原因調査

 問題のゴーレムは、うつ伏せになって納屋の壁にめり込んでいた。

 めり込んだ側の壁は半分以上崩れ、柱は曲がり、藁葺わらぶきの屋根も傾いている。

 たしかにこれはひどい。


 グラック家で使っているゴーレムは三メートル弱。

「工房のゴーレムより大きいかな? 大きいよね?」

 ステラは目を丸くしてふり向いたが、オリンピアは「知らない。大きいんじゃないの」とふくれっつらでなま返事。





 一方エコーは、調査対象の周りを歩き回ったり、確認するように顔を近づけたり、かがんでのぞき込んだり。


(地面はぬかるんでもいないし、つまずくような岩や段差もない。

 膝や足首の煉瓦れんがも抜け落ちていない。

 それに、倒れたまま動きを止めたこと。

 とすると、考えられるのは――――)


 しばらく腕組みをしていたあと、ようやく何らかの結論に達したようで、


「あなたたちは離れてなさい」


 というと、使用人がしらに借りた梯子はしごを納屋の屋根に立てかけた。





「どうするんですか?」

 ステラは心配そうな顔。


 無理もない。納屋の壁は少し押しただけでギイギイときしむ。屋根に上るなどもってのほかだろう。


 と、なぜか背を向けていたオリンピアがふり返った。

「エコー、ちょっとこれ見て」


「どうしたの?」


 バッ!


 エコーが気をとられた隙に、オリンピアは脱兎のごとくその脇を駆け抜けたかと思うと、あっという間に梯子はしごを登ってしまった。


「オリンピア!」


 大声を上げてももう遅い。


 追いかけようにも、この上エコーの体重まで加わろうものなら(彼女の名誉のために申し添えておくが、エコーは平均より軽いほうだ)倒壊は火を見るより明らか、ふたりそろって巻き添えは避けられまい。


「もう! なんてこと…………」


 頭を抱えるエコーに、オリンピアは悪びれるようすもなく答えたものだ。


「だってボクのほうが軽いでしょっ!

 で、どうすればいいの?」





※現代日本では安全衛生規則第五百十八条等に違反する行為です。ご承知とは思いますが、施工にたずさわる方は絶対に真似しないでください。なお、この時代のノンシャラン王国及びグラック公領内にそういう決まりはありません。

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