動かしてみよう!

 ――――重い音を立てて玄関の扉が開き、薄暗い館内に外の光が射し込む――――と同時に、


「たっだいまー!

 …………って誰もいるわけないか。作業場かな」


 勢いよく入ってきたのは、髪を片側で結った【サニー】。

 目鼻のくっきりした、華やかな顔立ちだ。


「昨日、焼成しょうせいだよー」


 のんびり声をかけたのが、眠そうな目をした【クラウディア】。くせっ毛をショートにしている。


「ってことは、ユキたち休みか。エコーさんもかな?」


「…………昨日から……新人がきてるはず…………」


 クラウディアの背後で、背の高い【ルーン】がぼそりといった。下ろした長い髪で片目が隠れている。

 長耳族エルフだが、ブロンドではなく黒髪だ。


「新人ちゃん? じゃあ、ウチらも挨拶しにいかないとだね。

 その前にさっさと荷物かたづけちゃおう」


 サニーの号令で、三人は大荷物を運び始めた。





 ――――ここで場面は作業場に戻る。


「さっき入れたのは【シェム・ハ・メフォラシュ】といって、ゴーレムの動きを定めた文章よ。

 文章といっても、ひとつひとつの単語は短く略されてるわ。そうしないと、長すぎて中に入れられないの。


 今回書いたSHMシェム・ハ・メフォラシュは、いちばん簡単な七二文字。これは、ゴーレムを動かすことができる最少の文字数です」


 ステラは目を輝かせて、エコーの説明――――は聞いていなかったらしい。


「これです! これなんです!

 これが見たかったんですよぉ!!」

 踊るゴーレムに興奮を抑えきれず、ぴょんぴょん飛び跳ねる。


「落ち着きのない新人じゃのお」

 バッカスが呆れ顔でヒゲをしごく一方、エコーは何やら含みのある笑顔。


「これくらいで満足していいの?」

「?」

 きょとんとしているステラにいったものである。


「ここまでやったなら、自分で動かしてみたいと思わない?」


 かんはつを入れず、


「やりたいっ!!」


 ステラは本日のぴょんぴょん最高度記録を更新した!

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