ステラの思い出
――――――――いくつのときだったか、覚えていない。
お腹ぺこぺこで、足が痛くて、ひとりぼっち。
そんなステラの前で
あざやかな衣装をまとい、
仲よく手をつないで軽やかに踊る、
いくつもの小さな、動物の人形たち。
幼いステラは、すっかり目を奪われてしまった。
それはキラキラと輝いて、
さびしい気持ちやかなしい気持ちを、跡形もなく吹き飛ばしてくれたのだ。
「――――まるで魔法みたいでしたぁ……」
うん。魔法です。
とツッコミを入れるでもなく、むしろ心なしか沈んだ表情でエコーはつぶやいた。
「ステラ、あなた……孤児だったのね」
考えてみれば、修道院が孤児院を兼ねることはめずらしくない。直接連絡を取り合っていたガイアは知っていたのだろう。
(せめて教えてくれればいいのに……)
とエコーは思うが、工房長は
「修道院の先生は、『せんさいこじ』っていってました」
「わたしも、そうよ」
だからわかる。だから、とりとめのない思い出話からでもわかったのだ。
「エーコさんも?」
身を乗り出したステラにうなずくと、考え込むエコー。
「でも、小さなゴーレムなんて聞いたことがないわね。
旅芸人の演目かしら? それとも貴族の子供向けのおもちゃ……?
「それ、先生も調べてくれて、でも結局わかんなかったんです」
そういう割にけろっとしているのは、ステラ自身とっくに踏ん切りをつけているのだろう。
エコーは顔を上げ、そんなステラをしばらく見つめていたが、
「どうせわからないなら」
と、にっこりほほえんだ。
「せっかくだし、自分で造ってみない?」
「ほんとですか!?」
喜びと期待で、ステラはコロッと表情を変えた。
「もちろん」
自分でいったことながら、エコーは少々不安になった。予想はしていたものの、それにしてもチョロすぎる。
「ほんとにほんとですか?」
「ええ、ほんとにほんとよ」
「動物のお人形でも?」
「いいわよ、動物でも天使でも妖精でもね」
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