ゴーレムを作りたい

 ちょうどそこへガイアが通りがかった。


「何の騒ぎだ」


 いまだ要領をつかめないエコーが、つかめないなりに事情を説明すると、女丈夫は眉間にしわを寄せてステラを見下ろした。


「勝手なことをいうな。お前をここへよこすのに、どれだけの手間と金がかかったと思ってるんだ。

 うちだけじゃない、お前が元いた修道院もだぞ」





 ステラは那国ナフリスから、二週間もかけてアレクトー工房までやってきた。馬車の費用、道中の宿泊費や食費などはかなりかさんでいる。

 また受け入れに先立って、工房とステラの修道院は何か月も前から手紙でやり取りをわしてきた。

 その修道院も、教会の伝手つてなどをたどり、女性が働けるゴーレム工房を探し続け、ようやくノンシャランに勤め先を見つけたのだ。那国ナフリスには女性を雇ってくれる工房がないからだ。


 もっといえば、就労目的の国外移転も敷居はかなり高い。

 ガイアは那国ナフリスの有力な工房を、ステラの修道院は教会を通じて働きかけ、特例として通してもらったのだ。

 いまさら気まぐれなどでひっくり返せるものではない。





 ところがステラもさるもの、ぷくぅと頬をふくらませてはガイアをにらみ返し、

「ゴーレム作らせてくれるっていったのに。うそつき」

 ときたもんだ。


「ちょっとステラ、やめなさい! ……マダム、わたしがいって聞かせますから」

 仲裁ちゅうさいに入ったエコーに、ガイアは腕組みをして(できるのか?)と目で問う。


「ステラにも事情があるんだと思います。それがわかれば、誤解もとけるはずです。

 それに、ゴーレムを造りたくて工房うちにくるなんて、この子のほかにはクラウディアぐらいですもの」


「まあ、教育担当はお前だからな」

 工房長は条件つきで許可を出した。

「昼飯までには片をつけろ」





 ガイアが立ち去ると、エコーはステラに向き直った。


「ステラ、あなたの知ってるゴーレムについて教えてくれないかしら。

 あなたはどんなゴーレムを造るつもりで工房にきたの?」


 そういわれて、まだ不満そうだったステラも、ことばをつむぎ出すようにぽつりぽつりと話し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る