の全女生徒が着ることになった。

 狩りガール姿の十三人が今日に臨んでいる。

「それでは皆の奮闘を祈る」

 学院長の毒にも薬にもならない励ましの言葉で壮行会が終わり、第一集会室に第一討伐隊が集められた。

 今から諸注意の説明と行動計画、つまり作戦会議が行われる、と思って参加した。

 担当の先生から説明がある。二名いるが、残念ながらいずれもサンダー領の先生ではない。

「今日は北の森の入り口までは馬車だ。そこからさらに野営地まで馬車と徒歩で行ってもらう。必要な物は荷馬車に全て用意してある。五泊六日分だ。くくり罠を百セット分積んである。必要に応じて使用してくれ。北の森の一番南側を学院生徒が担当する。東から一番討伐隊、二番討伐隊、最も西を五番討伐隊が受け持つ。さらに北と一番討伐隊の東には兵士たちが活動している。明日から四日間市中は警ら隊、北の森は兵士と学院生、東、西、南の各森へは別の兵士たち、全方面で一斉に野犬狩りを行う。これで王都から野犬を一掃する計画だ。お前たちの行く場所は最も安全なはずと選ばれた地なのだろうが、気を許すなよ。今回は特殊だ、通常の狩りのように奥に強敵が控えているという事はない、手前でも野犬はいる。今回はいつもの狩りの授業と違い兵士の護衛はないからな」


 ハリーお兄様が先日言っていた。

「学院の狩りはお遊びだ。兵士が全てお膳立てしてくれて、はいここですよ、ここを狙ってくださいという的を魔法で当てるだけのものさ、サンダー領で行う狩りとは雲泥の差だ。特に王家領組が酷い、奴らは道場剣法、小手先だけ、動かぬ敵しか倒せやしない、だから覚悟しておけ」

 王家領の生徒は当てにならない。

「狩り場はここだ」

 ハリーお兄様が地図を示した。

「ナナの狩り場の案内人は昨年授業で行った先なので私が知っている。うちの狩り場の案内人を確保する際に一緒に声をかけておく。野営地も炭焼き小屋があった。王家組が手配する事はあり得ないからな」

「お願いします」

 そう言ったのは四日前の事だった。翌日、担任のサットン先生に地図を入手してもらった。昨日、案内人と野営地の確保ができたとハリーお兄様から聞いた。「案内人はハンダー爺さんだ、頼りにしていい。爺さん家が持ち主の炭焼き小屋が野営地だ」


 あらためて担当の先生の声に耳を傾ける。

「野犬は必ず殺処分し、感染が広まらないように、すぐに深く土を掘って、できたら焼いてから埋めるように。火災が起きないように注意しろ。乾燥していたらそのまま埋めてもいいからな」

 魔法で手早く山火事にならぬよう、うまくやれよという事らしい。

「野犬以外の獲物と遭遇し、やむを得ず殺処分した場合も、今回は持ち帰らず野犬同様に土に還せよ。夕飯用になる分は、まあ別としていい」

 とのことだ。

「私たち教師の役目は監察だ、何かあれば対応するが監督ではない。誰が何頭、何匹倒したのかを記録するだけだと思ってくれ。後は君たちが決めてくれ、今日向こうへ行き、明日から四日間討伐しその翌日の五日後、北の森の入り口を出発し戻って来る。以上だ」

 わざとのように足音を響かせ、五年の生徒が前方中央、今まで先生が説明した位置に進んでくる。リットン生徒会長だ。認識した途端、隣の北家のジェームスに目配せする。ジェームスも認識した、魔力を高めたのが分かった。

 リットン生徒会長が中央に立ち、強烈な威圧を放ってきた。

 ――またか、でも今回は大丈夫。それにリットン生徒会長は金剛杖を今日は持参していない。威力は高くない。

 ジェームスがすかさず防御壁を組み立てた。私たちは彼を支える魔法を展開する。

 前方からの威圧が消える。私たちも魔力を収めた。隣のジェームスから安堵の雰囲気が感じられる。今日はジェームスよくやったと褒めて上げたい。

「相変わらず、魔力だけは一人前だな、北家の若君よ」

 空元気を出し妙に威張った物言い。しかし王家領の生徒会長には北家の人間に絡む理由があると思い当たる。歴史の授業で習った初代の五人の子供たち、第一子、第一継承権のある長女が結婚し女王になる筈だった。しかし夫が北の残党狩りで亡くなった。原因は不明。暗殺か、恐竜と闘って亡くなったとか色んな説があるらしい。長女は継承権を放棄した。当時王は存命で第二子を選んだ。ところが第二、三子は双子の男子。第三子が北家となったが火種はずっと残ったまま。王位継承時に北家から王家への度々のちょっかいの歴史が存在する。王家と北家の確執は根深い。

「いい加減にしなさい」

 呆れた口調はアナベル第一王女様。二回目となるとイヤになるのも分かる。

「この第一討伐隊を率いる。生徒会長のリットンだ」

 はて? この人に私たちの背中を預けられるのだろうか? 入学式での事は伝統と認識したが、二回目となるこの場での同じ行いは子供じみた真似としか言いようがない。

「異議があります」

 緊張したのか少し上ずった女性の声。誰、アナベル王女様でも一年生でもない。五年生の女性のよう。

「多数決を望みます」

「アンナか、ダメだ。時間がない、俺が隊長をやる」

 リットンの発言にアンナと呼ばれた女性が担当の先生を見る。

「あと一時間で出発する。それまでに最低、隊長と副隊長だけを決めればよい。決め方は任す」

「私はアナベル様を推薦します」

「ツッ」

 リットン生徒会長の小さな舌打ちが聞こえる。

「私は……、ちょっと……」

 アナベル様は踏ん切りがつかない様子。責任を持って引き受ける積もりが感じられない。これじゃ任せきれない。発言した女性も失望したのか、下唇を噛みしめうつむく。

「一年生はナナリーナクラス委員長を推薦します」

 北家のジェームスが大きな声で発言した。

 ――聞いていない。非常に困る。何とかせねば……。

 対処を考えていると、別方向から大柄な男性が立ち上がる。

「西家のタイラーである。発言をよろしいか」

 タイラー家と言えばセントラル王家の古い姓、王家一門の名家。また厄介な人物が出てきた。

「私たち西家はナナリーナ嬢が隊長になればその下知に従う」

 また面妖な。タイラー氏とは全く面識がない。なのにどうして……。そうか西家か、クロエつながりだ。隊長になるのは厄介だ。一年生の手助けはともかく、五年生もとなるとなおさら。それも王女様の面倒までは見かねる。多数決となれば三十余名の票で私が隊長になってしまう。

「リットン様、生徒会長だからと言って、今回の討伐隊長を無条件に任せるわけにはいきません」

 私は決断を下した。リットン生徒会長に隊長を任せるが、条件を付ける。それを飲んでくれるようだったら彼を隊長とする、認めなければアナベル王女様にする。

「ほー、ハリーの妹か。ナナリーナ嬢、どのような条件かな。内容によっては認めない訳でもない」

 何だろうこの人は、いきなり、柔らかな雰囲気になった。私に対して嫌悪感がない、どちらかと言うとお友達モードで接してくる。

「隊長の命令は絶対です。全員が従います」

「ありがとう、そう言ってもらえると頑張りがいがある」

「誤っていたとしても、従うのです、そうなったら全員が危地に追い込まれます。そうならない為に、一人で判断を下さないで頂きたい。私たちの意見を聞いてから判断してください。それが条件です」

「収拾がつかなくならないか」

「今のように余裕がある場合は、情報を全て提示して頂ければ全員集会をしても収拾はつきます。みんなの総意を尊重して決断してください」

「承知した、では余裕のない時は」

「余裕のない現場では、代表として一年から、私と北家のジェームス、それに教会のライラの三人、五年生からはアナベル王女様と西家からタイラー様の計五人の意見を聞いて隊長が決断してください」

「すみません、一年のライラです。私は狩りの経験がありませんのでその役は担えません」

「分かった。では現場では四人の意見を聞いて決断する」

「最後に緊急な場合です」

「その場合は隊長の私が判断する」

「いえ、それは危険です。緊急の場合、隊長が全てを認識できているとは限りません。先ほど選んだ代表をリーダーとし緊急事態が発生した現場に一番近いリーダーの決断を優先してください。隊長、副隊長、リーダーとし各リーダーの元に各領家の生徒がいる組織です。リーダーの決断を副隊長が大声で復唱し皆に知らしめ、さらに隊長が大声で同じ決断を命令として大声で発してください。これで全員が同じ対応をします。ただし、リーダーの決断が明らかに間違いと分かった場合は、副隊長、隊長は異なった命令を出してください。その命令は絶対です。より上位の命令に皆が従います。リーダーが決断できない場合は副隊長が決断してください。副隊長の決断が遅いようなら隊長が命令を出してください。よろしいですか?」

「分かった。そうする。異存はない。それで副隊長はどうする?」

「一年生と五年生から一人ずつ出します。一年生は……」

 私は周りを見る。みんなの目が私を見ている。

 しまった。また前に出てしまった。いつの間にか立ち上がって話している。

「一年生は私、ナナリーナ・サンダーが副隊長として指揮を執ります。五年生は……」

 王女様を副にする訳にはいかない。

「タイラー様お願いできますか」

「承知した」

「では、第一討伐隊は隊長リットン様」

「リットンだ。みんな頼む」

「副隊長、タイラー様」

「副隊長を仰せつかったタイラーだ、西家のリーダー役も務める」

「同じく副隊長のナナリーナ・サンダーです。ナナとお呼びください。サンダー領のリーダーでもあります。王家領のアナベル王女様、北家のジェームス様リーダーをお願いします」

「分かりましたわ」

「お願いします」

 先ほどのアンナと呼ばれた女性が手を上げて発言を求めた。片手を差し出して発言を許可する。

「五年のアンナです。先ほどの命令系統の話ですが、もし誰も命令を下さなかった場合、私たちはどうすればよいのでしょうか」

 やはり王都の方々は本格的な狩りの経験も闘いの基本も知らないようだ。

「そのような非常時がないことを祈りますが、起こった場合は、ひとりひとりが判断するしかないです。各自撃破作戦です。相手は獣です。怯まないで自分の最も得意な魔法や武器、なければそこいらにある石や木でもなんでも利用して、目をそらさず、攻撃してください。隙を見つけて逃げようと思わないでください。相手が悪漢どもなら隙を見つけて逃げることも可能でしょうが、今回は獣、逃げようとしたその瞬間反撃されます。強い心で立ち向かえば蹴散らせます。相手が逃げたら大声を出して仲間を呼んでください」

「承知しました」

 全員が納得したようだ。

「では先生、公式記録には隊長と副隊長のみ記名願います」

「元々そのつもりだ」

「ところで先生、質問があります。現地での作戦に必要な罠はくくり罠だけで箱型や囲い罠はないのですか」

「兵士たちが全て持って行った」

「現地での案内人の手配と野営地の手配は済んでいますか?」

 北家のジェームスが訊く。

「それは君たちの役割だ。予め狩り場の地図はリットン生徒会長、もとい隊長に渡してある」

 一年全員がリットン隊長に視線を集める。

「もらったのは一部だけだ。君たちには届いていないのか」

「それを知らしめるのが上級生の役目だ」

 担任の弁ももっともだ。

「だったら仕方がない、そうだなあ、現地でお願いするしかないだろう」

「案内人は早い者勝ちになりませんか」

 今度は西家のタイラーが訊く。苦々しい物言いから多分タイラーもまだ手配されていないことの方が驚きだったのだろう。

「北の森入り口に集まるのは学院の第一と第二討伐隊、あと兵士たちの部隊がいくつかいる」

「現地案内人がいるのといないのでは天と地ほどの差が生じます。急ぎましょう」

 タイラーが立ち上がる。

「大丈夫です。現地案内人と野営地の確保は済んでいます。昨日ようやく連絡がありました。ハンダーというおじい様ですが、頼りにしていいそうです。野営地もおじい様が提供してくれます」

「承知した。対応感謝する」

 タイラーが座った。

「所定の金額は学院で支払う」

 担当の先生が答えた。


 隊列を決めて出発した。馬車で途中食事休憩をとって四時間ほどかかる。

 先頭は、王家領九名、隊長が先陣を任せろと言い張った。第二列がサンダー領と教会で十五名、第三列が北家の十名、殿しんがりが西家の九名。狩り場でも同じ隊列で臨む。

 私たち五人と教会のライラの六名が同じ馬車に乗った。

「リットン会長の恋のさや当て、カッコ代理とのは、いやになるわね」

「そうよね、あれじゃジェームス様が可哀そうだわ」

 アニーとマイアの言葉に私は驚いた。

「どういうこと?」

「あら、ナナは知らないの」

 ニーヴでさえ知っているようだ。

「ジュリア、知っている?」

「もちろん」

「ライラは?」

「ライラは教会住まいだもの、知らなくて当たり前ですわ」

 マイアは気遣いのできる未来の社交界の華。

「いえ、アナベル王女様を巡る、北家の御曹司フレディ様とリットン生徒会長との一方通行の三角関係の噂くらいは知っておりますわ」

「王女様の本命はハリー様とか、でもハリー様は関心がない様子とか」

 ジュリア、どういうことですか? ハリーお兄様が王女様と?

「先ほどリットン隊長が北家のジェームス様を敵対視したのは彼のお兄様が王女様に執着し、私に妙に愛想がよかったのは、ハリーお兄様が王女様に無関心だからなの?」

「その可能性が大ね」

 ジュリアの言葉にショックを受けた。

「てっきり、歴史の授業で習った王家二代目を巡る北家との争いが尾を引いているのかと」

「ナナ、あなたはいつの時代を生きているの?」

 マイアの言葉に私は押し黙るしかなかった。

「それにハリー様ではなく、二歳上のザイアー家の嫡男ハリソン様こそが大本命と聞きましたわ」

 サンダー領の西隣の侯爵家の方だ。ザイアー家は、今は落ち着いているようだが、以前お家騒動があって大変だったと聞いた。

「幼少のころは、狙われかねないと他領に潜まれていたそうですよ」

 ライラの言ったことは知っている。祖父母が居候に従弟連が来た時、チャーリーの部屋を見て、ザイアー家のハリソンが幼いころここに住んでいたのを思い出すと言っていた。私が三、四歳のころに自領に帰還できたようだが、幼過ぎて全く記憶がない。当家が預かったことは秘密裏に進めたはず。教会のライラの前で言うのは憚れる。

「ジャスミンちゃんのような方なのですね」

 アニーがしみじみ言う。

 そんな火種がくすぶっているような家に王女様が嫁ぐとは思えない。となるとハリーお兄様が……。ない、ない。面倒な事には決してお兄様は手を出さないはず……と信じよう。

 皆が私を見ている。

「ハリーお兄様が王女様の相手に相応しくない事だけは確かです。同じ隊になった隊長と北家のジェームス、殿方二人のとばっちりがこちらに飛んでこないことを祈るだけですね」

 そんな恋バナに花を咲かせ、束の間の馬車旅を楽しんだ。

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